公共事業の発注者である市長が、業者側の資金で選挙――。選挙運動費用収支報告書にズラリと並んだ建設業者の氏名が、鹿児島市政の実態を物語っていた。
市と請負契約関係にある業者側からの選挙資金提供が明らかとなった森博幸市長の収支報告書は、他の自治体では考えられない「癒着の証拠」。加盟社の7割以上が寄附を行っていた「市管工事協同組合」のほかにも、問題と見られる業者側の資金提供がある。改めて、森市長の選挙資金を検証した。
■市長の懐に1500万円の選挙余剰金
昨年11月の鹿児島市長選で、森市長が集めた選挙資金は約2,000万円。市長の自己資金はゼロで、関連政治団体からの寄附もなかった。医師会、農業団体からの寄附の他はすべて業者側のカネ。市と関わり合いのある業者ばかりで、癒着の度合いが深刻であることが分かる。市長に寄附した個人が、医師ら4人を除き、すべて企業の代表者か幹部(数件に過ぎないが)だったというのも異例。首長選挙によくある、「一般市民からの浄財」は皆無に近い。
森市長にとって、選挙は資産増やしの道具だ。選挙の収入約2,000万円に対し、支出は約466万円。1,500万円以上の選挙余剰金が生じており、そっくり市長の懐に入った計算となる。余剰金の使途について市長に質問書を送付しているが、昨年末の時点で、市長の年間所得以上の大金が残ったのは確かである。ここで、収入の内訳を再確認しておきたい。
支出総額は466万4,435円。公選法上の問題が生じない「政治団体」からの寄附収入490万円で、すべてを賄った形だ。残った業者側のカネが市長の懐に入ったとすれば、形を変えた迂回献金と見ることも可能。つまりは、選挙を利用したロンダリングである。鹿児島市政の闇は、思った以上に深い。
■不適切寄附の数々
業者側の寄附では、市管工事協同組合以外のものでも不適切と見られるケースが少なくない。分かりやすい例が、次に示す二つの寄附のかたまりだ。まず、「96万円」で統一された寄附である。
寄附者の氏名欄には、地場のデパートをはじめ、有名菓子店、パチンコ業、建設会社などの社長の名前が並ぶ。そろって96万円。しかも、すべてが11月17日に寄附したことになっている。誰かが音頭を取って、寄附を募らなければこうはならない。建設業者側からの2件の寄附のうち1件は、市と請負契約関係があったことが判明している業者からのもの。公職選挙法が禁じる「特定寄附」が疑われる状況だ。
さらに、同じ形の寄附のケース。地場の土木業者12社の社長が、それぞれ5万円を市長に寄附していた。実行日は、12件とも11月2日となっている。特定寄附にあたるケースがなかったか、12社の市との請負関係については、現在調査中である。
不適切な寄附は、まだある。鹿児島市から平川動物公園やかごしま健康の森公園などの維持管理を業務委託されている、公益財団法人鹿児島市公園公社の理事長による3万円の寄附だ。公社の理事長は天下りした元市幹部。利害関係がある外郭団体のトップが、現職市長に選挙資金を提供するなど、よその自治体では聞いたことがない。市役所や外郭団体の人間まで倫理観が欠如している。
投票率25%が示すもの
鹿児島市内の業者は、デパートであれ建設会社であれ、なにかしら市との利害関係を有するものだ。当然、市長への資金提供には慎重であるべきだろうが、森市長と業者らは無頓着なのか世間を舐めているのか、平気で業者丸抱えの選挙を行っていた。市と業者の間に漂う、癒着の臭い――。市民の目が節穴ではないことは、投票率25%の選挙結果が示している。