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博多陥没事故 福岡市が現場の掘り返しを検討
道路法40条の規定を認識 埋まった信号機など撤去へ

2017年1月 6日 09:30

市役所 44.jpg 昨年11月に博多駅前で起きた地下鉄七隈線延伸工事の陥没事故を巡り、福岡市が、埋め戻しにあたって地下に放置した信号機や配管などの“産業廃棄物”を、掘り返して処分する方向で検討していることが市交通局への取材で分かった。他の市関係者も、再掘削の必要性を認めている。
 仮復旧にあたり「地盤の強度が30倍になった」と胸を張った高島宗一郎市長だったが、発言内容との整合性が無くなる形。早急な流動化処理土による埋め戻しに疑問符が付く状況だ。
(写真は福岡市役所)

■道路法関連取材の回答に20日間
 埋められたままとなっている産廃の撤去は、道路法の規定に従ってのこと。同法40条の規定に従えば、本格復旧前に、陥没事故現場に埋まったままとなっている信号機や配管、コンクリートがら、土嚢などを掘り出す必要があるからだ。HUNTERは先月15日、福岡市交通局に対し、「道路法」と事故現場の本格復旧との関係について訊ねていた。市交通局建設課への質問と、1月4日に届いた同課の回答は次の通り。

Q:道路法40条の規定に従えば、本格復旧前に、陥没事故現場に埋まったままとなっている信号機や配管、コンクリートがら、土嚢などを掘り出す必要があると思料いたします。今後の方針について、ご回答願います。

A:今回の仮復旧は、一刻でも早く市民の安全安心な生活を確保するために、ライフラインに加え、人や車の通行ができるよう、道路管理者とも協議を行い、道路法などの関係法令も確認した上で、緊急措置として行ったものです。
 地下に埋まっている物件につきましては、道路管理者とも協議を行いながら、今後の調査や本復旧の作業等で掘削が生じた場合に合わせて、撤去を行うことも含め検討してまいります。

交通局建設課長

 たったこれだけの回答を出すのに20日間もかかったところが、市側の苦しい立場を象徴している。交通局によれば、仮復旧=流動化処理土による埋め戻しは「道路法などの関係法令も確認した上」での緊急措置。市として、同法40条の規定を承知していたことを認めた形だ。素直に「いずれ撤去する方針です」と言えば済むはずだが、それができない。

■「強度30倍」―矛盾する市長発言
 本復旧に向かう過程では掘削、産廃撤去が絶対条件となるが「今後の調査や本復旧の作業等で掘削が生じた場合に合わせて、撤去を行うことも含め検討してまいります」と回りくどい表現になっている。問題になるのは、仮復旧完了時に、高島市長がテレビカメラの前で発した一言だ。

 「地盤の強度は30倍になったんですよ」――市長は確かにそう言って胸を張った。だが、再度掘り返す必要があると分かっていたのなら、「30倍の強度」は意味がなかったことになる。市長は、道路法の規定を理解せぬまま、早期の道路埋め戻しを誇った可能性が高い。流動化処理土による早急な埋め戻しを指示したのは市長。この段階で、廃棄物処理法や道路法を無視したことは事実である。

 現場の掘り返しは、産廃撤去のためだけではない。陥没地点地下の下水道管は、事故によって寸断されたまま。いずれ本格的につなぎ合わせる必要があり、いやでも掘り返すしかない。すぐそばに埋まっている産廃を無視して作業を進めるのは困難で、「撤去を行うことも含め検討」などと悠長なことを言っている場合ではなくなる。役所らしい言い回しで話をぼかしたつもりらしいが、法の順守が求められる公共事業において、産廃の不法投棄を見逃し、道路の原状回復を放棄することなど許されまい。もちろん、違法な状態で、地下鉄工事を再開させることなどできない。

■問われる情報開示の姿勢
 埋まった信号機や配管、コンクリートがらなどが産廃なら、掘り返した流動化処理土も産廃。処分料は、大変な額になることが予想されており、配管工事などを含めた本復旧までには莫大な予算が必要となる。流動化処理土による埋め戻しを判断したのが市長である以上、すべてを大成建設JVに押し付けるのは筋違い。一定額の公金支出が見込まれる状況だ。地下鉄工事も、事故復旧の一部も原資は公金。公費支出の正当性を検証するためにも、速やか且つ徹底的な情報開示が必要となるのは言うまでもない。簡単な質問に20日もかける市側の姿勢は、「隠蔽」を前提としたものとしか思えないが……。



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