業者丸抱えの実態が明らかとなった森博幸鹿児島市長の選挙資金を巡り、寄附を行った複数の業者側と鹿児島市との間に、選挙期間中も「契約関係」が存在していたことが明らかとなった。
HUNTERの調べによると、選挙前に結ばれた寄附者絡みの管工事のうち、少なくとも15件の工期が市長選期間中となる昨年11月20日から27日の日程を挟んでいたことが判明。寄附者側企業が落札していた他の土木工事2件も、選挙期間中に契約状態が続いていたことが分かった。
一連の工事を落札し、市長への寄附を行った業側が、公職選挙法違反の前提となる「請負その他特別の利益を伴う契約の当事者」であることが証明された形だ。(写真が森市長。鹿児島市HPより)
市長選期間中の「請負契約関係」
103件の寄附の内訳を見ると、96件が業者の代表者名。稀に見る業界型選挙だったことが分かる。突出しているのが「鹿児島市管工事協同組合」の組織をあげた寄附だ。加盟79社の7割を超える代表が市長に寄附しており、その数は59件に上る。組合が、組織的に市長の選挙資金を支援したことは間違いなく、「組合から(寄附するよう)言われた」と話す関係者もいる。
業者側の選挙資金提供で問われるのは、選挙期間中に請負契約関係があったか否かという点。公選法の規定で、市と請負契約中の業者は、市長や市議の選挙に関する寄附ができないからだ。寄附を行った業者側が、市長選を前にした時期に落札した工事を一覧表にまとめた。(表は、左から入札日、工事件名、落札金額、工期)
鹿児島市長選挙は、昨年11月20日告示、27日投開票。選挙期間は8日間だった。今週25日までに確認できた15件の工事すべてが、市長選の時期を挟む工期となっていた。請負契約期間中だったことは明らか。同様のケースは、さらに増える可能性がある。落札した会社の代表は市長に寄附を行っており、寄附が工事受注のお礼だった可能性も否定できない。報じてきた通り、公選法は地方自治体と請負その他特別の利益を伴う契約を結んだ者に、当該自治体の首長や地方議員の選挙に関する寄附を禁じており(特定の寄附の禁止)、業者側からの寄附の一部はこの規定に抵触する疑いがある。
土木業者代表、96万円の寄付
前記15件の管工事の他、地場中堅土木業者が落札した「水上坂横井線道路改良工事」(工期:9月14日から29年2月24日)、「里岳線舗装新設改良工事」(工期:8月30日から12月9日)の2件も、工期が選挙期間中を挟んでいた。両工事を受注した企業の代表者は、市長に対し96万円を寄附している。
公選法は、地方自治体と請負その他特別の利益を伴う契約を結んだ者に、当該自治体の首長や地方議員の選挙に関する寄附を禁じており(特定の寄附の禁止)、市発注工事を落札した業者側からの寄附の一部はこの規定に抵触する疑いがある。
立件されたケース
公選法が禁じる特定寄附を巡っては、以下の事案が立件されている。(事案の内容は、警察庁ホームページより)
- 平成15年、沖縄県警が、市内の建設業者5社から選挙運動資金として、自己が代表を務める後援会に対し小切手(額面合計400万円)及び現金100万円の寄附を受けるとともに、市長選挙に関し、市と請負契約関係等にある建設会社4社から寄附を受けていたとして政治資金規正法違反及び公職選挙法違反(特定の寄附の禁止)で当時の宜野湾市長を検挙。
- 平成15年、神奈川県警が、横浜市議会議員選挙に関し、市と請負契約関係にある建設会社2社の役員らから現金合計100万円の寄附を受けたとして、当時の横浜市議を公職選挙法違反(特定の寄附の禁止)で検挙。
- 平成14年、佐賀県警が、佐賀県議会議員選挙に関し、県との請負契約関係にある建設会社2社の代表取締役らから現金合計80万円の寄附を受けたほか、当該選挙に当選後、会社等の団体から政党及び政治資金団体並びに資金管理団体以外の者に対する政治活動に関する寄附は禁止されているにもかかわらず、土木建築会社2社から現金100万円の寄附を受けたとして、当時の佐賀県議を公職選挙法違反(特定の寄附の禁止違反)で検挙。