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三反園知事選挙収支 大幅修正でも依然として虚偽報告

2016年12月27日 09:30

1-鹿児島知事-2.png 30年近く政治家の政治資金収支報告書をながめてきたが、これほど酷い出来の報告書は初めてである。
 デタラメな選挙運動収支に公職選挙法違反の疑いが出ていた三反園訓鹿児島県知事の陣営が、今月12日までに4度目となる報告書の修正を行っていたことが分かった。支出を中心に累計80件以上が削除された他、支出項目ごとの小計額修正に伴い、70か所を超える数字が書き変えられている。ただし、記載内容は依然として虚偽のまま。大幅修正でも、公選法の規定を満たす状態にはなっておらず、知事の政治とカネの問題に対する無節操さを露呈した形だ。(写真は、会見中の三反園知事)

修正・削除150か所―異例というより“異常”
 三反園陣営が、鹿児島県選挙管理委員会に提出されていた選挙運動費用収支報告書の修正を行ったのは今回で4度目。まず、8月に「みたぞのさとし君を励ます会」から受けたとしていた3件の寄附を「みたぞのさとし後援会 三訓会」からの寄附に変更。次いで、HUNTERが選挙資金収支についての疑惑を報じた直後の10月に、記事で不適切と指摘した知事選告示前のポスティング代や集会会場費など3件の支出を削除し、3度目となった今月6日には、公選法違反が明らかな複数の「選挙事務所費」支出と三反園知事の資金管理団体「みたぞのさとし後援会 三訓会」から寄附されたことになっていた収入8件分計2,723万円を削除していた。下は、4回目となった12日の修正で、後援会事務所にかかる費用が削除された報告書の一部である。

1-修正分.jpg

 HUNTERが指摘した後援会事務所関係の支出を中心に70件あまり。これまでの修正を合わせると、計81件が削除されている。支出の削除に伴って、項目ごと合計金額や支出総額も変わるため、削除分とは別に74か所の数字が書き変えられた形だ。これによって、支出総額は当初の2,440万3,245円から2,235万3,494円に、2,800万円にも上っていた選挙余剰金はいったん130万4,259まで減った後、支出減で2,114,435円へと増加している。知事の懐に残ったカネの額までコロコロ変わるという異常な事態。知事の選挙収支報告は、信頼性ゼロだ。

依然として虚偽報告
 大幅修正で、報告書が公選法の規定を満たしたと思うのは早計。もともと後援会活動の費用と選挙運動費用をごったまぜにしていた三反園氏の選挙収支は、依然として虚偽報告の状態にある。まず、「選挙事務所費」の問題。下の報告書にある通り、鹿児島市内にあった「城南事務所」の借上げ料を支払ったのは、知事選告示の6月23日より2か月以上前の「4月11日」である。

1-修正分--2.jpg

 「城南事務所」が選挙事務所として利用されたのは事実だが、借上げ契約した4月から告示まで、そこで行われていたのは「後援会活動」。HUNTERの記者も利用実態を確認しており、選挙前、三反園陣営が配布した印刷物にも同所が後援会事務所であることが明記されている(下の案内文書参照)。

1-三反園後援会印刷物.jpeg

 つまり、4月から知事選告示前までの事務所家賃は「後援会活動」における支出。報告書のように、借上げ料全額を選挙運動費用として計上するのは誤りだ。選挙期間中の事務所費は、後援会からの「無償借り上げ」などとして、日割り分を支出と収入(後援会から候補者への寄附)の両方に記載して相殺するやり方がほとんど(日割り分を現金で支払うもケースもある)。知事陣営の報告書では、後援会活動と選挙運動を区別しておらず、正確な記載とは言えない。

 前回の修正で済んだと見られていた収入の記載も、実は虚偽のままだ。現状で残っているのは、下に示したように赤いアンダーラインと囲みのある寄附だけ。4月14日の600万、5月10日の160万円、6月21日の530万円、同月23日の200万円、この次のページにある7月8日の400万円だ。いずれも「みたぞのさとし後援会 三訓会」からの寄附だが、実際のカネの流れと違っていたことが、関係者の証言から明らかになっている。

1-収入の記載.jpg

 三訓会が一連の寄附金を振り込んだのは、鹿児島市内に主たる事務所を置き、児島県選管に設立届が提出されている「みたぞのさとし後援会」。同後援会は郵便局に口座を持っていたことが確認されている。いわゆる「振替口座」というもので、送金や決済の利用に特化した貯金(振替貯金)の口座だった。名義は「みたぞのさとし後援会」。つまり、カネの流れは三訓会→みたぞの後援会→三反園訓本人であり、三訓会からの寄附ではない。

 三反園陣営の活動資金は、すべて三訓会から郵便局の「みたぞのさとし後援会」に振り込まれたカネで賄われており、選挙期間中も、この方法に変わりはなかったという。そのため、後援会活動と選挙運動の区別がつかない状態となっており、選挙運動費用収支報告書に、虚偽を重ねる結果となったと見られている。公選法や政治資金規正法が定めた「会計帳簿」がなかったことも分かっており、杜撰な資金管理が違法な収支報告につながったのは確かだろう。三反園氏本人への寄附は「みたぞのさとし後援会」によるもの。この部分が修正されない限り、三反園氏の選挙運動費用収支は、“虚偽報告”のままとなる。



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