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南大隅町で核ゴミ問題再燃! 町長派が六ケ所村視察ツアー(上)

2016年12月20日 09:05

1-再処理2.png 高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)最終処分場による町おこしと決別したはずの鹿児島県南大隅町(森田俊彦町長)の住民が、原子力ムラの誘いで核関連施設の視察ツアーに参加している実態が明らかとなった。
 HUNTERの取材によれば、視察先は青森県六ケ所村。今年10月、複数の町民が森田町長を支持する町の有力者から誘われ、2泊3日程度の日程で、同村にある日本原燃の核関連施設などを視察していた。核ゴミ施設建設に向けた、地ならしの一環と見られている。
 問題は旅行の費用で、ツアー参加者の大半が、旅費の出所について「分からない」「話せない」などと口を閉ざす状況。原子力ムラの黒いカネが、南国の町を蝕みつつある。
(右は、六ケ所村の再処理工場。日本原燃のHPより)

核関連視察ツアー、町長派が誘い
 六ケ所村への視察が行われたのは10月中旬。町内の有力者Y氏の誘いに応じた6人が、2泊3日の日程で、日本原燃の再処理工場や放射性廃棄物の管理施設などを見学したという。ツアー初日は、鹿児島空港から羽田に飛び、都内で原子力ムラの関係者と見られる人物による講話を聞いてから新幹線で青森に移動。同市内に1泊し、翌日から核関連施設の見学を行っていた。2日目は三沢市泊まりで、3日目に三沢から鹿児島まで航空機利用で帰途についていた。この間、原子力ムラの関係者が「添乗員」(ツアー参加者の話)のように付き添っていた。

 あるツアー参加者の話によれば、航空券などは視察に誘った町の有力者Y氏が一括して手配。Y氏に送られてきた航空券が、それぞれの参加者に配られる仕組みだったという。旅費の出所について聞いたところ、ある参加者は「分からない。全部、Yさんに任せていた」。誘いの手口は「六ケ所に行ってみないか?ただで行けるから」というものだったという。6名のうち3名は核ゴミ処分場の誘致に反対だというが、「一度見てみたいという思いがあった」「興味があったのは事実」などとしている。

旅費の出所―「話せない」
 六ケ所ツアーの取りまとめを行ったとされるY氏は、核ゴミ疑惑の中心人物である森田俊彦町長を支持する建設会社の幹部。町内自治組織のトップを務めており、多数の町民にツアー参加を呼び掛けていた。誘いを受け、断った町民も少なくない。Y氏にツアーの趣旨や旅費の出所などについて訊ねたが、六ケ所への視察については認めたものの、視察の趣旨や旅費の出所については「絶対話せない」としている。

核ゴミ巡る町内の動き
 南大隅町は核ゴミ施設の誘致を巡って揺れ続けてきた。平成19年、町議会などの関係者が「高レベル放射性廃棄物最終処分場」の誘致に動き、町内は騒然に。23年には、誘致促進派の町民が議会に対し核ゴミ施設の誘致を促進する陳情書を提出し、誘致反対運動が高まりを見せるようになっていた。24年8月、政府が南大隅町を福島第一原発の事故によって発生した汚染土の処分地として検討していることを民放キー局が報道。直後に伊藤祐一郎鹿児島県知事(当時)が汚染土受入を否定したが、町長派は水面下で誘致実現への動きを続けていた。町では誘致反対派の住民らが集会などを通じて運動を展開。これを受けた町は12月、核関連施設の受入を否定する「南大隅町放射性物質等受入拒否及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例」を制定し、事態の沈静化を図っていた。下が、同条例の全文である。

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嘘つき町長の疑惑
 条例制定で沈静化したかに見えた町内だったが、今度は「核ゴミ疑惑」の形で騒ぎが再燃する。平成25年、条例制定を主導した森田俊彦町長に、核ゴミ施設の建設を狙う東京電力関係者H氏に核関連視察誘致に関する公印を捺した委任状を渡していた疑いが浮上。見返りに、飲食接待を受けたり、モーターボートを譲り受けていたことまで明らかとなり、反対運動が激化する事態に――。森田氏は当初、一連の疑惑について全面否定したが、後日、HUNTERの記者に証拠を示され一転して認めるという醜態を演じ、町内の批判が高まっていた。委任状問題を巡っては、TBSの報道番組で、町長が東電関係者とともに政府要人と会談した場面をスクープされている。

 核ゴミ施設と縁が切れたはずの南大隅町で、なぜ今六ケ所ツアーなのか――。取材を進めたところ、核関連視察への嫌悪を薄めようとする原子力村や町長派による工作の実態が浮き彫りとなる。

(つづく)



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