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大詰めIR法案 困惑する「船上カジノ」の福岡市

2016年12月13日 09:50

1-船上カジノ.png 会期末を迎えた国会で、統合型リゾート施設(IR)整備推進法案(カジノ法案)を巡る与野党の攻防が大詰めを迎えている。民進、共産の両党が廃案を狙って参議院内閣委員会での採決を阻止する方針であるのに対し、自民党は委員会採決を省いて中間報告を求め、14日の本会議で一気に決着を図る構えだ。
 カジノIRの整備に最も熱心なのは「日本維新の会」の牙城・大阪府。東京や長崎もカジノ誘致に前向きだが、カジノは陸上に限ったことではない。拙速な審議で見落とされているが、「船上カジノ」を視野に入れていた自治体もある。

福岡市特区提案に「船上カジノ」
 国家戦略特区は、規制緩和や制度改革を認め、経済効果を検証するため指定される地域のこと。福岡市は、「グローバル創業・雇用創出特区」に指定されている。市独自の創業支援や雇用の拡大、解雇規制の緩和や外国人の創業促進、外国人への医療分野開放などに取り組んでおり、さながら安倍政権の実験場となっている。下は、2014年に特区指定された福岡市が、国に提案した『新たな起業と雇用を産み出すグローバル・スタートアップ国家戦略特区』の概要。注目は、HUNTER編集部がピンク色の丸印で囲んだ部分である。

福岡市1(4)
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福岡市3

 〔アジア有数のMICEクラスター整備と民間開放のための特例措置〕として、≪コンベンション・ホテル・クルーズ船(カジノ)・ミュージアム・インキュベーション等の複合体を、民間資金を活用して整備を行う≫と記されている。MICEとは、多数の集客が見込まれるビジネス関連イベント及びその施設。ほとんど報道されていない内容だが、博多湾での「船上カジノ」が計画に入っているのが分かる。

 現行法において、日本の領海内では賭博にあたるカジノは禁止。この規制を緩和することで、クルーズ船の寄港を増やそうという計画だ。福岡市は、集客のためのアイテムの一つに「船上カジノ」をもぐりこませていたのである。まさに、博多湾賭博場化計画。日本維新の会が大阪・夢洲(ゆめしま)で目指す、カジノIRと同じ発想だ。カジノ法案は、日本維新の会へのサービスという見方が大半だが、高島宗一郎福岡市長は安倍首相のお気に入り。博多湾で、クルーズ船を利用した常設カジノが展開される可能性もある。  

戸惑う福岡市
 実はこの「船上カジノ」、国会審議の中では何の議論も交わされていない。領海内に入ったクルーズ船でのカジノ営業については、一切触れられていないのだ。おそらく、同法案を提案した議員たちはもちろん、所管する警察庁も船上カジノのことには気付いていない。特区提案に船上カジノを入れた福岡市でさえ、忘れていたふしがある。

 “クルーズ船のカジノ営業について、今後どのように対応していくつもりなのか”――船上カジノを特区提案に入れた福岡市に確認したところ、内容自体を自覚していなかったらしく、担当課も戸惑うばかり。返ってきたのは、「福岡市においてカジノに関する検討は行っておりません」という素っ気ないメールの回答だった。カジノ解禁ともなれば、船上カジノも営業OKとなる可能性がある。今は「検討していない」という福岡市だが、特区提案に船上カジノを入れたのは事実。法案が通れば、いやでも船上カジノの是非を問わねばならなくなる。

 衆議院での審議は実質5時間半。参議院でも、十分な審議は尽くされていない。しかし、自民党は参議院内閣委員会での質疑をとばし、14日の本会議で「中間報告」による採決を求める構えだ。中間報告は、委員長が採決に応じない場合に委員長もしくは理事に審議経過の報告をさせ、本会議での採決を図る時の仕組み。強行採決よりタチの悪い国会運営の手法である。拙速に事を進める安倍政権。問われているのは、国や地域の「誇り」だろう。



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