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「想定内」の怪しさ 博多駅前陥没現場7センチ沈下の衝撃

2016年11月28日 09:55

DSC04513.jpg 地下鉄七隈線延伸工事で起きた博多駅前の道路陥没事故で埋め戻しと舗装が完了した今月15日、高島宗一郎福岡市長は「地盤の強度は30倍になった」と胸を張った。それから11日後、埋め立て現場が7センチ沈下。駅前通りは再び全面通行止めとなり、市と工事の共同企業体(JV)が会見で謝罪する事態となった。
 「想定の範囲内」――市とJVはそう強弁するが、一連の動きは沈下の度合いが想定を超えたことを示すもの。市民の間に「本当に安全なのか?」という疑問が広がっている。
(写真は、博多駅前の陥没事故の現場)

責任逃れの「想定内」
 7センチもの沈下が「想定の範囲内」だったというのは、開き直った自己弁護に過ぎまい。想定内なら、沈下することが分かった段階で市民に告知しておくべき。事が起きてから「想定内」と言われても、信用する市民は少ないだろう。想定を超える・越えないという議論が、いかに空しいものであるか、東日本大震災の発生後に見せた政府の対応でも明らかだ。

 26日未明の地盤沈下が、福岡市の想定を超えるものだったことは確かだろう。下の表は、市が「3段階」に分けて決めた沈下時の対応。「想定」が存在したのは事実だが、現実の推移は、市の想定が甘かったことを示している。

1-管理値.png

 26日未明、工事現場で監視にあたっていたJVの関係者が午前0時半のモニタリングで1.5センチの沈下を確認。沈下は、それから1時間で最大7センチにまで及んだ。急激な変化。通行止めの目安だった「2.4センチ」をはるかに超える事態だった。市やJVが慌てたことは想像に難くない。

 市とJVの説明によれば、沈下が最大8センチにとなるとの予測が出たのは25日の夜。JV側がこの数値を市に伝える前に、沈下が起きたのだという。事実なら、JV側が早めの情報発信を怠った格好。緊張感を欠いていたというしかない。

情報発信怠った結果
 仮復旧道路の安全性を確認するため14日に開かれた『専門技術者による会議』は、大学教授や国交省の役人ら6名で構成。オブザーバーとして高島市長も参加していた。この会議で地盤沈下の可能性が指摘されていたというが、極めて短いやり取りだったとされ、会議を取材したマスコミも詳細の報道を見送ったほど。市は会議の模様を動画配信しておらず、地盤沈下の可能性があることは、市民に伝わっていない。下は市交通局のホームページ上に掲載されている陥没事故についてのQ&Aだが、『専門技術者による会議』は通行再開のお墨付きに利用されただけで、地盤沈下の可能性についてはまったく触れていない。

Q 道路の仮復旧した箇所は,安全なのか?
A 道路の仮復旧した箇所の通行再開にあたっては、「はかた駅前通り仮復旧道路の安全性を確認するための『専門技術者による会議』において、埋戻し材(流動化処理土)が適切であったか、戻し部及び周辺部の路面下に空洞はないか、道路としての機能が確保できているかなど、通行に必要な安全性の確認をいただき、通行再開となったものです。 また、現地では、定期的に路面等の巡回点検や地表面沈下の計測を行うなど、安全確保に努めております。

沈下会見は市長不在
 地盤沈下で関係者に動揺が走る中、最高責任者の高島市長はFacebookに次のような書き込みをしただけ。26日朝に行われた市とJVの記者会見には姿を見せず、謝罪と説明を部下に任せている。

1-高島氏Facebook.png

 ≪報告を受けました≫≪その後は落ち着いているそうです≫≪流入したというものではないそうです≫――。まるで人ごとである。頭を下げることが嫌いな市長。就任以来、パフォーマンスには精を出すが謝罪は部下任せがほとんど。陥没事故直後は、事業の発注者という立場を忘れて「はらわたが煮えくり返る」と発言し、関係者の失笑を買った。「30倍の強度」「官民一体の復旧」「~そうです」――いずれも、事の発端が「福岡市」にあることを忘れたかのような発言だ。

 そもそも、ごまかしや気休めは、その後の動揺を拡大させるもとだ。高島市長は地盤の強度について「30倍」と自慢げに語ったが、これは“従来からある砂や“れき”の層と比較して、ということ。博多駅前の地盤がゆるければ、30倍でも意味がない。ゆるい地盤に強固な処理土を乗せた形なら、かえって危険ということも考えられる。沈下の発生は、その証明だったとの見立ても成り立つのではないか。陥没が人身事故につながらなかったのは、事故発生が深夜だったからで、ラッシュ時であれば人命が失われていた可能性さえある。その場合、「はらわたが煮えくり返る」「強度30倍」などとは、口が裂けても言えなかかったはずだ。責任逃れに終始する市長の姿勢が、前掲のFacebook発言ににじみ出ている。もちろん、事後の「想定内」など市民には通用しない。



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