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本音は原発容認 正体見せた鹿児島県知事

2016年11月10日 09:10

鹿児島県庁・原子力発電所川内-thumb-260x164-14789.jpg 三反園訓鹿児島県知事が11日、川内原発(薩摩川内市)1号機で行われている九州電力の特別点検を視察する。視察を踏まえ、再稼働についての判断を下すという知事だが、同行するという二人の専門家は原子力ムラの一員。結論は見えている。
 川内原発の一時停止や県政刷新を掲げて当選した三反園氏だが、もともと原子力行政には無関心で、政策的には自民党の考えに近い人物。権力を手に入れたとたん、本性を露わにする場面が増えている。(写真左は鹿児島県庁、右が川内原発)

原発容認 ― 思わず本音
 先月28日の定例記者会見、川内原発に関する記者団とのやりとりに苛立った三反園知事が、思わず本音を漏らした場面があった。“原発再起動の是非を判断するための検討委員会が設置されていない状況では、再起動容認と考えてもいいのか”という記者の質問に、こう答えている。

 ――私に稼動させるか稼動させないかの権限が無いことは事実であります。そうすると、私が仮にどういう対応をとろうが九州電力は稼動させていくことになるのではないかなということは○○さんもそういうふうに思っていらっしゃると思うのです。だからこそ検討委員会が大事なのです。いつ作るかということよりも、何度も言いますが、川内原子力発電所が稼動しても稼動しなくても、そこにあることは事実、あり続けることは事実なのです。だからこそ、2号機もあるわけですよね。その場で検討委員会をできるだけ早く立ち上げて、そして複数の専門家の中で協議していただいて、安全かどうかを含めて、そして安全に問題があるとすればその時点で、私は対応をとるということであります。

 「私に稼動させるか稼動させないかの権限が無いことは事実」「私が仮にどういう対応をとろうが九州電力は稼動させていく」――何をいまさら、というのが実感だ。九電に対し、“原発を止めろ”と迫った知事の行動は何だったのか?初めからできないとあきらめた上での話だったとすれば、それは単なるパフォーマンス。知事選で掲げた公約を、表面だけをなぞったということに他ならない。知事選で、三反園勝利の原動力となった原発反対派や県民に対する背信行為であることは明らか。原発を出世の道具にした、とんでもない卑劣漢と言うしかあるまい。

反原発派とは没交渉
 三反園氏が劣勢と言われた知事選で勝利を収めたのは、反原発派との政策合意に基づく候補者一本化のおかげ。しかし、知事は就任後、原発反対派との接触を断っており、電話にもメールにも反応していないという。前述の会見では、知事が原発反対派との没交渉を事実上認める場面もあった。知事選出馬を取りやめた平良行雄氏側からの再三の面会要請に応じない理由ついて聞かれた知事は、「原発に頼らない社会」「県民の安心・安全」を繰り返すばかり。なぜ会わないのかという問いには、まったく答えることができなかった。記者から“答えになっていない。会われない理由をお聞きした”と詰問された知事は――

 ――私自身は、今・・・

 ジャーナリスト出身でありながら、記者の質問をはぐらかし、答えを渋るというお粗末さ。県政史上、最低の知事であることは確かだろう。原発に慎重な新人知事として注目を集めてきたが、もともと三反園氏に原発を止める意思などない。「安心・安全」を叫んで、県民を騙しているだけ。出馬宣言を行った昨年12月から熊本地震まで、原発に対する考えを明確にしなかったのは、原発推進・反対、両方の票をもらおうという魂胆があったからで、反原発派との政策合意は当選するための便法だったに過ぎない。

原発視察 ― 同行者は原子力ムラの御用学者
 原発を止める意思がないことは、知事が川内原発の視察に同行させる専門家二人の顔ぶれを見ても分かる。知事に同行するのは原子工学の専門家で京都大学原子炉実験所の宇根崎博信教授と九州大大学院の守田幸路教授。宇根崎氏は、原発メーカーから180万円の寄付を受けていたことや、関西電力の関連団体「関西原子力懇談会」から研究費名目の寄付80万円を受領していたことが報道で明らかになっている人物。守田氏は、「原子力の社会的受容性を高める」などとして、福島第一原発の事故後も原発の安全性向上を主張しており、原発推進論者であることは確か。原子力ムラの人間が、川内原発への疑義を唱えるわけがない。専門家を同行しての原発視察はパフォーマンス。公約違反をとがめられないよう格好をつけているが、知事が原発容認であることは、周知の事実となりつつある。

 定期検査中の川内1号機は、来月上旬にも再稼働の予定だ。会見で、再稼働について「複数の専門家と視察し、協議して考えをまとめる」と明言した知事だが、原発を止める考えなど毛頭ない。選挙公約の検討委員会にしても設置の目途はたっておらず、いつになるのか分からない状況。検討委がスタートしても、メンバーとなる“専門家”が原子力ムラの人間なら、原発にお墨付きを与えるだけの組織になることは目に見えている。

 三反園氏にとって、県政の課題とはドーム球場、アウトレットモール、サッカースタジアム。鹿児島が、利権まみれの県政となることは必至だ。



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