政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
行政

福岡市都心循環BRT 西鉄「連節バス」導入過程に疑義

2016年11月21日 09:55

20161121_h01-01t.jpg 今年8月から福岡市と西鉄が共働して試験運行を開始した連節バス(右の写真)の導入過程に、疑義が生じている。
 天神、博多駅、博多港(ウオーターフロント)を結ぶルートに、新たな交通システム「都心循環BRT」を形成する目的で始められたこの事業。市への情報公開請求で、連節バス導入を決めた経緯を示す公文書が存在しておらず、いきなり決済が行われた形となっていたことが明らかとなった。
 市が議会などに説明してきた公費投入額「3億円」についても根拠がなく、所管課である住宅都市局都心交通課の職員が答えに窮する事態となっている。 

「連節バスありき」の事業経過
 BRTとは、bus rapid transit(バス・ラピッド・トランジット)の略。 専用の道路やレーンを使ったバスによる高速輸送のことで、一般の路線バス以上に定時運行性や高速性が確保できるとされているシステムだ。福岡市は、天神、博多駅、博多港(ウオーターフロント)を結ぶ「都心循環BRT」を形成するとして、今年8月から、西鉄を事業者に連節バスの試験運行を始めていた。第一段階として天神~博多港地区(運賃:190円)、博多駅~博多港地区(同:230円)を走らせ、9月からは天神、博多駅、博多港地区の3拠点間を、内回りと外回りで循環させている。

 天神地区の渋滞は、どう見てもバスの多さが原因だ。「なぜ連節バスなのか?」「なぜ西鉄ばかり優遇されるのか?」「公費投入額は?」――市議会はもとより、市民からも寄せられる様々な疑問。確認のため、福岡市に連節バス導入に関する公文書の情報公開請求を行っていた。

 市は、西鉄の企業情報があるため、同社との協議が必要として開示決定期限を1か月延長。ようやく開示された文書は、事業の不透明さを浮き彫りにする内容のものだった。下が、連節バス導入のスタート地点を示す文書である。

1-決済.jpeg

 起案は昨年の3月17日。高島宗一郎市長が決済印を捺した同月30日に、いきなり「都心循環BRT」、「連節バス」、「事業社=西鉄」という方針が決まっていた。市側は、内部で連節バスについて検討した資料や西鉄との協議の記録は、「ない」と明言している。なぜ「都心循環BRT=連節バス」に決めたのか重ねて尋ねたが、職員は困惑するばかり。市として、納得できる説明ができない状況だ。

 開示にあった職員は、決裁文書の冒頭にある『福岡市都市交通基本計画』(平成26年5月改定)、『ウオーターフロント地区(中央ふ頭・博多ふ頭)再整備の方向性』(同年9月とりまとめ)が前提だと釈明しているが、両文書のどこにも『連節バス』は出てこない。初めから事業者は西鉄、新たな交通システムは同社にとって都合の良い都心循環BRT、用いる車両は連節バスと決められていた可能性が高い。典型的なトップダウン。市の上層部と西鉄側との癒着体質が生んだ事業と言う他ない。

公費投入額3億円の根拠 ― 「ありません」
 杜撰な事業計画であることは、公費投入額の積算根拠がないことでも明らかだ。これまで市は、市議会などに対し、停留所整備などにかかる将来の公費投入額を3億円程度と明言。情報公開の場でも、同様の説明をしてきた。しかし、開示された関連公文書の中には3億円の積上げ根拠が不存在。さらなる開示を求めたところ、市側は「ありません」として積算根拠がないことを認めている。

 高島市政の特徴は、不透明な政策決定過程が多すぎること。西鉄との関係では、認可保育所「中央保育園」(運営: 社会福祉法人福岡市保育協会)を強制的に移転させ、市立中央児童会館の跡地に商業ビルを建設したケースがある。新たに建設された複合施設『天神CLASS』の事業者は西鉄で、福岡市にとっては、マイナスにしかならない契約を結んでいる。連節バスは、誰のための施策か――。都心循環BRTの問題点についは、24日の配信記事で詳細を報じる予定だ。



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲