2,800万円に上る巨額の選挙余剰金、デタラメな選挙運動費用収支報告書、選挙カー関連助成金の不正受給……。次から次へと明らかになる三反園訓鹿児島県知事陣営による「政治とカネ」の問題。陣営の政治資金処理が杜撰であったことは疑う余地もないが、知事はHUNTERの質問取材を黙殺しており、ジャーナリスト出身とは思えぬ対応だ。報道番組のコメンテーターだった頃の姿からは想像もできない知事の意外な顔。周辺を取材してみると、支持者も驚く三反園氏の実像が見えてくる。
(写真は三反園知事。みたぞのさとし後援会ホームページより)
注目の選挙資金 サラ金創業者が協力か
三反園知事の選挙資金は総額4,963万円。すべて資金管理団体「みたぞのさとし後援会 三訓会」からの寄附だ。報告書に記された三反園氏への寄付額を、時系列順に並べると次のようになる。
下は三反園陣営が県選管に提出し、その後修正が加えられた報告書の記載。修正前の記述や後援会関係者の証言から、5月10日の160万円、5月30日の463万円、6月13日の90万円が、いずれも「みたぞのさとし君を励ます会」の口座から三反園氏の地元支援組織「みたぞのさとし後援会」の口座に振り込まれていたことが分かっている。
「みたぞのさとし君を励ます会」の収入は、陣営が開いた政治資金パーティーによるもの。3件分計713万円で、残り約4,200万円は個人献金ということになる。政党及び政党支部、政党の政治資金団体以外の政治団体は、企業・団体献金を受け取ることができないからだ。関係者の証言によると、三訓会への寄付は企業経営者らが中心となって集めたもので、100万円単位の寄付も少なくなかったという。意外なところでは、サラ金マネー。鹿児島出身の大手サラ金創業者が資金集めに協力していたことを、複数の関係者が証言している。知事選にサラ金マネーは珍しい。
三訓会がいくら集めたかは、政治団体の本年分政治資金収支報告書が公開される来年秋まで分からない。しかし、三訓会が地元後援会に入金した4,200万円以上のカネを集めていたのは確かだ。政治資金規正法の規定で、三反園氏本人が寄附したとしても最高1,000万円まで。すると、少なくとも3,200万円を他からの献金に頼っていたことになる。選挙運動費用に関して、三反園氏の自己資金はゼロ。テレビ朝日から数千万円の退職金を受け取ったという知事の懐は、たいして痛んでいない。それでは、知事の暮らしぶりはどうだったのか?
タワーマンションにベンツ、フェラーリも所有?
知事選挙の投開票日時点で、三訓会の住所は東京都千代田区の三反園氏の自宅。登記簿を確認したところ、一等地の高級マンションであることが分かっている。いずれ資産公開で明らかになることだが、知事の所有物件は平成15年に新築された29階建て高層マンションの21階。79.80㎡の広さだ。住宅金融公庫(現・住宅金融支援機構)が抵当権を設定しており、債権額は7,580万円。一定額の自己資金を入れたとして、買値は8,000万円を超えるものだった可能性がある。
(右は、三反園氏所有の部屋がある高層マンションの外観。下が物件の登記簿)
高級マンションには高級外車ということなのだろう。三反園氏の愛車はベンツだといい、クルマ好きの国会議員らと走る機会があった時は、誰の所有車だったのかフェラーリに乗っていたという話まである。こうなると金満記者。「カネがない」を連発する三反園氏を見ていたある後援会関係者は、高級マンションに外車と聞いて驚きを隠せない。
――庶民派だとばかり思っていましたが、選挙用の顔だったんですね。県民所得を上げると訴えてましたが、ご自分はセレブな生活。どっちが表なのか知りませんが、三反園さんは裏表が違い過ぎる。言葉では「感謝」と言いながら、選挙が終わったとたん、後援会長や世話になった人たちを平気でポイ。とんでもない人物を、知事にしてしまいました。
ちなみに、みたぞのさとし後援会の公式サイトに残る知事のビジョンには、≪経験を通して≫として次のように記されている。
一流のものに触れる体験。
子どもたちの教育を考えたとき、知識より体験が大事です。しかも、一流のものに触れる体験。知識を詰め込むのではなく、体験を通して感性を育てたい。それが人材教育だと思います。だから、子どもたちには一流のもの、本物に触れさせたい。
住いもクルマも一流。知事の「経験」は嘘ではない。しかし、反原発派や主な支援者たちとは没交渉。HUNTERの度重なる取材にも、反応すらしないのが実情だ。知事のビジョンには、こんな一文もあった。
口ではなく、心で話すこと。
心底思っていることでなければ、相手の心に響かない。僕は、真実を、正直に話すことだけを心がけてきました。
「噓つきは泥棒の始まり」というが……。