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安倍一強 原発が変えた「潮目」

2016年10月28日 10:55

gennpatu 1864410756.jpg 自民党が、「連続2期6年まで」と定めていた総裁任期を「連続3期9年まで」に延長する方針を固めた。来年3月の党大会で党則改正が承認され、次の総裁選で再選されれば、2018年9月までとなっていた安倍晋三首相の総裁任期が、2012年9月まで延びる。2020年東京五輪・パラリンピックはもちろん、“戦後最長の首相在任期間”まで視野に入る形。憲法改正を悲願とする首相にとっては、十分過ぎる時間だろう。
 一見、盤石の政権基盤を築いたかに見える安倍首相だが、政界の一寸先は闇。年明け解散への動きが加速する中、思わぬところで地殻変動が起こりつつある。

広がる原発再稼働反対
 “潮目が変わった”と感じているのは筆者だけではあるまい。鹿児島では川内原発(薩摩川内市)の一時停止を訴えた三反園訓氏が、公認候補並みの扱いで自民が支援した伊藤祐一郎前知事を破って初当選。新潟では、柏崎刈羽原発の再稼働反対を公約に掲げた米山隆一氏が、与党の推薦候補に大差をつけて勝利した。原発立地県で、原発に対する拒絶反応が顕在化した証。この選挙結果が、全国の有権者に及ぼす影響は計り知れない。

 福島第一原発の事故から5年半。事故の原因究明が不完全なまま、川内原発を皮切りに、原子力規制委員会の新規制基準に合格した高浜(福井県)、伊方(愛媛県)の原発が再稼動した(高浜原発は、大津地裁の仮処分決定を受けて停止中)。こうした中、熊本地震で広がった原発への不安が全国に波及。再稼動反対の意思表示をする有権者が増えている。政権にとっては、思わぬ地殻変動だ。

 背景にあるのは、「3.11」以来の政府や電力会社に対する不信。原発停止中に懸念された電力不足が起きなかったため、「原発はなくても困らない」という事実が証明されたことも見逃せない。いまや“脱原発”は、保守・革新、右・左に関係なく国民の共通認識。鹿児島や新潟の知事選で、自民党支持者の多くが原発慎重派の候補に投票したのはその証左だ。
 
 共同通信のインタビューに応じた小泉純一郎元首相は、次期衆院選で野党が統一候補を擁立して「原発ゼロ」を争点化すれば、自民党が敗北するとの見通しを表明。自由党の小沢一郎代表も、同様の見解を示し野党の結束を訴えている。野党が脱原発、憲法改正阻止でまとまれば、安倍政権が窮地に立つことは請け合いだ。しかし、肝心の野党第一党がピリッとしない。

問われる民進党の覚悟 
 先日の新潟知事選、原発再稼動に反対する米山氏を推薦したのは共産・社民・自由の3党。自民系候補を支援した連合に遠慮した民進党は、「自主投票」で戦線離脱し、米山優勢が伝えられた最終晩に慌てて蓮舫代表が応援に入るという醜態を晒した。候補者擁立でもたついた結果だが、原発が争点になった場合の民進党の弱さを露呈した格好だ。

 民進党の支持母体は連合。その連合は政策課題によって、旧社会党系(総評系)と旧民社党系(同盟系)の主張が180度違っている。総評系の自治労や日教組は反原発、同盟系の電力総連や電機連合などは原発推進で、憲法観もバラバラだ。連合として原発や憲法への対応をまとめようにもできないのが現状で、これがそのまま民進党のふらつきにつながっている。

 民進党は、原発反対の民意に応えることができず、憲法問題についても衆議一決は不可能。支持率が伸びない理由は明らかだが、同党の議員たちは“気付かぬふり”だ。蓮舫氏は、提案型の政党に変身すると意気込むが、労組に振り回されている間は、有権者の心をつかむ「提案」などできるはずがない。国民が求めているのは、原発や憲法に対し、白黒をはっきりさせる態度。民進党が政権を奪うとすれば、「方向性の違う労組との決別」が絶対条件となる。

賞味期限切れのアベノミクス
 新潟知事選と同時進行となり、自民党が勝った衆院東京10区・福岡6区の補選。政権への評価が問われなかったため、選挙結果を見て、安倍政治が支持されたと判断するのは早計だ。東京10区は小池劇場の延長、福岡6区は“自民県連VS弔い合戦”の構図で、野党は最後まで蚊帳の外だった。両選挙とも、政策論争から外れた人気投票となったため、争点ボケで低い投票率となっている。アベノミクスなど、お呼びではなかったということだ。

 実際、庶民の財布とは無縁のアベノミクスは賞味期限切れ。米国の批准が難しくなったと見られているTPPも、次の総選挙では争点になりそうもない。有権者にとって、より身近な問題といえば「安心・安全」。各地で地震が頻発する状況ではなおさらだ。盤石の政権基盤を築いた安倍首相にとって、原発が鬼門となる可能性は高い。潮目が変わりつつあるのは確か。ワンイシュー(単一争点)で野党がまとまれば、少なくとも衆議院の3分の2は阻止できるだろう。安倍首相の最終目標は「憲法改正」。できなくなれば、安倍一強も終わりを告げる。



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