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五輪、アフリカ支援の“3兆円” 吹っ飛ぶ消費増税1年分

2016年10月 3日 10:10

1-1万円札.jpg 1964年以来56年ぶりとなる国内での夏季五輪「2020年東京オリンピック・パラリンピック」。新国立競技場建設計画の見直しや大会エンブレム盗作問題の陰で、当初予算7,340億円が3兆円に増えていたというのだから呆れるしかない。浮かれるオリンピック関係者を含め、この国の政治家や役人の金銭感覚が麻痺している証拠だろう。
 金銭感覚の麻痺と言えば、一番酷いのが安倍晋三首相。外遊のたびにばら撒いた血税は、すでに数十兆円規模。直近では、アフリカへ民間資金を含む総額300億ドル(約3兆円)規模の投資を約束するなど、大盤振る舞いが続いている。
 安倍政権にとっては軽い3兆円。平成25年に5%から8%に引き上げられた消費税だが、本当に増税が必要だったのか、疑いたくなる実情がある。

対外支援で吹っ飛ぶ消費税
 安倍首相は8月、ケニアの首都ナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD6)で基調演説し、アフリカに対し、今後3年間で総額300億ドル(約3兆円)規模の投資を行うことを表明した。外遊の度に繰り返されてきたばら撒きだが、ついに兆円単位となっている。下は、第2次安倍政権の発足から平成25年1月までに、首相が外遊先で表明した対外支援の実態だ(左から、時期、訪問先、支援内容と円換算した支援額の順)。首相の外遊は計31回。60か国以上を訪れ、総計6兆4,477億円にのぼる支援を約束していた。

安倍首相 訪問国数など

 この後も首相の外遊は続き、今年9月までに47回。当然、ばら撒き額はさらに拡大している。外遊絡みではないが、5月の伊勢志摩サミット直前には、途上国や低迷する世界経済向けに20兆円を超える規模のインフラ整備事業や難民支援策を行っていくことを表明。対外支援の額は30兆円を軽く超える状況となっている(次稿で詳報予定)。庶民にとっての「血税」が、首相にとっては自己顕示の道具。彼は、税金の重さなど、これっぽっちも感じていない。首相が国政選挙の争点にしてきた消費税だが、1%でどれくらいの額になるのか確認すれば分かる。

 下は、財務省が公表している「一般会計税収の推移」だ(注:26年度以前は決算額、27年度は補正後予算額、28年度は予算額)。
010.gif 消費税が5%から8%に引き上げられたのが平成26年4月。この年度の消費税収は前年度の10.8兆円から16兆円へと約5兆円増加し、27年度は17兆円、28年度もほぼ同額で推移している。消費税1%は、約2兆円にあたる。

問われる消費増税の意義
 東京五輪の開催経費は3兆円。首相がアフリカにばら撒くのも3兆円。いずれも消費税1%分をはるかに上回る額である。五輪の経費やアフリカ支援だけで25年度から引き揚げられた「3%分」1年間のあがりが吹っ飛ぶことになる。伊勢志摩サミット向けに格好をつけた難民支援などへの20兆円なら、今後引き上げが予想される「2%(4兆円)」の5年間分。25年度から28年度までの増収分約24兆円も、首相の対外支援で無くなった計算だ。何のための消費税なのか、これではさっぱり分からない。

 対外支援がどう生かされているか、国民に詳細が知らされることはない。五輪の開催経費がなぜ3兆円に膨らんだのかの、明確な説明もおそらくできないだろう。一方で、遅々として進まぬ東北の復興、デフレ脱却。対外支援や復興五輪という美名の下で、得をしているのは政治家と役人、土建屋だけというのが実情だ。消費税――本当に必要なのか?



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