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カネまみれ五輪 「復興」置き去り

2016年5月17日 09:50

 エンブレム.pngメイン会場の設計変更、エンブレムのデザイン盗作ときて今度は招致をめぐる裏金疑惑……。オリンピックを舞台に、フェアプレーとは縁遠い騒ぎが繰り返されている。問題が起きる度にやり直しで事を済ませているが、どぶに捨てた形となった公金は数十億円。責任の所在は曖昧で、誰も責任を取っていないのが現状だ。
 メダルが期待された選手の不祥事もあって、五輪の価値は薄れるばかり。そもそも、日本が掲げた東京五輪のテーマ自体が、すっかり忘れ去られた形になっている。
(右は東京五輪の新エンブレム。大会の公式サイト画面より)

波紋広げる裏金疑惑
 2020年東京五輪・パラリンピック招致委員会(招致決定後に解散)が、開催地決定に影響力を持つ国際陸連前会長の関係企業に支払った額は2億3,000万円。招致委のトップだった竹田恒和日本オリンピック委員会(JOC)会長は、コンサルタント料だったとしているが、1回目の送金は2013年7月(2回目は10月)。開催地決定は同年9月で、その時期に招致計画やプレゼンに関する指導といった基本的なノウハウについて民間企業に指導を仰ぐこと自体が不自然だろう。

 百歩譲って、もし支払われた2億3,000万円が本当にコンサル料だったとしても、常識外れの高額であることが確か。コンサルの契約書や成果物も示されておらず、五輪招致を巡る闇は晴れそうにない。

新国立、エンブレムで汚点
 招致過程を含め、東京五輪には問題が多すぎる。最初のつまづきは、メイン会場となる新国立競技場の建設計画。採用されたザハ・ハディド氏のデザイン案における巨額な建設費に批判が集中し、昨年7月、安倍首相が計画の白紙撤回を表明した。再コンペで決まった別の設計案で整備することになったが、後になって聖火台の存在が忘れ去られていたことが判明。ゴタゴタはいまも続いており、世界に恥を晒した形となっている。

 続いて問題になったのが、大会エンブレム。昨年夏、採用されたエンブレムに盗作疑惑が浮上し、こちらも白紙撤回。9カ月後の今年4月、ようやく新エンブレムが決まったが、前代未聞の騒動の後だけに大会の象徴も影が薄い。

 問題は、新国立の設計やエンブレムの変更がタダではできないということ。白紙撤回された新国立の当初案には数十億円、盗作エンブレムに関しては、選考経費や商標調査・登録、ポスター・ホームページ制作、エンブレム発表イベントの開催などに計1億900万円が支出されていたという。億単位のカネをどぶに捨てた招致委は、責任をとることもなく既に解散。カネまみれ五輪を喜んでいるのは、業者だけである。

オリンピック精神とは程遠い東京五輪
 これがオリンピックの精神にかなうものなのか――。オリンピック憲章は、国際オリンピック委員会(IOC)によって採択されたオリンピズムの根本原則、規則、付属細則を成文化したもので、もっとも重要とされる「オリンピズムの根本原則」には、次のような一節がある。

 オリンピズムは人生哲学であり、肉体と意志と知性の資質を高めて融合させた、均衡のとれた総体としての人間を目指すものである。スポーツを文化と教育と融合させることで、オリンピズムが求めるものは、努力のうちに見出される喜び、よい手本となる教育的価値、社会的責任、普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重に基づいた生き方の創造である
 東京五輪についての経過を振り返ってみると、『努力のうちに見出される喜び』などなく、『よい手本となる教育的価値』など夢物語。『社会的責任』は果たされておらず、『普遍的・基本的・倫理的諸原則の尊重に基づいた生き方の創造』は到底無理な状況だろう。第一、当初掲げられた東京五輪のテーマ自体が、すっかり忘れ去られている。

東北置き去り 東京は開発ラュシュ
 2013年、オリンピック招致にあたって国や招致委員会が掲げたテーマは「復興五輪」。東日本大震災からの復興を遂げた姿を世界に発信するというのがその趣旨だったはずだ。だが、急ピッチで進められているのは選手村や各種競技の会場、交通アクセス整備など都内における五輪関連の工事ばかり。五輪に沸く東京は、開発ラュシュの状態だ。

 福島をはじめ東北の現状は忘れ去られた格好となっており、大震災から5年経ったいまも、全国で避難を余儀なくされている被災者は17万人超。6万人近くが、いまだ仮設暮らしのままである。被災地をそっちのけにした五輪騒動は、あまりに身勝手。「復興五輪」という原点に返ることができないのなら、開催地返上も考えるべきだろう。



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