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衆院福岡6区補選 大手メディアへの疑問

2016年10月25日 10:25

DSC04381.jpg ここに1枚のコピーがある。保守分裂で注目された衆院福岡6区の補欠選挙で、自民党県連の推薦候補を破った故・鳩山邦夫総務相の次男、鳩山二郎氏が県連側の決定に従うとして書いた「誓約書」だ。
 候補選定の段階で、いったん県連側の決定に従うと約した二郎氏だったが、分が悪いと見るや一転。選ばれなければ無所属で出馬するとして、自民党を揺さぶる作戦に出た。
 七光り組特有のわがままに過ぎなかったが、「自民党の地方組織VSたった一人の挑戦者」という都知事選の構図とダブらせたことや地元意識に訴える作戦などが功を奏し、結果は鳩山氏の圧勝。誓約書は反故にされ、大手メディアがその内容を報じることはなかった。
 全国注視の6区補選。新聞やテレビは、余すところなく実態を報じたのか?
(写真は、鳩山氏勝利を伝える西日本新聞24日朝刊)

鳩山氏直筆の「誓約書」
 誓約書の署名は鳩山氏の直筆。自民党県連6区補選候補者選考員会の委員長あてで、『いかなる事情があろうとも、その決定に従うことを茲(ここ)に誓います』とある。

1誓約書.jpeg

 自民党県連の候補者選考委員会は、誓約書を提出した3人の中から、満場一致で林芳正元農林水産相の秘書・蔵内謙氏を選定。県連は役員会で同氏の擁立を決定し、党本部に公認申請を行っていた。たしかに、一連の手続きに瑕疵はない。しかし、鳩山氏はこの決定に猛反発。会見を開き、「県連の候補者選考委員会が公平・公正だったのかは、はなはだ疑問」として、無所属で立候補することを表明した。鳩山事務所の秘書によれば――「出馬の意思確認のためと言われて書いた。騙された」。文面から言って、「騙された」はあり得ない話だが、誓約書の存在がほとんど報じられなかったため、鳩山氏側の駄々っ子ぶりが隠された格好となっている。

大手メディアの不作為
 自民党都連をブラックボックス、密室談合と批判し、世論を味方につけたのは小池百合子東京都知事。鳩山氏もこれに倣った形で県連を批判し、権力に立ち向かう政治家を演出してみせた。都知事選と同じ構図だ。しかし、よく考えれば政党の公認候補選定作業で透明性の確保は困難。自薦、他薦の候補者すべてを公表するわけにはいかず、個人情報の保護にも気を使わざるを得ないからだ。必然的に「密室」での作業が主となるが、都知事選以来、自民党の地方組織は悪役。恣意的な候補者選定と見られたことが、県連推薦の候補者に極めて不利に働いたのは事実だろう。告示前日に小池氏が鳩山氏の応援に入ったことで、鳩山VS県連の構図が固まった。ただし、小池知事と鳩山氏のケースは、まったく違う。

 小池氏は公認申請を取り下げたが、鳩山氏は最後まで公認にこだわった。だから、意に沿わない「誓約書」まで書いたのだろう。両者の違いは明らかだが、新聞各紙は、なぜかこの誓約書のことを記事にしていない。「鳩山VS県連」の戦いを煽っただけで、二郎氏のルール違反については、一切触れなかったのである。告示前は、本来記事にすべきことをスルーして公認の行方を報じることに専念。誓約書のことはもちろん、補選絡みで議会制民主主義を否定する動きがあったことも無視していた。

 鳩山氏が市長を務めていた大川市議会は、「選挙」を理由に例年19日間だった9月議会を5日に短縮した。議会の存在意義が問われる暴挙だったが、新聞各紙はこうした事実を知りながら6区補選を巡るドタバタ劇を追う作業にうつつを抜かし、議会制民主主義を否定した鳩山氏や大川市議会への厳しい批判を怠った。義務を放棄してウケだけ狙った姿勢は、報道機関の自殺行為と言っても過言ではあるまい。鳩山氏の勝利で、6区有権者の地元意識と鳩山ブランドの強さを証明したのは事実。だがその陰で、ルール違反を見逃した報道機関の存在があったのもまた事実である。

鳩山氏に付きまとう醜聞
 大勝した鳩山氏だが、前途洋々というわけにはいきそうもない。告示前、週刊文春と新潮の2誌が追っていたのは鳩山氏の女性スキャンダル。裏取りができずに撤退したというが、火種が消えたと見るのは早計だ。6区最大の繁華街「久留米文化街」で話を聞けば、二郎氏の武勇伝は枚挙に暇がなく、かつて二郎氏の夜更かしに業を煮やした鳩山事務所が、「夜遊び禁止令」を出したほどだったという。公人に戻った鳩山氏に、旧悪絡みの醜聞が噴き出す可能性は高い。それにしても、普段は政治家の世襲に批判的な世論の中、「弔い合戦」となれば勝つのは決まって二世候補(二郎氏は「五世」だが)。矛盾する民意に戸惑うばかりである。



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