腰痛が理由の入院は嘘かまことか――。衆院福岡6区補選の期間中に小川洋福岡県知事が入院したことを巡り、県議会が紛糾した。腰痛悪化が原因だという知事の入院は、今月10日から17日までの8日間。知事が病院名を伏せていたため、補選後に開かれた決算特別委員会で自民党県議が危機管理上の問題を指摘し、再三入院先を公表するよう迫った。知事は拒否しており、真相は藪の中だ。
入院の有無が政局絡みになった形だが、一番の問題は首長不在時の「危機管理」。首長自身に、その認識があるかどうかだ。そうした意味で、福岡県には小川知事以上の秘密主義を貫き、危機管理に無頓着な首長がいる。福岡市のトップ、高島宗一郎市長(写真)である。
知事の入院巡り県議会紛糾
衆院福岡6区補選の告示日は11日。9日に上京した知事は、翌10日から17日まで都内の病院に入院し、18日に公務に復帰していた。この間、知事の日程を管理する秘書課や副知事らに入院先が知らされておらず、職務代理者を置いていないかったことで議会側の不信が増大した。知事が、補選の特定陣営に肩入れすることを断るため、入院を口実にしたのではないかとの見方があったからだ。
病院名の公表を拒んだため傷口が広がった格好だが、一番の問題は、病院名を公表するか否かではなく7日間も知事が所在不明となったこと。県政にとって問われるべきは、やはり当初県議側が指摘した危機管理の重要性で、知事にその認識があるかどうかだ。
県内で起きる大きな災害や事件の指揮をとるのは、すべての情報が一次的に集まる県庁。知事の在庁は絶対条件だ。不在にするなら、出先での居場所を明らかにしておくべきで、そうでなければ重大局面で職員が指示を仰ぐことができなくなる可能性がある。電話やメールは絶対ではなく、何らかの原因で不通になる可能性があるからだ。県政トップが県庁を離れる場合、所在を知らせておくのは県民に対する当然の義務。小川知事が責められるのはこの点だ。ただ、そうした意味でより問題視されるべきは、首長の所在不明が常態化している自治体の方だろう。
市長の所在不明が常態化した福岡市
2013年10月の市議会開催中、福岡市の高島宗一郎市長が、市内にあるホテルのフィットネスクラブでスポーツジムやサウナを利用していたことが判明。議会軽視だとして、市議会で追及された。この折、HUNTERの取材に応じた市秘書課は『プライベートの時間に、市長がどちらにいらっしゃるかは把握しておりません』と答えている。
2014年7月に市長の東京出張について取材した時も、市側の答えは同じ。市長の所在不明を念押しした記者に、『そうです。まったく把握しておりません』(秘書課)と明言していた。福岡市では、市長の所在不明が常態化しているのである。
福岡市も県と同様、携帯やメールで連絡が取れると言い訳してきた。しかし、前述した通り、携帯やメールによる連絡は絶対ではなく、危機管理への意識が欠如しているのは明らかだ。ちなみに、北九州市に北橋健治市長の日程管理について聞いたところ、「所在不明ということはあり得ません」(同市秘書課)。福岡市との違いは歴然である。
高島氏の場合、所在不明は遊びを隠すためという幼稚な理由だった可能性がある。2014年8月には、東京出張を利用して芸人らとの飲み会に参加。その時の様子が、テレビやラジオで明かされている。
首長の所在不明は、危機管理能力欠如の証明だ。入院の有無で小川知事を責め立てるのなら、福岡市の議会も大手メディアも、きちんと高島氏の行状を洗い直すべきだろう。