鹿児島市交通局が、市営バスの赤字を削減する目的で平成24年度から行ってきた一部路線の民間委託。その削減効果を示す数字に、市からの補助分を加えて公表していたことが分かった。効果額の算出方法を確認する過程で、交通局側が明かしたもの。税金を使って効果額に下駄をはかせ、民間委託の利点を演出していた形だ。
効果額を計算する際の基礎となる“交通局が直営した場合の予算額”についても、交通局側は積算根拠を即答できない状況。削減効果を自慢してきた鹿児島市だが、バス事業における民間委託の意義が問われる事態となりそうだ。
水増しの実態
鹿児島市交通局の営業所は「新栄」、「浜町」、「北」、「桜島」の4つ。このうち北、桜島の両営業所については、赤字削減を図る目的で平成24年度から「南国交通」に路線の管理・運営を委託している。交通局所有の約200台のバスの内、半数近くの車両を南国交通の乗務員が運転している状況だ。
一体どの程度の削減効果が上がっているのか――。市交通局への情報公開請求と取材で得た数字によれば、平成24年度から26年度までの南国交通への委託費と、委託によってもたらされたとされる“公表された効果額”の推移はこうなる。
南国交通への委託費は年間7億円以上。24年度に約7億1,900万円だった委託費が、たった2年で8億円近くにまで上昇していた。効果額は委託費の上昇と反比例して下降の一途。24年度から26年度にかけて3,000万円以上少なくなっているが、まだ約7,900万円の削減効果はある。それでは、市側が公表してきた「効果額」は、どのような算出方法で得られたものなのか――。市交通局に確認を求めたところ、次のような回答だった。
① まず、平成23年度の段階で北営業所と桜島営業所を「交通局」が直営した場合の次年度からの予算を見積った。その額は次の様になっていた。
・24年度……8億406万4,000円
・25年度……8億406万4,000円
・26年度……8億3,499万1,000円② 次に、この見積額から、南国交通との契約金額を引く。
・24年度……8億406万4,000円-7億1,930万106円=8476万3,894円
・25年度……8億406万4,000円-7億3,857万3,537円=6,549万463円
・26年度……8億3,499万1,000円-7億8,513万6,981円=4,985万4,019円③ 最後に、桜島営業所のマイナス分を補うため、鹿児島市から交通局に支出されている以下の年度別補助金を加えて「効果額」としている。
・24年度……2,583万7,000円
・25年度……2,515万1,000円
・26年度……2,884万4,000円
つまり、税金補てん分を「効果」として水増しした結果が、前掲の表の効果額というわけだ。民間委託のお蔭で、本来入るはずのない収入があったという理屈らしいが、下駄をはかせた数字を公表し、いかにも民間委託が正しかったかのように偽装した格好。市民に対する背信行為と言うべきだろう。
たしかに、市が民間委託を発表した時、助成付きの計画であることは明らかにされている。ただし、当時の新聞記事の表現は「委託の一部は一般会計から助成を見込む」(南日本新聞より)という程度。多くの市民は、削減効果を示す数字に補助金の額が加えられていたなどとは思ってもいななかったろう。正確な効果額は、これまで市側が公表してきた「効果額」から補助金分を引いたものでなければならない。数字は次の通りとなる。
ここで、さらなる疑問が生じる。市側が計算の基礎とした≪北営業所と桜島営業所を「交通局」が直営した場合の予算額≫はどのように積算されたのか――。あらかじめその予算額を高く見積もっていれば、完全なインチキとなるからだ。交通局に聞いてみたが、即答できない状況。新たな情報公開請求の結果を待って、詳細を報じる予定である。