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自民党を揺るがす二階幹事長の独善

2016年9月 8日 09:50

gennpatu 1864410770.jpg 安倍一強といわれる政治情勢の下、一枚岩を誇ってきた自民党の組織内に軋みが生じている。 
 10月23日に投開票が予定される衆議院東京10区と同福岡6区の補欠選挙。この両補選を巡って、自民党本部と地方組織がいがみ合う事態となっているのだ。
 元凶は、先月幹事長に就任した二階俊博氏。谷垣禎一前幹事長の自転車事故により棚ぼたで得た権力の座だが、就任直後から独善的な党運営に走り、都連や福岡県連から強い反発を受ける状況となっている。

造反者への甘い処分に都連は……
 二階氏は、都連との選挙バトルに勝利した小池百合子東京都知事にすり寄る形で、小池氏を支援した若狭勝衆院議員(比例東京ブロック)を「厳重注意」にとどめ事実上の無罪放免に。さらに、東京10区補選(10月23日投開票予定)の公募に若狭氏が応じることまで容認してしまった。面子丸つぶれとなった都連が反発するのは当然だろう。

 大勝したとはいえ、小池氏が都知事選で党に反旗を翻したのは事実。「推薦候補以外を応援すれば処分」という通達を出した以上、造反者を軽い処分で済まされては組織がもつまい。今回のケースを容認すれば、組織内の規律が保てなくなくからだ。ある都連関係者は次のように憤る。
「小池さんが圧勝したことは現実として受け止める。都民の人気も高い。しかし、それとこれとは別。造反者は処分すると宣言した以上、そこは守らないと組織としての示しがつかなくなる。郵政選挙の時、造反者には刺客まで送り込んだんじゃなかったか。いっとき都民から批判されても、組織として決めたルールは守るのが筋だ。自民党の処分には“厳重注意”なんてのはなかったはず。幹事長がどれほど偉いのか分からないが、二階の独断で都連をないがしろにするようなマネは許されない」

組織決定無視された福岡県連に不穏な動き
 一方、鳩山邦夫元総務相の死去に伴う福岡6区の補選。福岡県連は候補者選考委員会を複数回開き、3人の立候補希望者の中から林芳正前農水相の秘書・蔵内謙氏(35)を擁立する方針を決定。同氏を党本部に公認申請した。しかし、二階氏は県連の公認申請をたな晒しにし、二階派議員などが支援する故・鳩山邦夫元総務相の次男を推す構えだ。無視された形となっている県連の中からは「集団離党も辞さず」という強硬意見さえ上がっており、党本部との溝は深まるばかりだ。

 そもそも、蔵内氏は県連組織が機関決定した候補。対して鳩山二郎氏は、どこからも公認申請が出ておらず、両者を同じ土俵に上げること自体が間違いだ。二階氏周辺が鳩山氏を推しているのは、自民党が行った世論調査の結果で鳩山氏が優勢だったというのが最大の理由。しかし、問題の調査が実施されたのは8月中旬で、福岡6区内で名刺1枚配ったわけでもない蔵内氏に、数字が出るわけがない。故・邦夫氏の地盤だった同区内の調査では、親近感のある「鳩山」に強く振れるのが当たり前。調査には何の意味もなかった。仕組まれた茶番と言うしかない。

権勢振るう二階氏だが……
 二階氏は、補選で勝つことの重要性を繰り返し発言している。東京10区では小池都知事の動きが勝敗を決めるのは確か。知事に近い若狭衆院議員に甘い対応をしたのは、小池陣営の取り込みを図るためだ。都連の反発には一理あるが、候補者公募から若狭氏を外すことはできない。だが、広大な農村部を抱える福岡6区では党公認と地方議員の結集が勝利の絶対条件。「鳩山」の名前だけで勝てるほど、甘い地域ではない。何より、福岡の場合は、県連が積み上げた結果を党本部に上げている。無視された県連組織が、納得するわけがない。補選で負ければ政権基盤が揺らぐという二階氏の考え方は間違いではあるまい。しかし、自民党を支えているのは都道府県連の組織を構成する地方議員や党員。これを敵に回すことの方が、政権にとってのダメージは大きい。

 ちなみに、保守合同後の自民党にあって、ルールを守らず独善に走った幹事長が、成功を収めた例はない。権勢を振るう二階氏だが、地方組織を敵に回す手法を続けていれば、そのうち手ひどい反撃をくらうことになる。



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