政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
社会

汚れた五輪 ― 安倍マリオはプロパガンダ

2016年8月29日 09:20

安倍 マリオ.png 南米初開催となったリオデジャネイロオリンピックが幕を閉じた。日本選手のメダルラュシュに沸いた17日間だったが、最後にあれほど不愉快な場面を見せられようとは思ってもみなかった。
 閉会式恒例の五輪旗引き継ぎの後、繰り広げられたパフォーマンス。登場したのはゲームキャラクターの「マリオ」に扮した安倍晋三首相だった。
 独裁政治家による五輪の政治利用――。あってはならない暴挙である。
(右は、五輪閉会式のテレビ画像より)

五輪の政治利用はヒトラー以来 
 リオ五輪の閉会式。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会によるパフォーマンスは、アニメと実写、会場の現実が融合した素晴らしいものだった。だが、最後に主役として現れたのは、マリオの格好をした安倍首相。背広の襟には議員バッジを着けていた。一人の政治家がオリンピックを政治利用したという点では史上二度目。一人目がナチスドイツを率いたアドルフ・ヒトラーであったことは周知の事実である。
(下は、五輪閉会式の模様を伝えるテレビの画面。首相の襟に議員バッジが確認できる)

安倍マリオ.png

 オリンピックが、国威発揚やナショナリズムの高揚に利用されてきたことは確かだ。1936年にはドイツで冬季(ガルミッシュ・パルテンキルヒェンオリンピック)・夏季の五輪が開催されたが、後に「ヒトラーの五輪」と呼ばれたベルリンオリンピックは、ナチスがプロパガンダの一環に利用したことで知られている。

 1980年には、ソ連のアフガニスタン侵攻を受けてアメリカ、日本、カナダ、中国、韓国など30か国以上がモスクワオリンピック参加をボイコット。政治と五輪の不可分が現実となった出来事として歴史に記されている。

 五輪に暗い影を落としてきたのは、その時々の世界情勢を乱した「国家」。しかし、一人の政治家が閉会式のパフォーマンスで主役となったケースは五輪史上皆無である。国威発揚を狙ったヒトラーが登場したのは、開会宣言の時だけ。アスリートを差し置き、閉会式ではしゃぐようなマネはやっていない。開会宣言を行うのは国家元首であることが普通。日本なら、天皇陛下であり、1964年(昭和39年)の東京五輪でも昭和天皇が開会宣言を行っている。一方、閉会式に登場するのは開催地と次回開催地の首長。五輪旗を引き継ぐためで、ブラジルではリオの市長、日本側は小池百合子東京都知事が登場した。本来、日本の首相がしゃしゃり出る場面はない。

五輪使って安倍の宣伝
 閉会式パフォーマンスが、安倍個人の宣伝であったことは確かだろう。出演したアスリートたちの名前は紹介されなかったが、安倍だけは特別扱い。下の画面(五輪閉会式の模様を伝えるテレビの画面より)を見れば一目瞭然だ。

安倍マリオ3.png

安倍マリオ4.png

 「PRIME MINISTER」(首相)「SHINZО ABE」――。わざわざ、肩書や名前を表記した上、ストーリーの主役に仕立てている。まるで自民党の選挙CM。安倍の宣伝以外の何ものでもあるまい。五輪を政治利用したことは明らかであり、公費を使った分、悪質と言わざるを得ない。

「復興」置き去り
 安倍の五輪政治利用は今回のリオ五輪閉会式だけではない。東京オリンピック・パラリンピックの招致にあたっては、原発推進のため世界に向かって平然と嘘をついた。
 
 オリンピック招致の最終プレゼンテーション。安倍は福島第一原発の影響について次のように明言している。「私が安全を保証します。状況はコントロールされています」。直後の各国メディアとの質疑では、汚染水漏れについて聞かれ、こうも言った。「結論から申し上げればまったく問題ない。新聞のヘッドラインでなく、事実を見て下さい。汚染水の影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートルの範囲内に完全にブロックされています」。

 現実はどうか。福島第一の汚染水は現在も制御不能。港湾の外にまで、大量の放射性物質が垂れ流されている。安倍の発言は、なんの根拠もない口からのでまかせだったということだ。節目ごとに五輪を利用する安倍晋三。戦争への道をひた走る姿に、ヒトラーを重ねて見ているのは筆者だけではあるまい。

 最後にもう一言。テレビのワイドショーなどでは、リオ五輪閉会式の東京パフォーマンスを絶賛していた。だが、東北や復興といったキーワードが出てこなかったのは何故か?復興五輪と銘打ちながら、開発が進むのは東京ばかり。東日本大震災の発生から5年半経った今も、被災地の復興は進んでいない。



【関連記事】
ワンショット
 永田町にある議員会館の地下売店には、歴代首相の似顔絵が入...
過去のワンショットはこちら▼
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲