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混迷する福岡6区 自民・二階派の横暴と暗躍する武田良太氏

2016年8月24日 10:00

100_80712.jpg 鳩山邦夫元総務相の死去に伴い10月23日に投開票が行われる衆院福岡6区の補欠選挙を巡り、自民党幹事長に就任した二階俊博氏や側近議員らが、同党福岡県連の決定事項を覆す動きを顕在化させている。
 6区補選で県連が擁立したのは林芳正前農水相の秘書・蔵内謙氏(35)。これに対し、県連の選考に漏れた邦夫氏の次男で大川市長の鳩山二郎氏(37)が、無所属での出馬を明言して二階氏に公認差し替えを直訴し、党本部の決定が遅れる状況となっていた。
 二郎氏の背後で動いているのは、二階派の武田良太衆院議員(福岡11区)。23日、同じく二階派の古屋圭司選挙対策委員長が蔵内氏を呼び立候補辞退を打診したことで、組織内の手続きを無視した二階派の横暴に福岡県連内部から怒りの声が上がり始めた。

鳩山・武田VS県連   
 自民党県連は7月29日、県選出の参院議員や福岡6区内の県議らで構成された候補者選考委員会を開き、林芳正前農水相の秘書・蔵内謙氏(35)の擁立を決定。翌30日の県連三役会議で承認されたことから、同氏を党本部に公認申請していた。同時に選対本部を立ち上げ、本部長には麻生太郎副総理、顧問には古賀誠元幹事長や謙氏の父で県連会長の蔵内勇夫県議ら4人を就任させて、万全の体制を敷いている。

 一方、選考に漏れた二郎氏は、県連に反旗を翻し同月31日に立候補表明。無所属での出馬をほのめかし、党本部での逆転裁定に望みをかける意向を示していた。県連所属の国会議員がそろって蔵内氏の早期公認に合意する中、ひとり二郎氏を推したのが武田氏。就任したばかりの二階俊博幹事長と二郎氏を引き合わせるなど、県連決定を覆すための動きを活発化させていた。

 背景にあるのは、武田氏と麻生副総理を中心とする県連執行部側の確執だ。両者は、武田氏が県連会長だった頃から公認候補の選定を巡ってことごとく対立してきた。平成26年には、武田氏の選挙区(福岡11区)である行橋市の県議補選で、県連推薦を得た麻生系の候補が武田氏の秘書を破って勝利。その後開催された県連の大会で、補選の経緯に納得しない11区の党員らが壇上の執行部をごろつき同然に恫喝し、県警が介入するという前代未聞の騒ぎまで起こしていた。

政権内部の権力闘争へ
 県連内では孤立状態の武田氏。二郎氏にとっては心もとない味方だったが、武田氏が所属する派閥の親分、二階俊博氏が幹事長に就任したことで状況が一変する。すんなり決まると見られていた蔵内氏の公認決定は、ずるずる遅れて1カ月が経過。邦夫氏が代表を務めていた派閥横断の議員グループ「きさらぎ会」は、菅義偉官房長官を顧問に据え、二郎氏支援を打ち出すなど巻き返しの動きが加速していた。武田VS県連の構図から、麻生副総理、菅官房長官、二階幹事長といった政権内の実力者が絡む権力闘争に発展した格好だ。

ルール無視の二郎氏、武田氏の思惑とは
 してやったりの武田氏だろうが、二郎氏も含めて、ルールを守らぬ姿勢には呆れるしかない。二郎氏、蔵内謙氏ら出馬の意思を示した3人は、県連の選考委員会を前に「誓約書」を提出している。HUNTERが独自に入手した誓約書の文面はこうだ。

 私は、今般施行される衆議院福岡県第6区補欠選挙の公認候補者予定者として選考していただくにあたり、党の綱領・政策に従い、党則を厳守し、党規に違反しないことはもちろん、選考委員会に身を委ね、いかなる事情があろうともその決定に従うことを誓います。

 県連の決定に従うと誓いながら、選考から漏れると無所属での立候補を表明。党本部に公認差し替えを訴えながら、ダメでも出馬するというわがままぶりだ。まともな政治家のすることではあるまいが、なにより大川市長としての任期を1年近く残して国政に転身するという無責任さ、有権者無視の姿勢には、開いた口が塞がらない。「弔い合戦」「世襲」などといった旧態依然が、日本の政治をダメにした原因であることを忘れてはなるまい。

県連内からは集団離党の声も
 鳩山氏側の横紙破りに、自民県連の中から怒りの声が上がるのは当然。ある地方議員は次のように憤る。
「武田さんの横車は、私怨によるもの。ルールに従えないというなら、県連を出てい行けばよい。二階幹事長にしても同じ。手順を踏んだ地方組織(県連)の決定を覆すからには、それなりの覚悟があるのだろう。もし、県連の公認申請を無視するというのなら、集団離党も考えなければならない」

 別の県連関係者は、選挙情勢調査の結果を引き合いに出して蔵内氏に立候補辞退を迫った党本部の姿勢を批判する。
「県連が総合的に判断して、蔵内氏を選んだ。蔵内氏を引っ張り出したのは我々自民党の福岡県連だ。自民党が引っ張り出した候補者を、自民党がつぶすというのは筋が通らない。武田や二階は、それが分かっていない。二階や古屋は、情勢調査の数字を盾に“勝てる候補者を”などと言っているらしいが、6区での活動を控えてきた蔵内に、高い数字が出るわけがない。鳩山は一応ブランドだから、それなりの数字が出るのは当たり前。現時点での調査には、何の意味もない。集団離党?二階派の横暴が通るようなら、考えなければならない。それにしても、武田だけは絶対に許せない」

武田氏は事実上の取材拒否
 故・邦夫氏とは良好な関係だったとされるが、県連の機関決定を無視して二郎氏の支援に暗躍する武田氏。私怨か、金目か、義理人情か――武田氏に取材を申し入れたが、多忙を理由に事実上の取材拒否となっている。



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