今年3月、佐賀市内で開かれた商工会の研修会で防衛大臣政務官の藤丸敏衆院議員が「オスプレイ配備計画に係る地域振興策について」と題する講演を行った(右の写真)。内容は、日米安保ガイドライン見直しの裏話、佐賀県知事や地元自治体でさえ聞かされていなかったオスプレイ関連予算の内訳、防衛省が画策したアセス逃れの手口等々、“秘密の暴露”のオンパレードだった。
守秘義務違反はなかったのか――?確認のため、防衛省に、藤丸氏が話した内容を含む佐賀空港オスプレイ配備計画関連文書を情報公開請求した。結果は……。
(右が藤丸敏衆院議員。同氏の公式HPにあった画像より)
オスプレイ配備の背景語ったが・・・・・
3月28日に行われた問題の講演は、佐賀市多久・佐城地区商工会の研修会でのもの。藤丸氏は、オスプレイ配備がもたらす地域振興策や現在までの経緯について、70分間にわたり説明を行っていた。まず、佐賀にオスプレイを配備することになった背景については、およそ次のように説明していた。
- 民主党政権から自民党政権になった際、小野寺(五典:衆院議員)さんが防衛大臣になった。
- その頃、中国が東シナ海や南シナ海に進出し始め、ガス田が急増した。南シナ海を埋め立てて陸地を作り、飛行場やミサイルの発射台を置いているようだと分かった。
- そこで防衛を見直す必要があるということで、日米安保のガイドライン見直しの際、小野寺さんがアメリカに中国をどうにかしてくれと言った。
- アメリカ側は、“アメリカが出て行って何かあった時に、日本は助けられないじゃないか”という理由で断わってきた。
- 小野寺さんが安倍さんと相談して、多少はアメリカの後方支援を出来るようにしないといけないというので、平和安保法制になった。
- アメリカとガイドラインを結ぶ時に、南のほうを強めようということで、アメリカ海兵隊のような部隊を長崎の相浦に作ろうという計画がある。
- 相浦に物資を輸送する必要があるが、(佐賀県の)自衛隊・目達原飛行場は滑走路が小さいのでどこか近いところはないか探した。そこで、佐賀空港はどうかという話になった。つまり、目達原の輸送力を強めるために佐賀空港にオスプレイを配置することになった。
防衛省に請求したのは、小野寺防衛相(当時)と米国側(ヘーゲル国務長官=当時)の会談記録。開示された平成25年3月から26年4月までの計8回に上る両防衛担当大臣の会談記録(電話会談含む)には、藤丸氏が話したような“中国をどうにかしてくれ”――“アメリカが出て行って何かあった時に、日本は助けられないじゃないか”という趣旨のやり取りはなかった。公表資料に会談のすべてが記されていないのは当然だろうが、そうなると藤丸氏の講演内容は記録されない重要事項をしゃべったか、ただの作り話。前者なら守秘義務違反、後者なら悪質な虚偽公表ということになる。
「アセス逃れ」の根拠は非開示
次に、オスプレイ駐屯地の面積についての藤丸発言要旨。「アセス逃れ」として批判を浴びた部分だ。
- 佐賀空港の側に70ヘクタールちょっとの土地がある。
- 35ヘクタール以上になると環境調査(アセスメント)が必要になる。
- 35ヘクタールなら調査しなくて済む。
- だから、今のところは35ヘクタールということになっている。
- 私は、全部買えと言っている。
防衛省への情報公開請求で出てきた関連文書が下。佐賀駐屯地(仮称)の場所を大まかに示した図面にある敷地面積は、黒塗り非開示となっている。つまり非公表。藤丸氏が明言した「35ヘクタール」が事実なら、これまた守秘義務違反。間違いなら、虚偽公表である。
予算絡みは守秘義務違反が濃厚
最後がオスプレイ関連予算についての発言。藤丸氏は、総額106億円に上る27年度の佐賀空港関連施設整備予算について、調査費、基本検討費、造成設計費、実施設計費、敷地造成費、用地取得費、移転補償費などの詳細をパワーポインントで作成された資料で示し、次のように話していた。
- 防衛省がつけた27年度の予算は106億円。
- 敷地の造成工事に75.9億円、用地買収費に14億円くらい、あと土地の設計費。
この藤丸発言の裏付けとなるのが、防衛省が計上した佐賀賀県内のオスプレイ関連予算資料。開示された文書の中で、該当するのは下の2枚だ。
オスプレイ駐屯地の用地買収額は黒塗り非開示。建物等の移転補償費などについても同じく非開示だ。造成工事や設計にかかる費用については、どこにも記載がなかった。ただ、予算絡みの話に関しては前述のパワーポイント資料が防衛省の内部資料だったことが国会で明らかになっており、防衛省が改めて数字を隠したことで、藤丸氏の守秘義務違反はより濃厚になったと言わざるを得ない。守秘義務違反であれ虚偽公表であれ、藤丸氏が国会議員失格であることは言うまでもない。