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僭越ながら:論

これほど不愉快な選挙があったか?
東京都知事選 小池氏圧勝

2016年8月 1日 09:55

20160719_h01-02.jpg 注目の東京都知事選挙で、元防衛相の小池百合子氏が初当選を果たした。自公推薦の増田寛也氏を112万票、野党統一候補となった鳥越俊太郎氏を157万票あまり引き離しての圧勝だ。
 出馬に至るまでの仕掛け、メディア利用の巧みさ――いずれも見事と言うしかないが、勝因の一つが週刊誌による度を越えた鳥越つぶしにあったことは確か。歪んだメディアが勝敗の帰趨を左右したという意味において、これほど不愉快な選挙は記憶にない。

奏功した小池氏の選挙戦術
 猪瀬直樹、舛添要一という都政トップが2代続けて辞任するという異常事態を招いたのは、言うまでもなく「政治とカネ」の問題。背景にあるのは、自民・公明が牛耳る東京都政の歪みだ。小池氏は、出馬に至る過程で巧みに自民党都連や都議会を抵抗勢力に仕立て上げ、巨悪に立ち向かうジャンヌダルクを演出してみせた。かつての親分、小泉純一郎氏の手法を真似た格好だが、選挙慣れでは候補者中一番。堂に入った演説から次々に繰り出される施策の数々、シンボルカラーのグリーンを前面に出した絵になる選挙戦術……。クールビズを定着させた立役者だけに、宣伝戦のうまさは群を抜いていた。

 政策実現力や安定感では実務家の増田氏が一番だったが、担いだのが小池氏によってブラック扱いされた自民党。知名度不足もたたって、二位に甘んじる結果となった。気の毒としか言いようがない。

 当初善戦すると見られていた鳥越氏だったが、日を追うほどに支持は急落。結果的に小池氏から大差を付けられての第三位となった。告示2日前という究極の後出し立候補のため準備不足。訴えの中心に据えた憲法改正や原発という課題が、有権者に都政の課題として受け止められなかったことも大きく響いた。街頭演説の少なさが、やる気のなさを感じさせたのも事実だろう。だが、鳥越氏惨敗の最大の要因が、週刊文春による疑惑報道にあることは疑う余地がない。

かつてない候補者バッシング
 文春・新潮という週刊誌2誌が報じた鳥越スキャンダルが、選挙戦の行方に大きな影響を与えたのは確かだ。7月14日の告示直後、報道各社が伝えた情勢は「小池、鳥越が接戦、増田が追走」。保守分裂の間隙をついて、鳥越氏の善戦が予想される状況だった。政策論争の深まりに期待が集まる中、選挙戦の様相をガラリと変えたのが、21日に発売された週刊文春の記事である。

 選挙の折り返し点で同誌が持ち出してきたのは、ライバル誌である新潮が13年前に没にした鳥越氏の女性スキャンダル。しかも、当事者女性の直接証言はなく、その夫と称する人物や実在が疑われる「関係者」の話だけに依拠した記事だった。常識的なメディアなら掲載自体を躊躇する内容。反論に集中できない“候補者”という立場につけ込んだ、悪質な選挙妨害と言っても過言ではあるまい。

 与太記事とはいえ、甘利明、舛添前知事の疑惑を暴いた「文春砲」の威力は強大。スキャンダル報道以後、鳥越氏への支持は急速に勢いを失っていく。同氏陣営にとって特に痛かったのは、文春の記事が「淫行」という女性がもっとも嫌う内容だったこと。報道各社が行った中盤での情勢調査では、わずか1週間で鳥越氏への女性の支持が急落していた。

 止めを刺すかのように、選挙終盤の28日には週刊新潮が鳥越スキャンダルの後追い。文春も前号の鳥越疑惑を説明する記事を掲載し、右寄り2誌が政権に批判的な候補者をつぶしにかけた形となっていた。この間、橋下徹、東国原英夫などかつて鳥越氏から批判を受けた右寄りの元政治家たちが鳥越批判を展開。金満整形外科医まで加わって、選挙期間中では異例の候補者たたきが続く事態に――。これまで、一人の候補者をここまで叩きのめすような選挙は前例があるまい。

 “右寄り改憲派”による、よってたかっての鳥越バッシング。選挙とは無縁の人格攻撃にうんざりしたが、今後の展開を見据えると、いっそう不愉快な選挙結果と言うしかない。小池氏が抱えるカネ絡みの疑惑、上から目線の同氏の本質、予想される都議会との対立――。東京の有権者は早晩、この選択が間違いだったことを思い知ることになる。



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