「広告を出しておけば、(報道を)抑えることができる」――こううそぶく高島宗一郎市長の下、福岡市の広告・宣伝費が、市長選の年に大幅な伸びを示していた。高島氏が二期目を目指した平成26年度だけで、前年度の約4倍にあたる1億7,000万円。税金によるメディアコントロールの実態だ。
福岡市への情報公開請求で入手した広告・宣伝業務の契約書類を精査してみると、カネで取り込まれる「地元紙」の姿が浮き彫りとなる。
(写真は福岡市役所)
市長選の年に広告・宣伝費が急増
高島氏が市長に就任したのが平成22年12月。同年度から27年度までの広告・宣伝費用の推移は次の様になっていた。
市長選が行われた26年度に急伸した広告・宣伝費。内容は様々で、必要性に疑問が残るものばかりだ(参照記事⇒「税金でメディア支配 ― 市長選の年、福岡市の広告費4倍に 」)。市は月2回(1月は1回で年23回)、「市政だより」を全世帯に配布しており、この印刷費と配布業務費に億単位の公費を使っている。ホームページにかける経費も莫大だ。さらに、市が発表する施策については「記事」の形で報道されており、その上に広告や宣伝を出すことは明らかに無駄遣いだろう。歴代市長の時代、せいぜい4,000万円程度だった広告・宣伝費が高島市政下で急伸したことは、カネの力で報道をコントロールしようとする市長の考え方を反映したものだ。
突出する西日本新聞グループへの支出
問題は、特定のメディアグループに対する集中投資である。市及び市の外郭団体が平成26年度から今年度までに新聞・テレビやその系列企業と結んだ広告・宣伝などの契約状況を調べてみると、次のような実態が明らかとなる。
市長選が行われた平成26年度は、西日本、読売、朝日、毎日、日経といった市内で一定の販売部数を有している新聞各紙のグループににまんべんなくばら撒いた形。そのうち、地元紙「西日本新聞」への支出だけが群を抜いている。
福岡市が囲い込みを行っているのは、明らかに「西日本新聞」。同紙とそのグループ企業への支出は市長選が行われた平成26年度が約9,744万円で、系列の広告代理店「西広」には、7,400万円という驚くべき金額が支出されていた。約2,500万円だった2位の読売グループを大きく引き離した格好だ。全体の広告・宣伝費が半分以下に落ちた27年度における西日本新聞グループとの契約額は約3,000万円。減ってはいるが、突出ぶりは異常と言うしかない。
ここ数年、市長批判を手控えている西日本新聞。沈黙する理由が、同紙とそのグループ企業に対する過大な広告・宣伝費にあるのなら読者への背信と言うしかあるまい。報道に与えられた最大の使命は「権力の監視」。西日本を含む記者クラブ加盟社は、本当にその役割を果たしているのだろうか……。