今年4月、日本国内における「表現の自由」の状況を調査した国連の特別報告者が、権力側の圧力に委縮する報道機関の現状に警鐘を鳴らした。安倍一強が進むにつれ弱まる政権批判のトーン。だが、地方自治体ごとにある記者クラブは、何年も前から“権力の犬”状態だ。
顕著な例としてこれまで度々取り上げてきた福岡市だが、高島宗一郎市長(写真)が2度目の市長選に挑んだ平成26年度に、同市がメディア各社に出した広報・宣伝などの委託費が、前年度の4倍近くにまで膨らんでいたことが分かった。
2回に分けて、税金による報道支配の実態を検証する。
広告で報道コントロール
福岡市の関係者によれば、「広告を出しておけば、(報道を)抑えることができる。民間だってやってるでしょう」が高島市長の持論。民放テレビのアナウンサーあがりでメディアの現実を知っているだけに、報道をコントロールする術を知っているのだという。
福岡市における広告・宣伝費の推移はどうなっているのか――市への情報公開請求で、平成26年度から今年7月までに、市及び市の外郭団体が新聞・テレビやその系列企業と結んだ広告・宣伝などの委託実態を調べ、一覧表にまとめた。ちなみに、福岡市長選が行われたのは平成26年12月である。
市長選の年、急増した広告・宣伝費
高島氏が二期目の当選を決めた26年度は、約1億7,065万円の支出。それが、27年度には7,471万円と半分以下に急落していた。高島氏の市長就任は平成22年12月。22年度からの広告・宣伝費の推移を振り返るとこうなる。
高島氏の就任前、毎年4,000万円台だった広告・宣伝費の契約額が23年度には約6,400万円に上昇。24年度には約9,200万円に急伸し、25年度に4,500万円といったん落ち着き、市長選の年に一気に1億7,000万円に達していた。前年の約4倍。翌年度には約7,500万円と半部以下に落ち込んでおり、市長選の年の突出ぶりが際立つ形だ。“税金を使って選挙に不利な報道を排除したのではないか”――そうした疑念を持たれてもおかしくあるまい。
「広告を出しておけば、(報道を)抑えることができる」――。市長のこの言葉を裏付けるように、高島市政下で、市や市長を厳しく批判する報道は影を潜めている。東京往復にさえファーストクラスを使うという、でたらめな出張の現状。半額公費で東京滞在を延ばして遊び回る姿勢。犯罪者からの政治資金提供……。議会で追及を受けたことさえ、記事にしないというのが市政記者クラブの現状だ。つまりは権力の犬の集まり。発表モノや、市長の施策を持ち上げる報道ばかりで、市政の実相が市民に伝えられることはない。税金によるメディア支配が、いよいよ福岡市を歪めている。
次稿で、福岡市が発注する広告・宣伝費の詳細について報じる。