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稲田防衛相側の違法寄附に新たな疑問
60万円は永平寺町長の懐に?

2016年8月26日 09:30

 永平寺町長への寄附--2.jpg稲田朋美防衛相が代表を務める「自民党福井県第一選挙区支部」が、選挙区内にある福井県永平寺町の河合永充町長に公職選挙法に抵触すると見られる寄附を行っていた問題に絡み、河合町長が受け取った現金が極めて不透明な状態にあることが分かった。
 町長が稲田氏側から受け取った寄附は2回で計60万円。50万円については不可解な処理状況で実態不明、10万円は表の資金として処理されておらず、全額が町長の懐に入った形となっている。

実態不明の60万円
 稲田氏の自民支部が福井県選挙管理委員会に提出した平成26年分の政治資金収支報告書によれば、同支部は平成26年1月6日に50万円、2月24日に10万円を永平寺町長の河合永充氏に寄附していた。下が、寄附を受けた河合町長が発行した領収書である。

永平寺町長領収書2.jpg永平寺町長領収書1.jpg

 河合町長が寄附を受けたのは、永平寺町長選挙の時期。町長選は2月18日告示、23日投開票の日程で行われ、河合氏が初当選を果たしていた。
 ≪自民党福井県第一選挙区支部からの寄付は、選挙運動の費用として使われたのではないか?≫――確認のため、永平寺町選管への情報公開請求で町長の選挙運動費用収支報告書を入手した。下が、同報告書の収入の記載欄だ。

永平寺町長選.jpg

 結論から述べると、自民党福井県第一選挙区支部の政治資金収支報告書にある河合町長への2回分計60万円の寄附は、この選挙運動費用収支報告書には記載されていない。上掲の選挙運動費用収支報告書には「1月20日」に自民党福井県第一選挙区支部から50万円の寄附を受けたとの記載がある。しかし、稲田氏の自民支部の政治資金収支報告書や町長が発行した領主書によれば、同支部が河合町長に50万円を寄附したのは「1月8日」。選挙運動費用収支報告書にある寄附の日付とは合わない。つまり、自民支部の報告書にある50万円と、選挙運動費用として計上された50万円は別のカネということになる。(下が選挙運動費用収支報告書の該当部分。赤いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)

永平寺町長選~1~1.jpg

 50万円の“2件”の寄附があったとする理由はまだある。町長の選挙運動費用収支報告書にある50万円が「無償提供」となっているからだ(下参照。赤いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)。選挙運動にかかる費用のうち、「無償」とは現金の動きがなかったということ。選挙運動費用収支報告書には、何らかの物品もしくは人的支援を“ただ”で受けた場合、現金換算した金額を収入として記載するよう定められている。この場合、「無償提供」などと書くのが普通だ。上掲の報告書の記載は、町長が50万円に匹敵する金銭以外の供与を受けたということで、現金の寄附を受けたという形にはなっていない。さらに、2月24日に自民支部が町長に寄附した10万円については一切記載がない。河合町長の支援団体「かわい永充後援会」の同年の収入も確認したが、稲田氏側からの60万円に該当する寄附の記載はない。60万円は、河合町長の懐に入った格好となっている。

永平寺町長選~1~2.jpg

町長 ― 「稲田さんの方から言われて領収書を書いた」
 問題は次の2点に絞られる。

  • 町長の選挙運動費用収支報告書に間違いはないのか?
  • 自民支部からの2件の寄附、計60万円に違法性はないのか?

 選挙運動費用収支報告書についての疑問を永平寺町選管に確認したところ、連絡してきたのは河合町長本人。無償提供についての説明はなかったが、自民支部からの寄付については「稲田さんの方から『問題はないから』と言われて私の個人名で領収書を書いた。違法性はないと聞いていた」。10万円の処理については記憶が定かでなく、処理について検討しているとしている。

 仮に、前述の50万円が選挙運動費用の記載ミスによるもので同一のカネだったとしても、稲田氏の自民支部が行った町長個人への寄附は、公選法に抵触する可能性が大。消えた10万円についても同様だ。稲田氏側から町長に渡った60万円は、公選法が禁じる“選挙区内での寄附”だった可能性が高い。



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