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僭越ながら:論

小池百合子の正体 ―病み上がり発言の波紋―

2016年7月20日 10:05

 アメリカの大統領選では狂気に満ちたトランプが共和党の候補者に決まったが、日本の選挙で他候補を罵って当選した人は少ない。
 14日に告示された東京都知事選に立候補した自民党の小池百合子氏が、対立候補の鳥越俊太郎氏に対し、舌戦の域を超えた誹謗中傷を行い波紋を広げている。
 街頭演説で小池氏が発したのは「病み上がりの人を連れてくればいいというものではない」という一言。鳥越氏だけでなく、病気を克服して社会でがんばるすべての人の心を傷つけるものだった。小池氏に、都知事になる資格があるのか?

鳥越氏を「病み上がり」と批判
 問題の発言は、小池氏が17日に秋葉原で行った街頭演説で飛び出した。小池氏を排除して増田寛也元総務相氏を選んだ自民党をひとしきり批判した後、こう述べている。

都知事は、政党のほんの一握りの人の談合によって決まるものではないんです。
この人なら勝てると言って、政策も何もない人、病み上がりの人を、ただただ連れてくればいいというものではないんです
その人が、実際に都民の皆さんにとってプラスになる。そして、何よりも本人にやる気がある。その人を、私は皆さんが選んでいただければいいと、この度立候補しているわけでございます。

 『政策も何もない人、病み上がりの人』は、鳥越氏を指した言葉だ。鳥越氏の出馬表明は告示の2日前。公約を練る間もなく選挙に突入した同氏が、準備不足を指摘されてきたのは事実である。また、同氏が4回のがん手術を経験していることも知られている。小池氏は、対立候補である鳥越氏の、弱点を突いたつもりだったのだろう。しかしこの手法は、政治家としても人間としても最低。特に“病み上がり発言”は絶対に容認できない。

 「病み上がりの人」という表現を使ったことは、鳥越氏が病人であるかのような印象を植え付け、同氏への支持が広がるのを阻止しようという狙いからだろう。小池氏は、「政策論争」ではなく相手候補への誹謗中傷をもって、自分との違いを際立たせようとしたのである。だが、前提が間違っている。

 鳥越氏の最後のがん手術は7年前。「病み上がり」が病後の体調不完全な状態を示す言葉である以上、明らかな誤用。“がん”を克服して頑張る人たちのことを無視した暴言に過ぎない。大方のがん患者は、手術や抗がん剤、放射線治療などで病気を克服して社会生活に戻る。定期的に検査を受けながらの暮らしは、経験者でなければ分からないつらさと隣り合わせだ。それでも、懸命に人生を走り抜く人たちを、小池氏は「病み上がり」と言って突き放したに等しい。がん経験者は、一人前ではないというのだろうか。

嘘、ごまかし、開き直り 
 下劣な選挙手法を用いた小池氏は、19日に放送された民放のバラエティー番組でその正体を露呈させる。小池、鳥越、増田の主要3候補が出演したその番組中、鳥越氏から病み上がり発言の確認を求められた小池氏は、『言ってないでね。記憶にないですね』と発言自体を否定。鳥越氏の追及に対し、次の様に言い分を変えていく。

  • 事実関係の再確認に対し――『でも今、お元気じゃないですか
  • 言ったのかどうかの確認に――『言ったかどうか、記憶にないですよ
  • テレビの報道番組で流された実際の画像とテロップを示され――『それは失礼しました。アハハハハハ
  • さらなる追求に――『大変お気遣いをしているわけです、鳥越さんに対して』
  • がんサバイバ―(がん経験者)への差別だと批判され――『それを決めつけているのは鳥越さんでしょ。これが選挙なんですよ、坂上さん』

 開いた口が塞がらないとはこのことだ。最初は病み上がり発言自体を否定していた小池氏だが、証拠を示され笑いながら謝罪。嘘とごまかしを連ね、最後は「これが選挙」だと開き直っている。矛盾しているのはこのあとの発言である。
『トランプさんなんていうのは、もっと凄いこと言ってますよね。これをもう、1年も2年もやっている。それを比べると今回はですね、これ(番組での討論)なんか政策論争のうちに入ってないですよね。だから、政策論争の場をですね、自ら放棄されるというのはいかがなものかと……』。
 トランプを持ち出し自己を正当化。病み上がり発言を反省するどころか、傷つけた相手の鳥越氏を批判したのである。政策論争の前に誹謗中傷を行ったのは小池氏なのに、この態度。小池氏に品性のかけらもないことがよく分かったが、恐ろしいと感じたのは、この人が政治家であるということだ。

 子どもが悪いことをしたり人を傷つけたりしたら、「謝りなさい」というのが大人の務め。政治家は、そうした大人の規範となるべき存在だろう。小池氏の病み上がり発言は、鳥越氏だけでなく、がん経験者すべてに謝罪すべき暴言。もちろん、笑って「失礼」で済ませられる性格のものではない。それが、開きおなったあげくに被害者批判。この程度の人間が、首都の顔になるかもしれない政治家だというのだからぞっとする。小池氏の言動を見た子どもたちがどう思うか――。筆者には、「軽蔑」という言葉しか浮かんでこない。



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