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小池百合子氏の自民支部 「情勢調査」で不可解支出

2016年7月 8日 09:25

小池氏選挙区支部.jpg 小池百合子元防衛相の政党支部が委託した「選挙区の情勢調査」を巡り、不可解な支出の実態が浮かび上がった。
 小池氏が代表を務める「自由民主党東京都第十選挙区支部」が東京都選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書の記載から、同支部が平成24年から26年までの3年間で計3回、総額で210万円の「調査費」を支出していたことが判明。HUNTERがこの支出先を調べたところ実態不明で、政治資金収支報告書に記載された住所には支出を受けたとされる名称の法人も団体も存在していないことが分かった。
 同支部の会計責任者に確認したところ、一連の調査費支出は「選挙区の情勢調査」で、調査を請負ったのは「個人」だという。この個人が代表を務める株式会社に連絡を試みたが、10日近く連絡がつかない状態となっている。

正体不明の調査費の支出先
 下は、「自由民主党東京都第十選挙区支部」が東京都選管に提出した政治資金収支報告から、24年~26年の調査費支出のページだけを抜粋したものだ。

第十選挙区支部.jpg

 平成24年の調査費支出は95万円、25年が25万円、26年が90万円となっている。支出先は24年が「MSMILE」、25年が「MSMILE」、26年は「MーSMILE」。この記載からすると、調査費支出を受けたのはどう見ても会社か団体だ。

 記載のある住所地と名称で法人登記を確認してみたが、「新宿区のMSMILE」は現在も過去も未登記。「渋谷区のMーSMILE」で1件ヒットしたが、住所地が違う上に職種が「芸能プロダクション」でまったくの別会社。収支報告書の記載に合致する会社や団体は、存在していない。これは、一体どういうことなのか……。自由民主党東京都第十選挙区支部の会計責任者に取材した。

情勢調査を「個人」に依頼
 第十選挙区支部の会計責任者によれば、問題の支出は「選挙区の情勢調査」にあてられたもので、支出先は「個人」なのだという。個人で情勢調査ができるとは驚きだが、会計責任者は「間違いない」と断言する。東京都選管に情報公開請求して調査費支出に該当する領収書の写しを入手したところ、領収書の発行者は「MーSMILE ○○○○○」(○は実名)。法人とも個人ともとれる格好となっていた。下は、平成26年と24年の調査費の領収書だ。

領収書.jpg

 そこに記された電話番号にかけてみたが、26年の領収書にある番号は「現在使われておりません」。24年の領収書にある番号にはつながったものの、電話の主は「MSMILEも○○○○○(実名)も、まったく知らない」という返事だった。ただ、電話の主は当該電話がある住所地が新宿区のMSMILEの場所と同じであることを認めおり、通常なら変わるはずの電話番号が、現在も使われていることに疑問が残った。

情勢調査を請負った個人はアパレル関係者
 支出を受けたのが個人だとして、本当に情勢調査ができるのか?会計責任者に、調査を請負った人物が代表を務めているという会社の社名を聞き、MーSMILEを自称する人物(以下、T氏)に詳しい話を聞いてみることにした。

 外観3ビル.jpg情勢調査を請負ったというT氏が代表を務める会社(以下、A社)は、都内渋谷区の一角にある小さなビルの2階にあった(右の写真)。住所地は、平成26年に調査費支出を受けた「MーSMILE」と同じだ。登記簿で確認したところA社は平成24年の設立。24、25年の「MSMILE」の住所(新宿区)は、このA社が26年に渋谷区内に移転する前の住所地だった。政治資金収支報告書に記載されていたT氏の住所は、法人の本店所在地だったことになる。26年に自民支部の仕事を受けた時点でのT氏の住所は、港区赤坂。T氏は、正確な住所を書いていなかった。

 A社の登記上の本店があるビルには、郵便受けに小さく社名があるだけ。看板などは出ていない。取材を開始してから10日、朝昼晩とA社に電話しても留守電の応答さえなく、会社を訪ねても誰一人出てこないといった状況が続いている。実態不明ということだ。株式会社として登記された会社が、10日も連絡不能――普通でないのは確かだが、一番の問題はA社の職種だ。資本金100万円のA社は、なんと「オーダースーツ」の専門会社。代表者自身についても、会社の公式サイトの中ではこうなっている。

  • 平成17年に大学卒業
  • 平成21年にオーダースーツサービスを開始
  • 平成24年にA社立ち上げ

 会社登記の目的欄には20以上の様々な業務が記されており、その中に「マーケティングリサーチ業務」ともある。しかし、総合的に見て、選挙絡みの情勢調査と縁のある会社とは言い難い。アパレル関係者であるA氏と選挙の情勢調査も結び付かない。

膨らむ疑念
 選挙区支部の会計責任者は、聞いてもいないのに「毎日新聞もこの件で話を聞きに来たが、謄本がとれたと言っていた。会社の謄本。そこの代表者が個人で調査をやっていた。そこは安いから(調査を)頼んだ。毎日はその代表者と会えたと言っていた」……。“毎日新聞が書いていないのだから、問題にはならない”と言いたいらしいが、毎日とHUNTERは無縁。調査費支出への疑念は、膨らむ一方だ。

 A社が登記されていることを強調しているが、浮上した疑問とは何も関係がない。第十選挙区支部の調査費支出は個人にあてたもの。A社の代表者が、本当に「情勢調査」ができるのかどうかが問題なのである。関係者不在で証明ができないという状態が続けば、「調査費」とされる支出の目的自体に、疑念が生じるのは当然だろう。まさか、洋服の支払いだったというわけではあるまいが……。



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