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選挙報道の虚実

2016年7月 7日 10:25

週刊誌 今月10日投開票の参院選を巡り、無所属や諸派の候補者名を省いて投票先を聞き出していた日経、読売両紙の選挙情勢調査。既成政党の候補者に数字が集まるよう操作しており、調査の信頼性に疑問符が付いた格好だ。
 選挙の時期に氾濫する議席予測は、どこまで信用できるのか――こうした疑念を増幅させるような実例が存在する。
 今週発売の「週刊現代」が報じた参院選の特集は、メディア各社の調査生データをまとめたもの。同じであるはずの日経と読売の数字が、大きく違っていたのである。
(右が週刊現代の誌面)

同一データで異なる数字
 読売と日経の情勢調査を請負ったのは日経のグループ企業「日経リサーチ」。日経リサーチは、コールセンターを持つ「トランスコスモス」という会社に、実務を再委託していたことが分かっている。これまで報じてきたように、トランスコスモスの電話調査は無所属や諸派の候補者を省いたもの。事前の見立てで不必要と判断した候補者の名前を外していた。共同調査である以上、そうやって得られたデータは一つ。当然両紙が持つ「生データ」の数字は、すべて同じものになるはずだ。ところが……。

 下は、「週刊現代」7/16号の参院選直前大特集“全国紙・NHK・共同通信が調査した最終当落「生データ」を一挙公開!”の誌面。先月22日の公示直後に実施された新聞と共同通信、NHK、自民党本部の調査結果生データなのだという。すると、日経と読売の数字は同じでなければならない。

20160707_h01-02.jpg

 だが、データの一覧をよく見ると、同じ数字であるはずの読売と日経の「生データ」がまるで違っている。日経の数字と比べ、読売の「生データ」では自民党候補の数字と民進党候補者との差が極端に離れているのだ。日経の数字を基準にすると、読売の自民党候補の数字は、すべて数ポイント下駄をはかせた状態だ。酷いもので、愛知選挙区の自民党候補などは12.1ポインも上乗せされている。逆に、民進党の候補者の数字は、どこの選挙区も1~5ポイント少ない。

 報道機関の情勢調査では、実施段階での数字を「生数字」と呼ぶ。調査は、曜日や時間帯、回答者の年齢などによって偏りが出るため、報道機関ごとに決めた方法で修正値を算出するのが普通だ。現代に掲載されたデータについては、同一データであるはずの読売と日経の数字が違っているので、次の二つのことが考えられる。

  • 読売・日経のどちらかの数字が生で一方が修正値
  • どちらも修正値

実際の記事は……
 どちらのケースであったにせよ、読売が現代に掲載されているデータを使って記事を書けば、自民党が圧倒的に強いか、負けているところでも接戦ということになりかねない。しかし、6月24日読売新聞朝刊に掲載された選挙区ごとの情勢分析は、日経のデータとほぼ同じ内容になっている。例えば、福岡選挙区。現代に掲載されたデータでは、日経が自民党の大家氏の数字を「31」としているのに対し、読売のそれは「40.4」。大家氏は9.4ポイントも加点した形でダントツ一位になるはずだ(下が、週刊現代に掲載された福岡選挙区のデータ一覧)。

現代.jpg 少し説明しておくと、新聞の情勢分析は「届け出順」ではない。情勢調査で得た数字や取材結果を加味して、記事の中で順位付けしているのが普通だ。「接戦」「横一線」とあっても、先に名前が出てくる方がリードしているということ。現代が掲載した読売のデータが本物なら、自民大家氏の名前が先に出てこなければならない。しかし、実際の記事はこうなっていた。

読売紙面 福岡.jpg

 古賀氏リードの書き方。データとはまるで違う結果なのだ。新聞記事に合致しているのは、日経の数字。現代に掲載された読売の生データは、公示日直後に実施された情勢調査の数字ではない可能性がある。

 以上、新聞や週刊誌に出てくる選挙情勢調査の数字が、いかにうさん臭いものであるかを表す事例である。最後に、実際に電話調査を受けたという読者からのメールを紹介しておきたい。

“6月末から先週土曜日まで、5回(参議院選挙3回・都知事選2回)も世論調査の電話アンケートが来ました。土日の電話でも出るのは主に主婦である私です。
 参議院選挙に関するアンケートでは、選挙区の候補名の中に、街頭演説会で何千人もの支持者を集めている候補者の名前がなく、「決めていない」を選択しなくてはなりませんでした。「その他」の選択肢さえなかったのです。比例区も同様。既成政党だけで、届出されたすべてを並べたわけではありませんでした。
 それにしても、同じ家に5回もかかって来るのはおかしいと思いませんか?無作為抽出なんて嘘ですよね!”

 選挙情勢調査の闇は、思った以上に深そうだ。



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