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民進党 労組依存の実態

2016年7月15日 10:30

 民進党.jpgのサムネイル画像改憲勢力が、憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を獲得した参院選。高笑いの自公に対し、野党第一党の民進党は改選議席を下回る32議席しか奪えず、事実上の負け戦となった。
 自民一強を打破し、チェック機能が働く政治状況を取り戻すには健全野党の存在が必要。比例区は民進党に一票を投じようかと思い「選挙公報」で同党候補者の顔ぶれを見てみると、「労働組合」の代表がズラリ。正直、腰が引けた。
 民進党が地域に根付かず、風頼みの選挙ばかり繰り返してきたのは、労組依存の体質から脱しきれないためだ。参院選の結果から、改めて同党の現状を検証した。

「労組と進む。」民進党
 下は、参院選で配布された選挙公報。民進党比例区候補22名のうち、12名が労組の組織内候補だった。比例の得票は11,750,965票。686万人が加盟するという「連合」の票が、同党を支えているのは事実だ。

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 比例候補者の経歴を見てみよう。出身労組が明記されていない候補者もいるが、多くは「○○労連」「○○総連」「○○労組」。これでは、「国民と進む。」ではなく「労組と進む。」だ。労組加入の経験がない人にとっては、異質な集団に見えてしまうのではないだろうか。同じような感想を持った有権者は少なくなかったらしく、次のようなメールを送ってきた読者もいた。

――私は労組に入っていないため、民進党の比例区候補の顔ぶれを見て一票を投じるべきかどうか迷いました。身近に感じなかったと言うべきでしょうか。私が住む小学校区には自民党議員の後援会組織がありますが、民主党時代を含めて、民進党議員の地域後援会など聞いたこともありません。民進党は、地域社会に根を張った政党ではなく、職域政党なんですね。この体質を変えない限り、自民党を凌駕する勢力にはなり得ないと思います。改憲には反対なので民進に入れましたが、スッキリしません。(30代サラリーマン男性)

 民進党内で労組が力を持つ状況は、選挙結果を見ても明らかだ。今回の参院選で当選した比例区候補の最終順位を、下の表にまとめてみた。左から候補者名、個人の得票、所属労組又は元職の順だ。労組の組織内候補はピンク色で示した。 

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 当選者11名のうち、いずれかの労組の組織内候補が8名。落選組の上位4人も労組の組織内候補だった。労組支配の実態が、露骨に出た結果。やはり「労組と進む。」が民進党の現実だ。

比例トップは原子力ムラの議員
 選挙結果からは、同党が国民の支持を回復できない原因も見えてくる。比例区トップは小林正夫氏。今回で3度目の当選となった彼を、知っている有権者はそれほど多くはあるまい。小林氏は元東京電力労働組合副執行委員長。電力総連副会長から参議院議員に転身した人物だ。つまり、原子力ムラの一員で、選挙は電力総連が丸抱えしていることが明らかになっている。

 小林氏の前回の選挙は平成22年。電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」は、前年の21年に政治団体「小林正夫と民主党を支援する会」(現在は「小林正夫を支援する会」に名称変更)に3,000万円、22年に同団体と小林議員本人にそれぞれ2,000万円、650万円を寄附していたことが分かっている。支援する会の代表者は、電力総連政治活動委員会の代表者と同一。主たる事務所も電力総連のビルの中だ。小林議員が総務省に届け出た正式な"国会議員関連政治団体"は「民主党参議院比例区第39支部」と「小林正夫後援会」だが、こちらには電力総連からの寄附はゼロ。小林氏の選挙は、すべて電力総連が仕切っており、まさに“丸抱え”となっていた。

 電力総連の丸抱え議員は、もう一人いる。関電労組出身で電力総連の会長代理を務めていた浜野喜史参院議員だ。同氏の初当選は平成25年。電力総連は24年に、都内港区三田の電力総連が入るビル内に浜野氏支援のための政治団体「浜野よしふみを支援する会」を立ち上げ、同年に電力総連政治活動委員会が5,000万円、25年に3,000万円を寄附していた。参院選があった25年は、浜野氏本に500万円の寄附も行っている。また、浜尾氏の出身母体である関電労組は24年、大阪府内に「浜野よしふみを支援する会(喜政会)」を設立。関電労組の政治団体が喜政会に対し、1,000万円の寄附を行っていたことが分かっている。

 3.11後、電力総連の組織内候補がやることは一つ。原発の擁護、推進だ。小林氏は、民主党政権時代から国会で原発擁護の発言を連発。平成22年3月23日の参院予算委員会の質疑では、次のような発言を行っていた。

 私は原子力発電は不可欠なもの、これからもきちんと推進をしていかなきゃいけないものだと思います。あわせて、ウランの再利用など考えると、プルサーマル発電をしっかり進めていく、それと核燃料サイクルの構築を行う。最終的には高速増殖炉、これの原子力発電、このことを行って、やはり資源が少ない国である我が国にとって、ウランを再利用していくという、こういうことが私は必要だと思います。

求められる「労組依存」からの脱却
 旧民主党が有権者から見放されたのは、すべてに曖昧な同党の姿勢が原因だ。憲法改正に関してもそうだが、原発を巡る議論でも反対と推進が分かれたまま。重要な政治課題について、党内のコンセンサスが得られないまま選挙に臨み、党勢回復が遅れる事態となっていた。民進党になった現在も実情は同じ。同党の議員は、連合の主力労組である電力総連の力を恐れ、原発についての発言を控える傾向が強い。有権者の声より労組の意向――「労組と進む。」民進党が、幅広い支持を得られるわけがない。

 自民党の支持組織は、医師会、郵便局長会、商工会、農協など有権者の暮らしと密接な関係を持つ団体ばかり。地域の後援会組織も強固だ。民進党が政権を狙える位置にまで党勢を拡大しようとするなら、労組依存を脱し、有権者と向き合う活動を始めるしかない。



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