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論戦なき鹿児島県知事選

2016年7月 1日 10:05

鹿児島県庁 ダブル選挙となった南国鹿児島。今月22日に公示された参院選に次いで翌23日に鹿児島県知事選挙が告示され、各陣営が訴えに声をからしている。
 知事選に立候補しているのは、現職で4選を目指す伊藤祐一郎氏(68)と、新人で元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓氏(58)。自公(伊藤)VS野党連合(三反園)という一騎打ちの構図だ。
 元高級官僚と現役ジャーナリストとの面白い戦いでもあり、さぞ盛り上がっているものとばかり思っていたが、案に相違して県内はいたって静か。“白熱”という感じではない。いったい何が起こっているのか……。(写真は鹿児島県庁)

「西郷隆盛」「県民党」「保守」は共通
 知事選が盛り上がらない原因は、伊藤、三反園両氏による激しい論戦が影を潜めているせいだ。一騎打ちの選挙では、県政の課題や失政について新人が攻め、現職が応戦することで有権者の意識が高まるもの。だが、両候補の相違点といえば年齢や経歴の違いくらい。肝心の部分で共通点が多い。

 かたや独裁者と言われるほど上から目線の元官僚、かたや柔らかな笑顔が印象的なジャーナリスト。まったく違うキャラクターだが、共通点がいくつもある。下は、三反園後援会のリーフレット。赤いアンダーラインで示したように、三反園氏が尊敬する人は「西郷隆盛」だ。

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 一方、伊藤後援会の公式サイトには、伊藤氏が好きな言葉として「敬天愛人(西郷隆盛)」とある。分かりやすいように、伊藤陣営の印刷物に公式サイトの該当部分を貼り付けてみた。

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 郷土が生んだ巨人西郷さんを尊敬する二人。鹿児島人らしいチョイスだ。この点についての異論は出まいが、政治的な立ち位置まで同じというのでは、選ぶ側は困惑する。参院選と連動する知事選になっているにもかかわらず、なぜか二人とも「県民党」を名乗っているのだ。

 伊藤氏は自民党の参院議員候補と二人三脚の選挙、三反園氏は野党勢力の支援を受けている。政党や労組といった特定の組織に片寄らないのが県民党だと思うのだが、現職の伊藤氏も県民党、新人の三反園氏も県民党。「県民党」にうさん臭さが漂う。

独裁県政批判を控える三反園氏
 そもそも、県民の声を無視して暴走を続けてきた伊藤氏が県民党であるわけがない。上海研修に総合体育館。住民無視の避難計画を県民に押し付け、強行した原発再稼働。県庁職員や警察官を動員し、住民を弾圧して建設を進めた疑惑の産廃処分場。住宅供給公社の赤字を隠すため、地域の反対を黙殺して整備している県営住宅。時代錯誤の男子限定公立中高一貫校。これで県民党とは聞いて呆れるが、なぜか三反園氏はこうした失政を批判しようとしない。

 一連の暴挙は鹿児島の保守が利権に汚染された結果だが、そこを追及すべき三反園氏自身が「保守系」を標榜しているからだ。自民の支援を受ける伊藤氏は当然だが、野党が支える三反園氏も保守――どうにも分かりづらい。選挙戦をつまらなくしているのは、一騎打ちをしている二人の基本姿勢が一致しているせいなのだ。

 双方、戦い方もつまらない。伊藤氏の選挙は、空中戦を避け集会をはしごするという内向き型。意図的に、有権者から見えづらい選挙を行っている。一方の三反園氏は、具体策を示さず未来を語るだけ。しかも前述した通り、現職伊藤氏の失政を責める姿勢は皆無に近い。これでは、論戦など望むべくもない。

残り9日間の論戦に期待
 有権者は正直なもので、伊藤氏について聞くと独裁的手法や傲岸不遜な態度が気に入らないという答えばかリ。三反園氏については「何をやりたいのか分からない」という声が多い。両候補の大きな違いといえば、原発へのスタンスだけ。伊藤氏は事実上の原発容認、三反園氏は脱原発だ。しかし、三反園氏の原発に対する姿勢が変わったのは熊本地震の後。いったん川内原発を止め点検すべきと言うようになったが、選挙の第一声ではゲンパツのゲの字も出てこなかったという。

 三反園氏が現職批判を抑制し、原発についての曖昧な態度をとってきたのは多分に保守陣営を意識してのこと。自民党の牙城といわれる鹿児島県では、保守を取り込まなければ勝てないという判断なのだろう。しかし、汚れた保守支配を打ち破らなければ県政の刷新などできない。そのことに三反園氏が気付くかどうか。残りの9日間、論戦が深まることに期待したい。



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