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記者と公務員の不倫疑惑 共同通信の醜態
問われる報道の資格

2016年6月21日 09:35

20160621_h01-01.jpg 育休議員に始まってTVタレント、歌手、落語家……。今年、たびたび社会を騒がせてきたのが「不倫」だ。いずれもワイドショーを盛り上げたネタだったが、当事者が“報道関係者と取材対象の公務員”ということになれば話が違ってくる。不適切な関係に頼って特別な情報をやり取りすれば、守秘義務違反に問われかねないからだ。
 不倫騒ぎが続く中、福岡市で公務員と報道機関の記者による不適切な関係が発覚し、内部調査を受けた公務員が辞職するという事態が起きた。問題は、事実関係の確認を求められた「共同通信」の対応。取材への回答には、「真実を正確に伝える」という報道のあるべき姿勢は、微塵もなかった。(右は、HUNTERの取材に対する共同通信からの回答メール)

不倫疑惑 ― 公務員は辞職
 今年3月、共同通信の女性記者と取材先の男性公務員との間に不適切な関係があり、関係者間でトラブルが生じているとの情報が飛び込んできた。取材してみると、男性公務員は女性記者の取材対象。流行りの不倫なら、好ましいことではない。取材する側とされる側、信頼関係を築くことは大切だが、一線を越えた付き合いはご法度だ。一方が男性で、片方が女性ならなおさら。当事者の一人が公務員である以上、特別な関係の中でネタのやり取りをすれば、守秘義務違反が疑われるのは言うまでもない。公務員倫理にも、報道倫理にも背く話なのだ。

 取材を進める中、内部調査を受けた公務員が自ら辞職したことが明らかに。関係者は「不倫は否定したが、個人的に会っていたということで、不適切な関係があったことが認められた」と話す。疑惑をかけられ、虚偽を重ねて居座る公務員が多いなか、身の処し方としては潔い。責任を取ったのも事実。それでは、もう一方の当事者である女性記者はどうなったのか――。先週、共同通信に対し、正式に取材を申し込んだ。

報道失格 ― 共同のお粗末対応
 まず、女性記者が在籍していた共同通信福岡支局に取材の申入れをしたところ、東京本社の総務局と話をしてくれという。報道の現場で真相を追い求めているはずの方々が、取材を受けてたらい回しというわけだ。抗議したが、メディアの取材に対しては、対応窓口を一元化していると言って譲らない。やむなく、同社総務局に取材の趣旨を説明し、指示された通りFAXで質問内容を送付した。尋ねたのは次の2点だ。

  • 共同通信福岡支局勤務の女性記者が、取材対象である公務員と親密な仲になり、不適切な関係を続けていたことが分かった。当該公務員は、その件が原因で退職してるが、共同通者は一連の事実を把握しているか?
  • 事実関係に間違いがない場合、組織としてどのような対応をとるのか?

 問題の女性記者は5月で異動。共同通信の関係者に聞いたところ、その記者が処分を受けたという話は聞いたことがないという。当事者の一方が、辞職の形で責任をとった以上、記者だけが無罪放免というのは明らかに不公平。辞職した公務員の同僚から「おかしい」という声が上がるのもうなずける。共同は歴とした報道機関。きちんとした回答をするものと信じていた。しかし、共同の総務局が送ってきたメールには、次のように記されていた。

「既に社内調査を実施し、必要な措置を取っています。そのようなうわさ話が流布していることは承知していますが、調査の結果、うわさ話とは異なる点がありました。調査結果や措置の内容については、差し控えさせていただきます」

 結論から先に述べるが、共同が送ってきたメールは回答になっていない。「事実関係を把握しているのか」という問いに対しては明快に答えず、実情をぼかした格好。社内調査を行ったのが、HUNTERの取材の前なのか後なのかさえ、ハッキリしない内容だ。回答文中の『そのようなうわさ話』とは“不倫”のことを指しているようだが、『うわさ話とは異なる点』があったとしながら、どこがどのように異なっているのか明示されていない。

 そもそも、共同通信側が承知しているという「うわさ話」が、どのような内容なのか分からない。事象の全体をぼかしたままで「異なる点」があると言われても理解できるわけがない。“不倫を含め不適切な関係はなかった”とくれば納得もできようが、これでは「うわさ話は否定できないが、一部違うところがある」と言っているようなもの。どこぞの前知事と同じような姑息さだ。「必要な措置」がどのようなものなのかも不明。処分したのかしないのかも判然としない。真実をありのままに伝えるのが報道の使命であり、義務のはずだが、共同通信の回答にそうした姿勢は皆無。これでよく、取材相手を追及できるものだ。

 通常、取材先でこうした不誠実な答えを出してきた相手には、どこの記者も「回答になってない」として厳しく追及するはず。それは共同の記者たちも同じだろう。不倫はあったのか、なかったのか――。処分を行ったのか、行っていないのか――。共同通信がまともな報道機関であるなら、きちんと答えるべきだ。できないというなら、取材先で相手を追及する資格はあるまい。



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