実効性のない避難計画を県民に押し付け、川内原発再稼働を推し進めた伊藤祐一郎鹿児島県知事。彼は会見で見せる傲慢な姿勢そのままに、3期12年間、独裁的県政運営を続けてきた。
意外なことだが、その剛腕政治家の資金管理団体は、知事が初当選した平成16年以来巨額な借金を抱えたままだ。元金1億8,000万円。12年間で6,000万円減ったものの、残債は1億2,000万円もある。この巨額な借入金について取材したところ……。(右は、伊藤知事の後援会資料)
弁護士から借入金1億8,150万円
伊藤知事の資金管理団体「いとう祐一郎後援会 祐祥会」は、知事が初当選した平成16年に、鹿児島市在住の和田久弁護士から1億8,150万円を借り入れていた。その後の返済状況は次の通りだ。
残債1億2,000万円
知事就任の翌年から3年間は、それぞれ150万円、850万円、500万円を返済。ここから返済方法が変わり、2期目の知事選を迎えた平成20年に2,650万円を和田氏に支払っている。21年から3年間は動きなし。3期目をかけて戦った24年に2,000万円返した後は、再び返済金ゼロが続いている(下は、祐祥会の平成26年分政治資金収支報告書。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。
知事選の年に政治資金を集め、まとまった額を返済するという形。だが、このペースだと、夏の知事選で勝利しても残り1億2,000万円を一気にゼロにするのは難しい状況だ。仮に、残債が1億円前後残ったままで知事が引退でもすれば、完済はさらに困難。残債が、事実上の寄附ということにもなりかねない。一体、どうやって返すつもりなのか、祐祥会の会計責任者に聞いた。
記者:祐祥会には、和田久弁護士からの借入金が、平成26年末の段階で1億2,000万円ある。どうやって返していくのか?
会計:私は、前回の知事選後に会計責任者になったので、以前のことも、今後のことも分かりません。記者:和田弁護士からの借入金のことは、知事に聞くしかないということか?
会計:そうです。私ではまったく分かりません。お役に立てなくてすみません。
会計責任者でさえ分からないという巨額借入金の今後。それでは、2億円近い政治資金を貸付けた当の和田氏はどう考えているのだろう。弁護士事務所を訪ね話を聞いてみたが、和田氏は「昔の話」として多くを語ろうとしない。“6,000万円返ってきたはずだが”と返済状況を確認してみたが、この点については「どうだったかなぁ」。返済が現金持参なのか銀行振込みなのかについては、横を向いたまま返答すらしなかった。
12年間で、借入総額の三分の一にしかならない約6,000万円の返済――。残債は1億2,000万円――。全額完済には程遠い状況――。堅く口を閉ざす関係者――。この資金の動きはどう見ても不自然だ。取材を続けるなか、平成16年の知事選の際、和田氏の貸付金とは別に億単位のカネの動きがあったとの証言を得る。知事を巡る政治資金の闇については、稿を改めて詳しく報じる予定だ。