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鹿児島県知事選 低調の理由(わけ)

2016年6月20日 10:00

 鹿県県庁.jpg6月23日告示、7月10日投開票の予定で行われる鹿児島県知事選挙が、三つどもえから一転、現職と新人による一騎打ちの構図となった。立候補を表明しているのは、4期目を目指す伊藤祐一郎知事と新人で元テレビ朝日コメンテーターの三反園訓氏。土壇場になって共産党系の新人が立候補を取りやめたため、伊藤知事を推す自民・公明VS野党連合という形の戦いになる。
 選挙戦の構図が固まったことで、盛り上がっているかと思いきや、鹿児島県内の有権者は意外にもしらけムード。原因は、挑戦者側の曖昧な姿勢にあるようで……。
(写真、手前は県議会棟、奥が鹿児島県庁)
 
伊藤知事の失政は山ほどあるが……
 新人が現職に挑む選挙では、まず新人側が現職の失政を明示するのが普通だ。できないのなら、わざわざ首長を変える必要はない。多選の弊害が出ているというのであれば、現職が犯した間違いによって県政がどう歪んだのかを説明すべき。その上で、自身が描く新たな地域の未来像を示し、具体策を「公約」という形で訴えるのが筋だろう。そうした意味において、伊藤県政の失敗は枚挙に暇がないほど。公費による上海研修や唐突なアリーナ建設構想ばかりが取り上げられるが、問われるべきことは山ほどある。

・実効性のない避難計画を県民に押し付け、川内原発再稼働を推進。
・隣県熊本で発生した大地震を過小評価し、原発の稼働停止要求や避難計画の見直しを否定。
・100億円もの公費を投じ、霊峰「冠嶽」に産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」の建設を強行。地元の理解を得られず、いまだに係争中。
・地元の猛反対を無視し、保育所も小中学校もない鹿児島市松陽台町に「子育て支援」と称して無駄な県営住宅を整備。
・女性の社会進出を推進する時代に、男子限定の中高一貫エリート養成校を50億円もかけて整備。高校は毎年定員割れ。
・「高校教育で女の子にサイン・コサイン・タンジェントを教えて何になる」と女性蔑視発言。

 一連の愚行によって「50年間で二度目」(知事本人の弁)という県知事リコールを起こされるに至ったのは周知の通り。背景にあるのは、県民軽視、少数意見無視という伊藤知事の姿勢であり、建設業界との癒着体質だ。

歯切れの悪い挑戦者
 一方、多くの県民から不評を買っている現職との闘いを前に、新人・三反園氏の歯切れは悪い。同氏の後援会の公式ホームぺージには、ご本人の「問題意識」として、こう記されている。 

2000年に地方分権一括法が制定され、地方自治体が独自で考えて実行していくことが求められるようになった。
人口減少時代が到来し、東京圏への人口の一極集中を是正しようと、国は地方創生法を定めた。
産官学金労言が連携し、地域独自の「宝」を活かすアイデアで勝負する時代へ。
鹿児島県は、歴史や自然あふれる天然資源や観光資源、経済的資源などを数多く有しているが、その魅力を活かしきれていない。
女性の人口割合は多いが、女性の大学進学率が全国最下位、県庁管理職割合5.6%(33位)
女性が活躍する機会も少ない。
有効求人倍率が全国45位、一人当たり賃金37位という現状で、県民からは「もっと生活をよくしてほしい」という声が多い。
県民との対話が少なく、県民起点のまちづくりがなされていない。
 資源を活かしきれていない、県民所得も上がらない、女性の社会進出も遅れている――だから、何をやるべきかという答えが次の7項目のようだ。
・地域人口減少の歯止め……女性副知事・女性幹部の登用、雇用の確保

・県民所得倍増計画……鹿児島が持てる地域資源の再発見、鹿児島にしかない魅力を世界にセールス

・高齢者の生き甲斐の創生……労(いた)わるだけの福祉から、高齢者の豊富な経験と知識を活かす生き甲斐の創生、社会参加の場づくり

・原発に頼らない社会(脱原発)にし再生可能エネルギーへシフト

・地域イベントへの観光客誘致……オリンピック観光客に対する積極的なアプローチ

・地域連携による役割分割ネットワーク……隣接市町村の役割分割ネットワーク構築

・ハンディを魅力に変える離島……どこにもないリゾートに

 残念ながら、伊藤県政のどこがいけないのか一切触れられていない。公約らしきものが記されてはいるが、具体策は「女性副知事の登用」程度。あとは漠然としており、伊藤県政の方向性と大きく変わるものではない。三反園陣営は挑戦者のはずだが、伊藤県政の問題点を明確に指摘することを避けているとしか思えない。後援会のホームページを見る限り、政策勝負というわけでもなさそうだ。

挑戦者に求められる「決意」
 主張が曖昧になっている原因は、伊藤県政を支えてきた「業界」や保守陣営への配慮ではないのか?そうだとすれば、鹿児島県が大きく変わるとは思えない。よどんだ県政を一新するためには、既得権の上に胡坐をかき甘い汁を吸ってきた連中と決別するしかないはずだが、三反園氏のこれまでの言動からは、そうした決意や熱意は感じられない。

 県政を変えるためには、大きなエネルギーが必要だ。三反園氏が言う通り、鹿児島が停滞しているのは確かで、現状認識が間違っているわけではない。ならば、「伊藤県政のここが問題、私はこう変えたい」という具体的な発信をすべきだろう。選挙とは、自らの政治信条や政策を、分かりやすく訴えること。「4選阻止」だけでは、有権者の心はつかめない。



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