鹿児島市が取得したJT(日本たばこ産業株式会社)鹿児島工場跡地(同市上荒田町)の土地価格に、新たな疑問が浮上した。
HUNTERが鹿児島市への情報公開請求で入手した文書によれば、市が契約前だった平成18年12月に部内で行った同地の土地評価額は約95億5,000万円。これに対し、市立病院、交通局舎、公園などにJT跡地を分譲するため平成22年11月に民間の不動産鑑定業者が算出した評価額は、8億円以上低い金額となっていた。同市の土地価格が低落傾向にあったのは事実だが、4年で1割近く価値が下がった形。公共事業用地取得にあたっての鹿児島市の土地評価に、疑問符が付いた状況だ。
(写真は鹿児島市役所)
土地評価に広がる疑問
JT跡地は約68,900㎡。平成19年に市土地開発公社が81億5,000万円で買い取ったが、JTとの土地買収交渉が行われていた平成18年12月に、市管財課が算定した工場跡地の評価額は9,546,317,480円(138,500円/㎡)となっていた。
JT跡地は、市が移転を予定していた鹿児島市立病院と交通局の用地として買収した土地。このため病院、交通局、公園に3分割する際、民間の不動産鑑定業者に土地開発公社所有となっていた同地の鑑定額を算出させていた。鑑定は平成22年11月。評価額は8,734,466,000円(125,000円/㎡)と記されている。
平成18年12月時点での市の評価「9,546,317,480円」が、民間業者が再鑑定した23年2月には「8,734,466,000円」に。811,851,480円も低い評価となっている。鹿児島市の土地価格は低落傾向が続いており、評価が下がること自体がおかしいというわけではない。しかし、4年で1割近くの下落。元の評価が適正だったのかどうか、極めて疑問だ。市は平成19年1月にJTとの間で「85億円以下での契約」という約束を交わしていたことが分かっているが、この金額がどのように決まったかも不明。18年に市管財課がはじき出したという「9,546,317,480円」については、肝心の算出根拠が破棄されており、何もかもが藪の中といった状況だ。市とJTとの間に、表には出せない交渉過程があったと見るのが自然だろう。
JT跡地取得の過程を巡っては、当初、HUNTERの情報公開請求に対し市側が土地の評価額を隠すなど露骨な隠ぺいで対応。その後一転して評価額を明かしたものの、その根拠となる文書は廃棄されており、契約金額の妥当性に疑念が生じる事態となっている。