福岡市教育委員会が進める第3給食センター(仮称)の整備事業を巡る不透明な土地選定。「公募」という形で公平・公正を装っていたが、じつは初めから事業用地を“決め打ち”していた可能性が高い。
つまりは、「はじめに土地ありき」。センターの整備地として選定された土地は、市内に本社を置く建設業者の保有物件だ。市教委側は、「手続きに問題はなかった」としているが、情報公開請求によって入手した資料を精査する中、“決め打ち”の証拠と見られる文書の存在が明らかとなった。
(写真は、第3給食センター予定地に立つ売地の看板)
公募の1年前、市教委幹部が選定地保有者と面談
市教委が「それはメモです」というペーパーがある。それが下の文書(赤い囲みはHUNTER編集部)。記されていたのは、平成26年に部内で抽出した給食センター候補地の件で、土地所有者と接触した折の記録だ。
時期はいずれも同年12月。6件の面談記録のうち、相手方を黒塗り非開示としてのが5件で、今年2月に事業用地として選定された土地を保有する建設業者「アスミオ株式会社(旧社名:澄男工業)」代表らとの面談記録は、公表事項であるため黒塗りされていない。ここで、アスミオ側が「平地部分を広げて売却することは可能」と回答しており、配送時間などの条件を満たせば、給食センター用地になりうる土地が見つかっていたことが確認される。
不自然なのは、土地保有者らを訪ねたのが、事業を所管する教育支援部ではなく教育環境部の職員だったこと。教育環境部は、学校施設整備に係る予算や教育施設等の取得・処分・管理、校舎・校庭の使用許可などを担当しており、学校給食に関することは所管外。給食センターの整備事業を所管しているのは教育支援部であり、土地売却の可能性を調査するのは同部の仕事なのだ。市教委側に確認したところ、「人員不足で、お手伝いいただいた」(教育支援部給食運営課の説明)。所管違いの職員が土地提供の可能性を探るという、本来あり得ないことができたのは、部長級を動かせる市教委上層部の了解があったことを示している。
さらに注目すべきは、アスミオだけに「部長」が出向いている点。他はすべて課長任せ。電話で済ませたケースさえあるのにだ。1年後に公募で選ぶことになる企業の代表者と市教委幹部の面談は、この時点でセンター用地の目途が立っていたことを示唆する事実。“決め打ち”の証拠と見るほうが自然だろう。
用地審査委員会でアリバイ作り
一連の動きは、事業用地公募が“決め打ち”を隠すための便法だったことを示している。そのため、昨年12月と今年の2月に計2回開かれた「第3給食センター(仮称)整備運営事業用地審査委員会」(以下、審査委)の議論も、市教委事務局が描いたシナリオ通りの運びとなっていた。下は、第2回審査委で、事務局側が提供した資料。左側の△や○は、公募に応じた2件の土地に対する事務局の「評価案」だ。
この日の議論で出された結論が、下の「答申」。候補地Aの農地転用についての判断が難しかったため、評価×から△に変わっているが、他は前掲した事務局案と同じ結果だ。
選定委の議事要旨を読み込んでみたが、明らかに事務局主導。市教委のほか、財政局、道路下水道局の部長ら5人で構成された選定委は、アスミオ所有地を選ぶためのアリバイづくりの一環だったと見て差し支えあるまい。議事要旨の中には、次のような噴飯ものの記述もある。
昨日報じた通り、平成26年に行った候補地探しはおざなり。抽出した候補地に難癖をつけて、次々につぶしただけだ。なにより、アスミオの保有地については、いち早く情報収集に走り、わざわざ市教委幹部が出向いて売却の意思があることを確認済み。「土地はほぼない」という事務局側の発言は虚偽に近い。第3給食センターの整備地を「決め打ち」したことは、疑いようの事実。疑惑の土地選定について、さらに詳しく検証していく。