HUNTERの記者が、鹿児島市(森博幸市長)に対して行った土地買収に関する情報公開請求に対し、当該事業を所管する鹿児島市交通局が、いったん出した開示決定を取消すという前代未聞の展開となった。
同市が定めた情報公開条例の根幹を揺るがす事態。鹿児島・森市政の、説明責任を軽んじる姿勢が露呈した形だ。
杜撰な情報公開
記者が鹿児島市側に請求していたのは、同市が平成19年に取得した市内上荒田町にあるJT跡地や、昨年交通局が購入したバス事業用地の取得過程を示す文書。3月5日に情報公開請求し、同月22日に市側の開示決定(一部開示含む)が出ていた。
開示内容は、所管事項が異なる市企画財政局企画部政策企画課と交通局が個別に決定。文書の枚数が少なかった政策企画課分のみ先行してコピーを入手し、1,400枚を超えるという交通局の公文書については、先週13日に開示に伴う説明を受けることになっていた。
実際の開示で説明に来たのは3名の交通局職員。時系列に従って文書の説明を求めたところ、本来あるべき文書が多数用意されていないことが判明。さらに、先行入手していた政策企画部関係の文書開示にも不備が見つかるなどしたため、他の部署の関係職員まで呼ぶ展開となった。
異例の「決定取消し」
情報公開の根幹を揺るがす事態。記者が、同市のデタラメな仕事ぶりに猛抗議した結果、市側が当初の開示決定を取消し、決定自体をやり直すと言い出した。ただし、鹿児島市情報公開条例には「決定取消し」についての規定はなく、何を根拠に一連の事務作業を行うのか不明。実現を危ぶんでいたところ、17日、鹿児島市交通局から「公文書開示決定の取消しについて(通知)」が郵送されてきた。実物が下。いったん出した開示決定を、取消すことが明記されている。
異例の事態を招いた原因は、鹿児島市側が情報公開を恣意的に運用しているため。市の開示決定は、関係する文書のすべてを例示せずに、一方的に対象文書を選別するという手法。どのような文書があるのか分からない請求者にとっては極めて不利なやり方で、市側が隠そうと考えた文書は、初めから「ないこと」にされてしまう恐れさえある。公文書の綴りを見慣れた記者だから気付いたが、よほどのことがない限り、コピーを閲覧もしくは受け取って終わりということになる。同市の情報公開制度は、まったく信用できない状況だ。
識者らも驚く決定取消し
情報公開制度に詳しい市民オンブズマン福岡の児島研二代表幹事は、次のように話す。
「開示決定の取消しなど聞いたことがない。異例というより異常な事態だ。自分たちが決めたことが『間違いでした』と認めた形で、鹿児島市の情報公開条例がまともに機能していないことを示している。そもそも、取消し通知に『理由』が明記されておらず、なぜ決定の取消しに至ったかのかも分からない。次の開示で、きちんと文書を出すのか疑わしいと言わざるを得ない」
情報公開請求に長けたベテランの全国紙記者も驚きを隠せない。
「記者として、様々な機関に情報公開請求を行ってきたが、決定取消しというのは経験がない。というか、ありえない話。HUNTERの話が事実なら、取消しの根拠も曖昧で、市側の対応もなっていない。まともな行政機関なら、絶対にない話だ」
18日、改めて情報公開を所管する市法制課に「取消し」の根拠を確認したところ、「(情報公開)条例の規定はありませんが、行政が決定を下すのと同じで、取消しもできるとの判断です」と回答。取消しの理由については、鹿児島市側のミスに責任があったことを認めている。
鹿児島市が犯した間違いは、これだけに止まらない。次稿では、一部開示された文書を例に、「隠蔽」が疑われる鹿児島市の姿勢について詳しく報じていく。