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会見回数は九州最下位 鹿児島県知事の不誠実

2016年5月16日 09:05

 鹿児島知事会見.png住民と行政との信頼関係を保つために不可欠なのが首長の情報発信。とりわけ「知事」の記者会見は、施策をアピールしたり説明責任を果たすための重要な場となっている。
 知事が会見で相手にする記者団の向こう側にいるのは一般市民。会見での態度から、知事の本性が見えることもしばしばだ。
 九州7県の知事会見の状況を調べてみると、情報発信には不熱心、会見では不誠実さが際立つある知事の姿が浮かび上がる。

鹿児島知事の会見回数、他県の半分 
 記者会見は、知事が施策の説明やアピールなどを行う場。説明責任を果たす上でも重要だ。九州各県の知事は、どの程度の頻度で県民に語りかけているのか。平成25年度、26年度、27年度の記者会見開催数を一覧表にまとめてみた。

九州7県知事の年度別会見回数.jpg

 結果はご覧の通り。伊藤祐一郎鹿児島県知事(冒頭の写真)の記者会見だけが、極端に少ないのが分かる。

 大分の広瀬勝貞知事が、臨時会見を含めて年間28~29回の開催。福岡県の小川洋知事、熊本県の蒲島郁夫知事も回数が多い。平成27年1月に古川康氏から山口祥義氏に知事が替わった佐賀県でも最低15回。10回以下という県はなく、毎月1回~2回の記者会見が相場となっている。伊藤知事の会見は年7~8回。異常に少ない会見回数と言えよう。

 鹿児島県が臨時会見の記録をホームページ上に残していないせいでもあるが、定例の分だけとっても伊藤知事の会見回数は最低。鹿児島県のトップが、情報発信に不熱心であることは確かだ。改めて録画記録も見てみたが、会見に臨む伊藤知事の態度も、不誠実としか言いようがない。

リコールに賛同者15万人
 「傲岸不遜」(鹿児島市 45歳男性公務員)、「上から目線の嫌味な役人」(薩摩川内市 50歳女性)、「九電の味方」(19歳 大学生)……。伊藤知事の印象について聞いてみると、返ってくるのはこうした声ばかり。いずれも、何らかの機会にテレビニュースで知事の姿を見てからのことだという。画像は正直。県民の多くが、同様の印象を持っているようだ。

 先週、別の取材で訪れた鹿児島市で、世間の動きに敏感なタクシーの運転手さんたち4人に話を聞いた。案の定、いずれも伊藤知事の強権的な姿勢に批判的。ハンドルを握って20年以上という50代の乗務員は「知事も市長も、長くやるとダメ。庶民の声が聞こえてない」とバッサリだった。

 不人気は知事の自業自得。平成25年には、県政運営のあまりの強引さに怒った県民が「過去50年で2例目」(知事本人の弁)という異例の県知事リコール運動を展開。賛同者は15万人に達したとされる。

一方的に原発質疑打ち切り
 リコールで少しは懲りたかと思っていたが、その後も独裁ぶりは健在。避難計画の不備が指摘されるなか、川内原発(薩摩川内市)の再稼働に同意。県民の声など歯牙にもかけないといった知事の姿勢に、あきらめムードが漂う状況だ。

 川内原発再稼働に無理があったのは確か。この件を追及された知事は、会見途中で逆切れし、説明責任を放棄している。昨年1月5日の定例会見のこと。原発再稼働に関する記者団の質問に対し、「正月早々そういうのにお答えする気持ちはほとんどない」と発言。食い下がる記者団を前に、「同じ話になるのでもう止めましょ」として、原発に関する質疑を一方的に打ち切っていた。会見が、説明責任を果たす場であることを理解していないか、あるいは、メディアの向こう側にいる県民を無視しているかのどちらかだ。

歪む県政
 強引な県政運営と情報発信の少なさは表裏一体。トップダウンで様々な巨大公共事業の実施を決め、県民の反対意見を無視して推進。その後は満足な説明も行わず、限られた機会である会見の場では説明責任を放棄するということを繰り返してきた。その結果が、リコールの対象となった上海研修や薩摩川内の100億円産廃処分場、鹿児島市松陽台の県営住宅、公立全寮制中高一貫男子校といった無駄のオンパレード。喜んでいるのは建設業者だけというのが現状だ。会見回数の少なさは、歪む県政の象徴なのである。



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