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福岡市給食センター 用地選定に重大疑惑

2016年5月23日 09:15

市役所.jpg 「はじめに土地ありき」――人工島(アイランドシティ)への「こども病院」移転や、認可保育所「中央保育園」のラブホテル街への移転で繰り返されてきたこの愚行が、再び福岡市政を揺るがす可能性が出てきた。
 福岡市教育委員会への情報公開請求で入手した資料から、市教委が進めてきた学校給食センターの整備計画に、不透明な用地選定過程があることが判明。記者の追及を受けた市教委側が、自ら実施した事業の流れを証明できない事態となっている。
(写真は福岡市役所)

学校給食センター整備事業
 市教委は、市立中学校65校と知的障がい特別支援学校5校の給食を調理・配送してきた市内4か所の給食センターが老朽化したことなどを理由に、平成19年から再整備事業の検討に着手。学識経験者や保護者の代表などを交えて設置された「福岡市学校給食センター再整備基本構想策定委員会」での議論を経て、22年に市内を南部・東部・西部三つのゾーンに分けて、それぞれに給食センターを整備するという「福岡市学校給食センター再整備基本構想」を策定していた。

 第1給食センターは、平成23年3月に整備計画を決定。福岡空港そばにあった博多区東平尾の市土地開発公社保有地を利用して、PFI方式による整備を行い、26年9月1日に供用を開始している。第2給食センターもPFI方式での整備。建設地には、市港湾局が保有していた東区香椎浜ふ頭の土地が充てられており、今年9月に供用開始の予定となっている。

疑惑の第3給食センター用地選定
 疑惑が持たれているのは、第3給食センター(仮称)整備事業の用地選定過程だ。市教委は昨年11月、同センターの建設用地を公募。事業用地審査委員会における2回の協議を経て今年2月、用地提供を申し出た2件のうちから、市内西区にある26,500㎡の民間企業所有地を選定していた。

 教育委員会が行う事業での土地公募は異例。HUNTERは先月、市教委に対し「第3給食センターの用地選定に関する全ての文書」を情報公開請求。複数回に及んだ開示に至る過程で、本来オープンにされるべき情報が隠され、必要不可欠な文書も欠けていることなどが分かった。はじめに開示されたのは、わずか数十枚の文書。公募の実施過程に関するものだけで、そこに至る前半の動きを示す文書はすべて省かれていた。開示されるべき文書の不足に気付いた記者の指摘で数日後、大量の関連文書が追加開示される展開となった。

評価報告書非公開を「口頭」で約束 契約書は不存在
 最初に注目したのは、給食センター用地の土地評価を巡る市教委の不可解な動き。下は、情報公開請求を受けた市教委が下した一部開示決定通知だ(赤いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)。

市教委開示決定.jpg

 公開しない部分がある文書の中に、『応募地に係る不動産鑑定業者の価格調査報告書』とある。しかし、実際の文書開示では、一部どころか報告書が丸ごとない。市教委側に確認したところ、報告書非公開は調査を委託した二つの業者との契約に沿った決定。情報公開請求はもちろん、市議会の要求があっても見せることはできないのだという。不透明というより、事実上の隠ぺいだ。不動産価格の調査を行った2社には、報酬としてそれぞれ86,400円が支払われており、税金を使った業務委託だったことも明らか。役所が公費を投入して取得した成果物を隠すなど、許されるはずがない。

 市教委側は、用地選定過程での不動産価格調査は、審査段階での仮鑑定だと強弁する。しかし、不動産鑑定業者の評価を参考に「6億3,000万円」という土地売買予定価格をはじき出しており、土地の公募に応じた2社にも、その価格を提示している。用地選定の透明性を証明するためには、仮のものであろうと本鑑定であろうと、評価額と理由をオープンにするのが常識だ。

 「契約に従った報告書の非開示」(市教委側の説明)というが、そもそも開示された文書のなかに、肝心の契約書がない。確認したところ、契約は「口頭」によるものだったという。つまり、市教委側と不動産鑑定業者2社は、口頭で契約を交わし、土地の評価報告書を公表しないことを約定したというのである。土地の評価報告書は非公表、非公表の根拠となる契約書は不存在。表面に出した「6億3,000万円」の正当性を担保する公文書がなく、市教委自体が事業過程を証明できない状況となった。

頭隠して……
 滑稽というしかないが、評価報告書を非公表としながら、不動産鑑定業者2社の評価額は明らかになっている。下は、文書開示の当初、隠されていた用地審査委員会の会議用資料の一部だ(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。

002選定資料.jpg

 不動産鑑定業者2社が出した土地の価格が、それぞれ「6億4,900万円」「6億1,000万円」だったことが明記されている。かんじんの数字を開示しておきながら、報告書自体は非公開。これでは数字の信ぴょう性を疑われても仕方がなく、実際の評価額が、もっと低かった可能性も否定できない。さらに、市教委が提示した6億3,000万円が両社の上限額を足して2で割るという、極めて安易な方法で算出されていたことが記されており、市教委の施策決定の杜撰さが、浮き彫りになった形と言えよう。

無視された「透明性確保」の通知
 市教委側か開示した文書の中に、昨年9月に財政局が市の各部局あてに発出した通知がある。下がその通知の冒頭部分だ。

01財政局通知-2.jpg 『事業用地の選定過程における透明性の確保』とあるが、市教委の行為は、この通知を無視したもの。真逆の方向性で突っ走った格好だ。疑惑の土地選定が繰り返された歴史は、まったく生かされていない。 

繰り返される不透明な用地選定
 認可保育所「中央保育園」の移転を巡っては平成25年、当時の在園児保護者らが事業中止を求めて住民監査請求。市監査委員は請求を棄却したものの、「土地選定の手続きが全般的に安易であり慎重さを欠いている印象を受け、福岡市は当初から本件土地を取得する方針があったのではないかという疑念は払拭されない」とした上で、「今後、市事業にかかる意思決定過程の透明性の確保を徹底するよう強く要請する》と市側に異例の注文を付けていた。

 平成23年には、市立こども病院の人工島(アイランドシティ)への移転について、「こども病院移転計画調査委員会」がその合理性や妥当性を検証。最終報告書の中で、市の用地選定に問題があったことを厳しく指摘している。

 懲りない福岡市が、またしても不透明な用地選定。背景にあるのは、今度も「はじめに土地ありき」だ。次稿で、第3給食センターの用地選定が「出来レース」であることを照明する。



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