子育て支援の重要性を世に知らしめたブログ記事「保育園落ちた日本死ね!!!」を痛烈に批判し、多くの女性から顰蹙を買った山田宏元次世代の党幹事長。今夏の参院選に自民党公認で出馬予定なのだというが、忙しく政党を渡り歩いてきた経歴同様、政治資金の動かし方も目まぐるしい。
昨日、山田氏が代表を務めていた「日本創新党」(現・自由主義政経フォーラム)への貸付金2億2,000万円が、事実上の焦げ付き状態にあることを報じたが、その他の同氏関連政治団体が提出した政治資金収支報告書を精査したところ、不可解なカネの動きが見つかった。
(写真が山田宏氏。自民党HPより)
政党渡り鳥―関連政治団体も複数
山田氏は、松下政経塾出身。議員秘書から都議会議員(2期)に転身し、その後衆議院議員1期、杉並区長を3期務めている。国政復帰は平成24年の総選挙。小選挙区では落選したが比例復活で2期目の当選。26年の総選挙で落選していた。
この間、山田氏が籍を置いた政党・政治団体は七つ。都議時代の新自由クラブに始まって、自民党→日本新党→新進党→日本創新党→日本維新の会→次世代の党。今度は再び自民党というわけだが、この間、衆院選で2回、参院選で1回の落選を経験している。腰を据えて政治と向き合うことができなかったようで、政治資金の動きも目まぐるしい。下は、山田氏の関連政治団体の名称、その年の収入額、主な収入源をまとめたもの。特徴的であるため、同氏の団体側への貸付額も付記した。
貸したカネ、自分で返済? 貸倒れのケースも
国会議員に返り咲いた平成24年の関連政治団体は、日本維新の会の支部を含め6団体。「新日本構想研究会」と「日本創新党杉並支部」はその年に解散しているが、研究会は100万円を、杉並支部は150万円を山田氏に返済していた。不可解なのは、両団体の返済原資。この年、両団体は「山田宏よい国後援会」からそれぞれ452万円、130万円を寄附されているのだが、後援会には山田氏本人が250万円を貸付けていた。山田氏が貸したカネが、山田氏にもどるという構図だ。
前記2団体は借金を清算して解散していたが、貸倒れとなったケースもある。「日本維新の会衆議院東京第19選挙区支部」の解散は26年。山田氏はこの政党支部に250万円を貸付けていたが、未返済のまま7月末に解散届を出していた。同支部の解散時保有金91万9,402円は、山田氏への返済に回されることなく、「次世代の党衆議院東京都第十九支部」に引き継がれている。
報告内容の不一致も
団体間の政治資金移動が激しかったためか、記載が合致しない例もあった。下は、自由主義政経フォーラム(旧・日本創新党)が総務省に提出した平成26年分政治資金収支報告書の収入のページ。朝食会2回と政経セミナーを1回開き、10万円、30万円、10万円の収入を得ている。
報告書備考欄の記載によれば、3回の会合は山田氏の資金管理団体「山田宏事務所」との共催。11月26日の朝食会では58万円、11月30日のセミナーでは95万円、12月17日の朝食会では60万円が山田宏事務所の収入だったことになる。一方、事務所側の政治資金収支報告書は、次のようになっている。
11月26日の58万円は合致しているが、30日のセミナー分は7万円多く、12月の朝食会分は4万円少ない。どちらの報告内容が正しいのか分からないが、山田宏事務所側の報告書に「共催」であることが示されていないことは確か。正確さを欠いているのは、山田氏の資金管理団体の方と言えそうだ。
他の政治団体では珍しい支出もある。山田氏が代表を務めていた政党支部は「日本維新の会衆議院東京第19選挙区支部」と「次世代の党衆議院東京都第十九支部」。どちらの支部も、毎月ほぼ定額の家賃を「山田宏事務所」に、車賃借料を山田氏本人に支払っていた。支出は、日本維新の会時代の平成25年1月から次世代の党時代の26年12月まで。家賃は6万3,000円、車賃借料は10万円となっていた。山田氏本人への車賃借代は、計240万円に上る。
いくつもの政治団体は、何のために必要だったのか?また、自己資金を貸付けてまで、複数の団体を運営しなければならなかった理由は何か?聞きたいことは山ほどあるが、山田氏側は政治資金に関する質問取材を事実上拒否。説明責任を果たしていない。26年末の時点で、山田氏の政治団体への貸付金残高は、未返済に終わった250万円を含めて総計2億2,700万円。山田氏は、この巨額の政治資金をどうやって工面してきたのだろう……。