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川内原発避難計画 モニタリングポストの問題点

2016年3月15日 09:45

鹿児島県庁・川内原子力発電所 14日、鹿児島県が川内原発周辺に設置した放射線測定装置(モニタリングポスト)の半数が、性能不足で原発事故時に使えないことを朝日新聞がスクープ。他紙も右へ倣えで後追いし、同県が主導して策定された避難計画の実効性に疑問符が付く事態となった。
 新聞各紙が取り上げたのは、川内原発から30キロ圏内にあるモニタリングポストの性能。そこで、同県が県内に設置したモニタリングポスト全体の実情について、改めて検証した。
(写真左は鹿児島県庁、右が川内原子力発電所)

モニタリングポストは67台
 新聞各紙の報道によれば、問題のモニタリングポストは川内原発から30キロ圏内にある48台のうちの22台。毎時80マイクロシーベルトまでしか測れない機材で、500マイクロシーベルトを判断基準とする即時避難の判断には使えないというものだ。ただし、鹿児島県が設置しているモニタリングポストは他にもあり、すべてが性能不足なら混乱はさらに拡大するはずだ。これまでに、鹿児島県が設置したモニタリングポストは全部で67台。設置時期ごとの内訳は次の通りとなっている。

・第1測定局  7台 昭和56年7月運用開始 
・第2測定局 15台 平成13年4月運用開始 
・第3測定局 20台 平成24年度整備 
・第4測定局 25台 平成24年度整備

問題の25台 無駄ではないが……
 新聞報道で指摘された毎時80マイクロシーベルトまでしか測れないモニタリングポストは、この67台のうちの原発30キロ圏内に設置された22台。詳しく述べるなら、平成24年度に整備された第4測定局の25台のうちの、原発30キロ圏内に設置された22台ということになる。 ちなみに、第4測定局の25台は次の場所に設置されている。

モニタリングポスト設置場所

 川内原発の立地自治体である薩摩川内市を中心に、隣接自治体のいちき串木野市、さつま町、阿久根市などに集中配備されているのがわかる。原発から30キロ圏内に位置する緊急防護措置区域内(UPZ)を外れるのは、甑島にある3か所だけだ。そして下は、鹿児島県への情報公開請求で入手した第4測定局25台の「仕様書」の一部。赤い囲みで示したように、測定範囲は「BG~80μGy/h」となっている。(注:BGとはバックグラウンド、日常のなかで存在する自然放射線のこと。μGy/hはマイクログレイ)

モニタリングポスト-1-1.jpg

 毎時80マイクログレイをシーベルトに換算すれば、80μSv/h(毎時80マイクロシーベルト)。新聞報道の数字に間違いはない。国は、モニタリングポストで毎時500マイクロシーベルトが測定されたら即時避難と定めており、鹿児島県内の各自治体は、この数字を前提に避難計画を策定している。80マイクロシーベルトまでしか測定できない機材では、即時避難の判断においては役に立たないという理屈も間違いではない。ただ、まったくの無駄かというと、そうとも言いきれない。

 毎時80マイクロシーベルトという数字は、それだけで異常事態。原発で重大事故が起きたと考えるのが普通だ。測定不能の状態ならなおさらで、避難が視野に入る状況ということになる。平時の一般公衆の被ばく線量限度は1ミリシーベルト(1000マイクロシーベルト)。毎時80マイクロシーベルトは、命の危険をもたらす数値なのである。この線量を測る機材の存在を、全否定するわけにはいくまい。問題は、毎時500マイクロシーベルトという即時避難の判断材料を、どうやって得るかということだ。

 前述したように、鹿児島県は平成24年度に問題の25台とは別に20台のモニタリングポストを設置しており、それまでの設置分が22台ある。問題の25台の他に44台ある計算だが、それらのモニタリングポストは10万マイクロシーベルトまで測定が可能な機材。これなら500マイクロシーベルトという即時避難の判断に使えるが、地域面積の割に機材が不足しているのは確かだろう。

 県は、「可搬型のモニタリングポストを配備するので問題ない」と話しているが、同県保有の可搬型44台のうち30台は毎時100マイクロシーベルトまでしか測れない機材。残り14台が毎時100ミリシーベルトまで測定可能だというが、原発の重大事故時に川内原発がある薩摩川内や隣接自治体であるいちき串木野市まで搬送するのは困難。避難計画に実効性を持たせるためには、これまで設置してきたモニタリングポストに、初めから高い性能を求めるべきだったろう。

 そもそも、約7,000万円をかけて平成24年度に設置された第4測定局の25台には問題が多すぎる。会計検査院が公表した26年度決算検査報告で、設計ミスから測定不能になる時間帯があったことが判明。モニタリング設備が太陽光発電を利用したシステムだったため、日照不足で電力が得られず、測定不能になる時間帯が存在していた。この設計ミスを補うため商用電源につないでの電源確保を実施たとされるが、商用電源とは九電の電気。原発に重大事故が起きれば九電の送電はストップするはずで、結局25台のモニタリングポストは計測不能になる可能性がある。鹿児島県の放射性物質監視体制が穴だらけであることは確か。再稼働ありきで突っ走った、伊藤祐一郎知事の責任である。

原発事故対応策すべてに欠陥
 問題はまだある。鹿児島県が設置しているモニタリングポスト67台は、ほとんどが原発から30キロ圏内かその付近。原発の過酷事故が、広い範囲に放射性物質を飛散させることは福島第一原発の事故が証明済みなのに、いまだに地域限定の監視体制しか構築できていない。例えば、鹿児島市。市域の一部が30キロ圏に入るが、同市の避難計画の対象はその地域だけ。大多数の市民は、避難計画の対象外という扱いなのだ。お寒いというより、住民切り捨ての非情な対応だろう。

 川内原発の避難計画をめぐっては、原子力災害に対応するため県がバス事業者と結んだ「協定」が、別に締結された運用細則によってバス運転手が浴びると予想される放射線量が「1ミリシーベルト以下」の場合しか効力を発揮しないよう規定されていたことが判明。バス協定が有名無実化されていたことが明らかとなっており、避難計画全体の実効性に疑問符が付く事態となっている。欠陥だらけの原発事故対応を行ってきた伊藤県政に、怒りの声を上げるべきだ。



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