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福岡市 山笠不正に逃げ道提供
漏れた情報公開請求の内容

2016年2月17日 09:10

観光振興課 福岡市の伝統行事「博多祇園山笠」に参加している『東流』で不正経理が発覚した問題をめぐり、HUNTERが関連文書の情報公開請求をかけた直後に、山笠への補助金を所管する市の観光振興課が、運営組織である各流の経理について内々で調査していたことが明らかとなった。意図的か否かは別として、事の拡大を避けるため、流側に逃げ道を提供した形だ。
 市の動きを受けた東流の関係者らが、取材開始前に簿外処理していた支出の領収書集めに入っていたことが分かっており、情報公開請求の内容が漏れていた可能性が高い。

隠蔽?情報公開請求直後に決算内容の確認作業
 山笠に対しては、観光客などの誘致促進を図る目的で、年間2,700万円の「祭り振興補助金」が、博多祇園山笠振興会に支給されており、そこから各流の『舁き山』に225万円、『飾り山』に90万円が配分されている。山傘補助金を所管しているのは市観光文化局観光コンベンション部の観光振興課。振興会及び各流の決算報告を監査しているのも同課だ。

 1月中旬、HUNTERは福岡市に対し山笠補助金に関する文書を情報公開請求。独自に入手した東流内部の決算書や、他の流の収入・支出額と比較するためだった。この折、HUNTERの記者は、「東流」という固有名詞を出さずに、開示対象となる公文書の範囲や取材の趣旨を市側に説明している。

 山笠関係者によれば、市が流の決算内容について、それぞれの会計担当者に説明を求めたのはHUNTERの開示請求が提出された直後。今月はじめ、HUNTERの取材に応えた東流の会計担当者も、報道で不正が発覚する前に市側に決算内容を説明していたことを認めていた。不正の可能性があることを知った市側が、問題が大きくなるのを避けるため、流側に逃げ道を与えた格好。それを証明するかのように東流は、市側の調査を受けてすぐに、なかったはずの領収書などを揃える作業に入っていた。

 そのうちの一例が、『飾り山』製作費の半分前後を占める人形関係費の領収書。1月20日前後に東流の総務が人形制作者に依頼し、21日に過去5年分の領収書が再発行されていたことが明らかとなっている。総務に確認したところ、再発行を指示したのは流の会計担当者。あわてた東流関係者が、証拠書類の確保に奔走した証である。

 「情報公開請求があったため調べる」――決算内容の説明を求められた関係者からは、市側がそうした発言を行ったという話もあり、事実なら守秘義務違反。不正が疑われる相手に情報を流して経理上の欠陥を埋めさせ、市側への責任追及から逃れようとした疑いがある。そうなると、事実上の隠蔽だ。

問われる市の姿勢
東流 背景にあるのは、市と博多祇園山笠振興会及び流に定着した甘えの構造。市側は、山笠補助金に関する監査にあたって振興会が提出した文書を見るだけで、山笠七流をはじめとする運営組織ごとの決算内容を精査して来なかったことを認めており、緩いチェックで済ませてきたのは事実。他の組織では1,000万円から多いところで2,000万円を計上している『飾り山』に関係する経費が、東流の決算からすっぽり抜け落ちていることを、見逃してきたことでも明らかだ。山笠を「聖域」と見ての怠慢か、癒着のどちらかと考えるのが普通だろう。

 東流内部では現在、簿外処理されてきた『飾り山』関連経費のうち人形制作費などの領収書が「あった」と報告されている。だが、それは不正会計発覚後、新たに作成されたものばかり。関係各社の税務処理と整合性のない領収書が出てくるはずはなく、同流内部からも釈明した代表らの話を疑問視する声が上がっているという。市側の姑息な動きが、山笠関係者から聞こえてくる「振興会も福岡市もグル。どんぶり勘定を黙認してきたのではないか」といった声に、信ぴょう性を与える形となっている。

 山笠補助金をめぐる不適切とみられる対応について、当初「調査中でお話しできない」としていた市側も、情報公開請求直後の会計チェックについて、認める姿勢を示している。



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