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博多山笠「東流」震災義援金 “募金の前に市に寄贈”の不可解

2016年2月 8日 20:32

東流 不正会計が見つかった福岡市の伝統行事「博多祇園山笠」の運営組織のひとつ『東流』が、平成23年に福岡市に贈った東日本大震災の義援金をめぐり、不可解な募金実態が浮かび上がった。
 これまで、同流の代表者をはじめ会計担当などの役員が認めていたのは、福岡市に贈った300万円という義援金の額だけ。いくら集まったのか誰一人分からないとしていたが、HUNTERの取材で、集金前に300万円が福岡市に届けられていたことが分かった。
 300万円のうち100万円は、代表者が個人的にプールしていたという流のカネ。残り200万円が、どこから支出されたものか不明で、実際の募金額が、表に出た300万円ではなかった可能性が濃くなった。

不透明感増す義援金
西日本新聞の記事より まず、これまでに取材で得た東流関係者の話を整理しておきたい。

 代表者:義援金として福岡市に届けたのは300万円。うち100万円は、ポケットマネーとして出したが、じつは自分のもとにプールしていた流のカネだった。

 会計担当者:東流として各町に呼びかけたことと、領収書を出したという記憶はあるが、詳細は執行部がやっていたので分からない。執行部に聞いてほしい。

 平成23年時の総務:福岡市に義援金を持って行くというので、代表に同行したが、義援金300万円が袋に入れてあったことしか覚えていない。

 執行部A:各町から募金を集めた。150万円くらいだったのではないか。これでは足りないというので、流委員や相談役クラス、さらに「東会」という流内の団体にも声をかけた記憶がある。正確なことは分からない。

 執行部B:募金の詳細を記した帳面などは、見たことがない。会計が知っていると思う。正確にいくら集まったのかは分からないが、300万を市か新聞社に贈ったことだけは確か。

 昨日報じた通り、東流が福岡市に義援金300万円を届けたのは平成23年4月5日。そのことは、新聞記事にまでなっている(上掲、23年4月10日の西日本新聞朝刊都市圏版参照)。しかし、その後の取材で、実際に東流の会計担当者が、集まった町ごとの募金を受け取ったのは、同年4月8日だったことが明らかとなってきた。

募金の集約は「8日」 3日前に義援金寄贈
 下は、東流の代表者名で各町の総代に配布された義援金のお願い文書。日付は、平成23年3月25日だ。この文書が配布された折、指示された募金の期限は4月8日。流関係者の話によれば、実際に、8日午後6時から7時頃に地元公民館まで持参する取り決めになっていたという。

義援金のお願い文書

 同流の会計責任者が証言したように、東流としての領収書も存在している。下は、HUNTERが入手した2枚の義援金領収書だ。

義援金領収書1 義援金領収書2

 確かに日付は「4月8日」となっており、関係者は次のように話す。

「公民館に会計さんがいて、領主書を切っていた。うちの町内は10万円以上集めた。領主書もある。日付は4月8日。新聞記事のことは知らなかったが、5日に持って行ったというのは間違いだろう」(町総代経験者)

「流からもらった義援金のお願い文書に、『8日19時 公民館』とメモを残している。他にも聞いたが、各町ごとの募金を集めたのは8日。5日に(市に)持って行けるわけがない」(別の総代経験者)

 一方、福岡市の所管課に確認したところ、東流からの義援金300万円を受け付けたのは「平成23年4月5日」という回答。東流の代表者らは、義援金を集める前に、市に300万円を届けに行ったことになる。ここで問題になるのが、300万円の原資であることは言うまでもない。

裏金拡大の可能性
 これまで報じてきた通り、300万円のうち100万円は流の裏金。代表が、自己資金だと偽って拠出したものだ。すると“残り200万円はどこから出したのか”、という疑問に突き当たる。会計担当者に対する3度にわたる取材では、領収書を切ったこと以外の義援金についての関与を否定しており、正規の会計からは1円も出していないと明言している。200万円はどう用意されたのか?

 考えられるのは、東流の代表者が全額用意したというケース。原資としては二つが想定される。まず、代表者の個人的なカネだが、これには無理がある。代表者は出したとしても「少しは入っとった」(4日取材時の話)程度であることを認めており、200万円を立て替えたとは考えにくい。となれば、可能性があるのは代表の手元にあったという裏金からの拠出。つまり、裏金の額が、本人が話しているような「100万あるかないか」(4日取材時の回答)といった額ではなく、数百万円単位で、その中から300万円を出したという見立てだ。

 いったん裏金から300万円を出して、3日後に集まった各町の募金で補てん。不足分は、さらに流の関係者からの追加募金で補った――。これなら、各町からの義援金に千円単位の端数があったにもかかわらず、ピッタリ300万円だったことへの説明もつく。膨らむ裏金、なくなる信用といったところで、ある東流関係者は、「義援金については、早くから疑問の声があった。『なんで300万ちょうどなのか?』『実際には、もっと集まったのではないか?』。疑念を招いたのは、代表らの独裁的な運営に原因があるのは確かだろう」と話している。

 不正経理に加え不透明な義援金の扱い……。東流関係者の中から、徹底追及を求める声が上がり始めている。



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