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博多山笠「東流」に巨額簿外金 一部に使途不明の可能性

2016年2月 5日 06:00

博多祇園山笠振興会のHPより 福岡市の伝統行事「博多祇園山笠」の運営組織である“流れ”のひとつ「東流(ひがしながれ)」が、正規の会計収支とは別に巨額の資金を動かし、簿外処理していたことが分かった。
 簿外金の存在は東流の関係者にも知らされておらず、一部の幹部だけの裁量で決済。毎年のその額は、1,000万円前後にのぼっているとみられる。
 山笠の各流れには、「博多祇園山笠振興会」を通じて福岡市の補助金が支給されており、振興会や各流れが年度ごとに提出した決算書を、市が監査する仕組み。しかし、東流は決算書から簿外金の収支を除外しており、虚偽報告を続けていた疑いもある。
 同流の代表者は4日、HUNTERの取材に対し一連の不正会計について認めている。
(写真は、博多祇園山笠振興会のHPより)

協賛金700万円 帳簿に記載せず
 簿外で処理されていたカネの流れは、大きく分けて二つ。『飾り山』制作費と、物品販売及び祝儀にかかるカネの流れだ。山笠には、博多の町を走る『舁き山』と、所定の場所に固定された『飾り山』があるが、東流は『飾り山』に関する収支のすべてを、代表者に一任する形で簿外処理していた。

 『飾り山』に関する主な収入は、地場企業4社からの協賛金700万円。いったん東流の口座に振り込まれたものを、会計担当者が全額下して代表に手交。正規の会計から除外し、人形師などへの支払いは代表自身が行ってきたという。

 会計担当者に確認したところ、最近になって手元に来たという人形師への支出388万8,000円分の領収書が昨年の1年分あるだけ。他の支出を証明する領収書はもらっていないと話しており、実態不明。残りの310万円が、適正に支出されたのかどうか分からない状況だ。取材に応えた同流の代表者は、飾り山に関する資金の流れを記録していないことを認めており、遡って検証することができなくなっている。

“手拭、ハッピ” 収益と祝儀は代表が管理
 次に、物品販売と祝儀に関する不明朗なカネの動き。山笠では、流ごとに独特の絵柄や文字を染め抜いた手拭やハッピ、扇子などが毎年制作されるしきたりになっている。東流では、この仕入れ値と販売額の差額(利益)や外部からの祝儀を簿外にして、代表者が自由に使っていた。代表者自身、その額がいくらになっていたのか「わからない」としており、積み重なった簿外金の額も、検証不能となる可能性が高い。

【4日の取材、東流代表者とのやり取りの概要】

 記者:東流の会計について確認する。700万から800万円のカネが簿外になっているというのは事実か?
 ―― はい。700万。

 記者:正式な帳簿には入れていないということだが、間違いないか?
 ―― はい。まちがいない。

 記者:地場4社からの協賛金の内訳は?
 ―― JR(九州)と新出光から300万、300万。それと、(福岡)地所とふくや、50万。

 記者:その700万をすべて飾り山にあてているということだが、飾り山の製作費用には、いくらかかっているのか?
 ―― 800…30万くらいじゃないか。

 記者:700万では足りないが、不足分はどの会計から出しているのか?
 ―― それは、東流の預金のうちから出している。

 記者:会計が管理する会計からか?
 ―― 出ていると思う。

 記者:手拭やハッピの収益、祝儀などをプールしているそうだが、それも簿外か?
 ―― うん。

 記者:どのくらいの額になるのか?
 ―― わからん。

 記者:現金はどこで管理しているのか?
 ―― それは、私が管理している。

 記者:現在、どのくらいの金額をプールしているのか?
 ――100万あるかないか。

 記者:簿外のカネが1,000万前後あるようだが、よくないことだと思わないか?
 ―― うんうん。

 記者:福岡市から補助金が出ている。市に対して、虚偽の収支報告をしていることになるが?
 ―― ……。

 東流の会計担当者は、『飾り山』に関する収入・支出のすべてが代表の裁量で執行されており、正規の会計からは「支出していない」と明言している。

東流に補助金315万円 福岡市が監査を明言
 山笠に対しては、観光客などの誘致促進を図る目的で、年間2,700万円の「祭り振興補助金」が、博多祇園山笠振興会に支給されており、そこから各流の『舁き山』に225万円、『飾り山』に90万円が配分されている。東流の場合は、『舁き山』と『飾り山』の両方があり、計315万円の収入。税金が原資の補助金である以上、決算報告も市側がチェックするきまりだ。(下が、福岡市に提出された「東流」の決算報告書)

福岡市に提出された「東流」の決算報告書

 補助金支給団体である山笠東流で起きた不正経理。祭り振興補助金を所管する市観光振興課に取材結果を伝え、今後の対応について聞いたところ、同課は「簿外処理が事実なら、ただちに監査を行う必要がある」と話している。

簿外金―公表された収支とほぼ同額
 下は、福岡市への情報公開請求で開示された東流の決算報告書や、HUNTERが独自に入手した同流内部で配られた決算書を精査し、平成23年度から27年度までの収支の流れをまとめた表だ。

山笠収支決算

山笠収支決算 支出

 毎年の収入は、約1,000万円から1,300万円。支出もこれに見合ったものとなっている。一連の取材結果から、これとは別に1,000万円前後のカネ――つまり正規の収支とほぼ同じ額――が動いていた形だ。一部が使途不明の形になっていることから、東流幹部の責任が問われる事態と言えよう。

 他の流が「当番町」と称する山笠を取り仕切る役割を年ごとに交代させているのに対し、東流は「流当番制」。山笠の運営権限を、同一代表に集中させるやり方が長年続いており、「それが組織の歪みを招いた」と指摘する関係者の声もある。

 なお、山笠東流をめぐっては他にも重大な疑惑が浮上しており、次週の配信記事で詳しく報じる予定だ。



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