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産経新聞 支持率報道への疑念

2016年2月24日 09:00

産経新聞 今月21日から22日にかけて、共同通信が行った世論調査の結果が一斉に報じられた。共同の配信を受けている地方紙の大半が、紙面やネットで内閣支持率が7ポイント下落したとする調査結果を伝えたが、この支持率報道をめぐって、産経新聞が不可解な動きをみせていた。
 いち早く支持率低下を伝えながら、翌日には自社の調査結果を基にこれを否定する「横ばい」報道――。“政権の犬”の報道姿勢に疑念が生じている。

「7ポイント低下」いち早く報道
 ネット上での配信状況を見てみると、共同の調査結果をいち早く流したのは産経新聞。配信は21日の16時17分で、記事自体は、共同の配信原稿を下敷きにしたものだった。見出しと、記事の1段目を抜粋する(その下は、問題の記事のネット画面)。

【産経新聞の記事】2月21日 16:17配信
政府・与党「緩み出ている」8割に迫る…安倍内閣支持率は7ポイントダウン、46% 共同通信世論調査

 共同通信社が20、21両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は46.7%で、1月末の前回調査から7.0ポイント下落した。不支持率は3.6ポイント増えて38.9%だった。一連の閣僚や自民党国会議員の不祥事や不適切発言を踏まえ、77.7%が政府、与党内に「緩みが出ていると思う」と答えた。
産経画面.jpg

 共同が調査結果の概要を配信したのは、21日15時台。産経は、その直後にネット上で支持率下落を伝えていた。特筆すべきはその早さ。産経のネット配信は、他社が共同の調査結果を報じる8時間余り前だったのである。下は、西日本新聞がネット上で流した記事だが、配信時間は22日の0時23分。他の地方紙もほぼ同じ時間帯に配信していた。

【西日本新聞の記事】2月22日 00:23配信
内閣支持7ポイント急落46.7% 「政府与党に緩み」77% 共同通信世論調査

 共同通信社が20、21両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は46.7%で、1月末の前回調査から7.0ポイント下落した。不支持率は3.6ポイント増の38.9%だった。一連の閣僚や自民党国会議員の不祥事や不適切発言を踏まえ、77.7%が政府、与党内に「緩みが出ていると思う」と答えた。最近では自民党の丸山和也法務部会長による人種差別とも受け取られかねない発言があり、3週間で支持率が急落した格好だ。
 面白いのは、いずれも共同の配信原稿を使いながら、微妙なところが違う点。西日本の記事にある「3週間で支持率が急落した格好だ」というくだりは、産経の記事にはない。仲良しの安倍政権に気を使ったともとれるが、そんなに甘い話ではなかったことが、翌日の産経新聞の報道で明らかになる。

翌日、自社の調査で支持率低下を否定

【産経新聞の記事】2月22日 11:37配信
安倍内閣支持48.1%で横ばい 相次ぐ不祥事の影響は限定的

 産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が20、21両日に実施した合同世論調査によると、安倍晋三内閣の支持率は前回調査(1月23、24両日)に比べ0.4ポイント減の48.1%で、ほぼ横ばいだった。不支持は1.3ポイント増の41.4%。甘利明前経済再生担当相の金銭授受疑惑や宮崎謙介前衆院議員の不倫騒動など政府・与党で相次ぐ不祥事への批判は強いが、政権への影響は限定的だった。

 20、21日という同じ時期に行われた世論調査で、共同が政権支持率7ポイント下落という結果を出したのに対し、産経は「横ばい」。前回調査で共同の数字が高かったという事実を割り引いても、この差は不可解というしかない。設問によって数字が違ってくることはあっても、各社の調査結果は一定の方向性を示すのが普通。20、21日両日にはテレビ朝日の報道ステーションも世論調査を実施しているが、安倍内閣を「支持する」と答えた人は43.7% で前回(50.4%)比マイナス6.7ポイント。共同の調査結果とほぼ同じ傾向を示している。産経の「横ばい」は、調査の信ぴょう性に疑問符がつく結果だ。

 そもそも、同じ日に世論調査をやっているのに、産経はなぜ共同通信の調査結果をいち早く報じる必要があったのか?流れから見ると、いったん報じた共同の調査結果にあわてて、自社の調査結果をいじったととられてもおかしくない格好で、「本当に世論調査を実施したのか」という疑念を持つ人も少なくないだろう。何より、肝心の読者がどちらの数字を信じればいいのか分からない状況だ。

 産経は、安倍政権の支持率急落を否定し、「不祥事への批判は強いが、政権への影響は限定的」だと宣伝するため、真実を歪めたのではないか?疑念が尽きない報道姿勢であることは確かだ。



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