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やっぱり違法!? 自民・島尻大臣「あい子のチャレラジ」の偏向ぶり

2016年1月21日 08:30

あいこ子のチャレラジ 島尻安伊子沖縄担当相が、地元である沖縄のFMラジオ番組を利用し、自民党関係者ばかりを登場させるなど放送法に抵触するとしか思えない内容の番組を流していた問題をめぐり、番組内での島尻氏ら自民党関係者どうしのトークも、極端に偏ったものだったことが分かった。
 放送法は、放送事業者に対し、番組の編成にあたっては「政治的公平」のほか意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにするよう求めており、島尻氏がメインジョッキーを務める「あい子のチャレラジ」(毎週土曜 午後3時~4時)は、同法の規定を真っ向から否定する内容となっている。
(右は一昨年の知事選を前にした収録現場の仲井眞前知事と島尻氏。FM21のHP画面より)

「放送法」無視
 具体的な番組内でのトークは、ネット上のライブ配信サイト「Stickam JAPAN!(スティッカム ジャパン)」に、「あい子のチャレラジ」を放送しているFM21が投稿したライブ画面で確認可能。放送法を無視したケースの多さに呆れたが、一例として昨年6月頃に放送されたとみられる番組の内容を検証しておきたい。

 メインは島尻氏。冒頭、スポンサー企業のコマーシャルに続き番組のテーマソングが流される。「あい子」を連呼する歌詞にうんざりしたところで、島尻氏のしゃべりがスタート。毎回の決まり文句が「お相手をつとめるのは、私、参議院議員の島尻安伊子です。私の沖縄に対する思い、議会活動などをつづる1時間です」。個人の「島尻安伊子」ではなく、「参議院議員の島尻安伊子」 ―― 公共の電波を使って、現職国会議員の宣伝番組が垂れ流されていることに、驚かされる。

 この日のゲストは、例によって自民党関係者。豊見城市の女性市議で、自民党沖縄県連の女性局副局長を務めている人物だった。話題は、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)から、番組で流した楽曲の歌詞のことへと移り、そこから二人のトークは次のように展開されていく。

放送内容1.jpg

 登場するのは島尻氏と市議の二人だけ。つまり、自民党所属の議員だけで構成される番組を制作し、彼女らの一方的な主張を電波に乗せたということだ。当然、トークの内容は偏ったものになる。

我々として、組織の人間として、自民党というか、その立場を主張する者として』
自民党・保守系の議員は、もちろんそこに持っていきたいから、耳障りのいいことだけじゃなくて、ちゃんとした政策を訴えていて』
向こう側はもう、簡単な言葉で、「平和」だったり、「基地反対」だったり、簡単な言葉で訴えてきて、それがいかにも正しいみたいな感じに……』

 改めて説明するまでもあるまい。彼女たちは、「自民党」の一員であるという確固たる自覚をもって語り、同調し、「平和」や「基地反対」を訴える人たちを「向こう側」と呼んでいるのだ。しかも、番組には「向こう側」の人間は誰一人登場しておらず、一方的にその訴えを「正しくない」と決めつけた形になっている。偏向番組であることは明らかだ。ここで、放送法第4条を確認しておきたい。

 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たっては、次の各号の定めるところによらなければならない。
 一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
 二 政治的に公平であること。
 三 報道は事実をまげないですること。
 四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

 番組構成にも、放送内容にも、「政治的公平」や「多角的論点の提供」といった配慮は皆無。放送法などお構いなしといった格好だ。だが、FM21は、放送法を遵守することを条件に、総務省(沖縄総合通信事務所)から放送免許を交付され、周波数の割り当てを受けているはず。ならば、自局の番組の偏向ぶりを、「知らなかった」で済ますことなどできまい。

 放送法第1条には、次のような規定もある。

 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること。

 自民党オンリーの番組が、不偏不党でないことも確かだ。

“平和”や“基地反対”を「向こう側」と呼ぶ無神経さ 
 それにしても、沖縄自民党の程度の低さ、愚劣さはどうか。沖縄で、本当に自民党支持者が「非県民」扱いされているのかどうか分からないが、もし同党に多くの批判があるのなら、原因を作ったのは、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設を強行する政府・自民党の方。沖縄県民ではあるまい。名護市長選、沖縄県知事選、総選挙といった基地移設を争点とした選挙で示されたのは「移設反対」の民意。これを黙殺する自民党政権の所業が問題になっていることを、当の自民党議員たちがまるで理解していないのだから始末に負えない。「平和」や「基地反対」を叫ぶ県民を「向こう側」と呼ぶに至っては、何をかいわんや。自民党は、「戦争」や「基地」に賛成と言っているに等しい。この連中に、政治を語る資格はあるまい。

 ちなみに、「あい子のチャレラジ」のスポンサーは浦添市にある専門学校の運営会社。代表者は、かつて民主党沖縄県連代表を務めていた島尻氏の夫だ。島尻議員が支部長を務める「自由民主党沖縄県参議院第二選挙区支部」と資金管理団体「ちゅらの会」は、同社ともども夫が持つビルの中。島尻議員の自民支部は、夫から数百万円単位の献金も受けている。島尻議員も元は民主党。自民党に対峙し、「平和」や「基地反対」を叫ぶ側にいたはずなのだが……。

どうする?自民党
 権力側に厳しい視線を投げかけてきた、テレビ朝日の「報道ステーション」やTBSの「NEWS23」に対し、放送法4条を盾に圧力をかけ続けてきたのは自民党。「放送法遵守を求める視聴者の会」などという右派の団体もある。当然、違法性が高い島尻氏のラジオ番組を放置したりはしないだろう。



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