島尻安伊子沖縄担当相に、政治資金規正法を無視した政治活動や、虚偽の政治資金収支報告を行っている疑いが浮上した。
島尻氏がブログなどで公表し、日常的な政治活動の主体としている「島尻あい子後援会」や「島尻安伊子後援会」は存在しておらず、“無届け”のまま。唯一の関連政治団体である「ちゅらの会」の政治活動費支出は、毎年事実上ゼロに近い状況となっており、島尻氏が後援会活動と称している会合などに関する支出のほとんどが、同氏が代表を務める自民党選挙区支部の支出として処理されている。
活動実態と収支報告の内容が合致しておらず、同氏の政党支部、関連政治団体ともに事実を報告していない状態。島尻氏側による一連の行為は、政治資金規正法の規定に抵触する可能性がある。(右は島尻氏の公式ブログの画面)
活動主体は「島尻あい子後援会」だが……
下は、島尻氏の公式ブログのトップ画面(「http://shimajiriaiko.ti-da.net/」)。同氏のプロフィール欄の下には、ブルーの文字で「島尻あい子後援会」とある(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。
同氏のブログは、参議院議員に初当選した2007年(平成19年)にスタートしており、上記の「島尻あい子後援会」は、その頃からからのもの。時に応じて役職の部分が書き換えられるだけだ。
一つひとつのブログ記事には、必ず『Posted by 島尻あい子後援会』とあり(下参照)、島尻あい子後援会が活動報告を行った形となっている。
次が、昨年11月に島尻氏が立ち上げた「島尻あい子オフィシャルサイト」の挨拶文。ブログが始まった2007年時点の挨拶と同じ文面なのだが、『島尻あい子後援会にご入会下さい』とある(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。
オフィシャルサイトからは、後援会入会申込書がダウンロードできるように設定されており、下がその申込書だ。
最後に『◎この情報は島尻安伊子後援会のみに使用いたします』とある。こうなると確信犯。島尻氏の政治活動の主体は、「島尻あい子後援会」もしくは「島尻安伊子後援会」だと判断せざるを得ない。
横道にそれるが、ここで気になるのは島尻氏側が個人情報保護法の趣旨を理解していないのではないかという点。後援会の入会申込書には、知り得た個人情報を「島尻安伊子後援会」での使用に限ることを断っているが、他の団体や政党支部で使いまわしするのではないかという疑念が残る。なにより、「島尻安伊子後援会」自体が存在しておらず、厳しく見れば“嘘”。どうやら、島尻氏の辞書に、「信頼」という言葉はないらしい。
はっきりしているのは、島尻氏側の活動が「後援会」に集約されていること。だが、「島尻あい子後援会」も「島尻安伊子後援会」も不存在で、“架空の団体”が会員を募っている格好だ。これが、少なくとも2007年から続いていたことになる。
政治資金規正法は、政治団体の設立から7日以内に、決められた様式に従って総務省または都道府県選管に「政治団体設立届」を提出するよう定めており、本来は「島尻あい子後援会」または「島尻安伊子後援会」の名称で、設立届が提出されていなければならない。
後援会主催行事の経費を政党支部が支払い
後援会を自称して、支出を伴う活動を行っていたことも明らかだ。下は、島尻氏が毎年1月(2009年は1月6日、翌年から4日)に開いている「島尻あい子 新春の集い」に関するブログの記述。2009年、2011年、2012年は、主催が「島尻あい子後援会」と明記されているのが分かる。(上から順に、2009年、2011年、2012年のブログの記述。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)
「島尻あい子 新春の集い」の会場は、2009年を除いて毎年、那覇市にある「沖縄県市町村自治会館」(ブログでは「自治会館」)。当然、会場費が発生しているはずだが、支払い義務がある「島尻あい子後援会」は不存在。確認できた島尻氏の資金管理団体「ちゅらの会」の2012年分政治資金収支報告書にも、該当する支出はない。
島尻氏の新春の集いは、2013年、2014年、そして昨年と続いてきたことが分かっているが、公表されている2013年、2014年分の「ちゅらの会」の政治資金収支報告では、会場費支出どころか政治活動費自体の実質支出が、それぞれ「0」、「11,750円」となっており、事実上活動実態がない状態。同会の政治資金の動きを県公報で追ってみたが、2010年、2011年も同様に、組織活動費は「46,590円」、「0」となっている。
もちろん、沖縄県市町村自治会館の使用料は発生しており、誰かが支払っているはず――。そう考えて島尻氏のもう一つの関連団体である「自由民主党沖縄県参議院第二選挙区支部」(支部長:島尻安伊子)の収支報告書を確認したところ、2013年と2014年の支出の中に、該当すると思われものがあった。下が、政治資金収支報告書の記載部分である。
「会場費」の支出先は、自治会館の運営を行っている「沖縄県市町村自治会館管理組合」。時期的なことや、同会館ホームページ上で確認できた会場使用料からみて、これ以外に「島尻あい子 新春の集い」の会場使用料にあたる支出はない。
上掲した収支報告書の記載にある「会場費」が新春の集いの会場使用料なら、島尻氏側は、後援会活動の費用を政党支部のカネで賄っていることになる。
疑惑
活動しているはずの「島尻あい子後援会」も「島尻安伊子後援会」も不存在。毎年開かれている「島尻あい子 新春の集い」の会場費支出は、少なくとも2013年と2014年、自民党の選挙区支部が支払っており、それ以外の年の支出が確認できない状況だ。また、島尻氏の資金管理団体「ちゅらの会」は毎年、政治活動費をほとんど計上しておらず、後援会活動に伴う支出が消えた状態となっている。島尻氏側から沖縄県選管に提出された「自由民主党沖縄県参議院第二選挙区支部」と「ちゅらの会」の政治資金収支報告書の内容は、虚偽の疑いが極めて濃い。
今月10日、事実関係確認のため島尻氏の事務所に連絡を入れたところ、「質問があれば文書で」との指示。即日、7項目の質問を記し、島尻氏の地元事務所に送付したが、それから1週間、島尻氏側は「宜野湾市長選で多忙」との理由で回答を引き延ばしている。疑惑は、虚偽報告だけではないのだが……。