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劣化する政治(上) ― 地元を脅す島尻安伊子沖縄担当相 ―

2016年1月12日 08:25

島尻安伊子沖縄担当相 予算を盾に、自分を国会に送り出してくれた郷土の民意を歪めようとする政治家がいることに驚いた。
 先月15日、島尻安伊子沖縄担当相が閣議後の会見で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志知事の政治姿勢が、平成28年度の沖縄振興予算確保に影響するという考えを示した。
 島尻氏は沖縄県選出の参院議員。地元メディアをはじめ県民からの猛反発を受け釈明したが、立場を利用して基地移設に反対する沖縄を揺さぶったのは確か。安倍政権の沖縄に対する強権姿勢を、沖縄の代表が体現した形だ。
(右は島尻氏の公式ブログの画面)

確信犯
 歴史的背景から、郷土意識の強さが際立つ沖縄県人の、それも沖縄担当大臣が予算を盾に自分の地元を脅すという前代未聞の展開。改めて、内閣府のホームページ上にアップされた問題の会見の内容を確認してみた。間に入った別の質疑を省いて、沖縄振興予算に関する記者団と島尻大臣のやりとりをまとめるとこうなる。

 NHK:昨日沖縄県の安慶田副知事が内閣府にいらっしゃっていたんですが、沖縄振興予算の状況と、あと副知事と会われたのかどうかというのを、改めて伺ってもよろしいでしょうか。
 島尻:副知事始め、県の関係者の方が来られまして会談いたしましたけれども、今お話があったように、沖縄関連予算についてのお話でした。

 NHK:どういった内容でしたか。
 島尻:私の方からは、正直大変厳しい状況にあると、その中で今、沖縄部局を挙げて、必要な予算確保に向けて鋭意努力をさせていただいているということは申し上げました。

 NHK:先方からは。
 島尻:とにかくよろしくということでした。

 NHK:沖縄選出の島尻先生が大臣になられているということで、振興予算が減るということとか、そういうことも選択肢にあるんでしょうか。
 島尻:とにかく頑張って必要な予算を確保するということです。

 毎日:先ほど必要な予算を確保というふうにおっしゃいましたけれども、これは概算要求の満額を求めていくという大臣のお考えに何かお変わりはないですか。
 島尻:そうです。基本的なスタンスはそうなのですが、今かなり厳しい状況だという自分の認識の下で、今後、沖縄の振興のために必要な額は確保していきたいと思っています。

 NHK:また何度も同じ質問で恐縮なんですけれども、基地問題をめぐって裁判に今なっています。そういう翁長知事のスタンスと、あとこの振興予算というのは、影響があるとお考えでしょうか
 島尻全くないとは考えていません

 共同:先ほど翁長知事の姿勢と振興予算は全く関係ないとは考えていないというふうにおっしゃったんですが、それはこれまでの振興と基地問題はリンクしないという部分とどう整合性を。
 島尻:基地問題とリンクはしないと、沖縄振興はですね。これは揺るがないというか、これはきちっと言えることでありますが、この空気感というのでしょうか、そういう意味では、私の中で予算確保について全く影響がないというものではないなと、私自身が感じているというところで、所感といいますか、感じたところをお話しさせていただいたということです。

 NHK:今の質問で関連ですが、いわゆる今行われているやりとりの中で翁長知事の存在というか、ああいうスタンスが、予算の獲得に何かしらの影響を及ぼしているということでしょうか
 島尻:いや、そういうわけではありません。私の立場として沖縄振興を担当する大臣としては、今申し上げたようにとにかく必要な額は確保すると、この強い思いで今、折衝させてもらっています。

 時事:その空気感というのは、具体的には国と県の対立というような空気感があるということが、関係されているというふうに考えておられるんでしょうか。
 島尻:まあいろいろな要素はありますね

 朝日:翁長知事は3,000億(円)の確保というのは、沖縄にとっては当然の額なんだというような主張もされていらっしゃいますが、大臣としてはその3,000億(円)という、交渉する中でも獲得するのに必要な、これは当然沖縄としてもらえる額だというふうな御認識でしょうか。
 島尻:ですから、必要な額と申し上げているのは、一つ一つ積み上げる中で沖縄振興に関して必要な予算は、勝ち取っていきたいという考えがあるということです。

 確信犯だろう。会見で話した以上、自身の発言が沖縄に伝わるのは当然。島尻氏は、それが分かった上で辺野古移設に反対する翁長雄志沖縄県知事の姿勢が、振興予算の確保に影響を与えると言っているのである。“空気感”とは、国と県とが法廷闘争に突入する中、「言うことを聞かないのなら予算を削ってしまえ」という政府内にまん延している沖縄軽視の姿勢を指した言葉。“”周りはこうだ“”と知らせる形で、巧妙に沖縄を揺さぶったということだ。

 ただし、頭が良いのか悪いのか、この大臣、翁長知事の姿勢が予算取りに影響を与えると示唆しながら、「基地問題と(振興予算は)リンクはしない」――矛盾する話をしていることに気付いていないとすれば、相当に低レベル。矛盾を承知の上での発言だったとしても、沖縄の民意を理解していない点で、政治家失格である。

 そもそも、沖縄県民の怒りに火をつけたのは、「カネの力」で沖縄の心を踏みにじった安倍政権と自民党だ。
 まず、2013年秋に、沖縄の自民党国会議員や同党県連が相次いで移設容認に転じ、12月には仲井真弘多前知事が辺野古埋め立てを承認した。安倍政権が打ち出した毎年度3,000億円の沖縄振興予算を高く評価してのことだったが、沖縄の心を売り買いした形の仲井真氏と安倍政権に反発が高まったのは周知の通り。翌2014年1月、辺野古移設の是非が問われた名護市長選で、移設反対を訴えた現職が勝利。次いで7月の名護市議選(定数27)でも、移設反対派が14議席を獲得して過半数を維持する結果となった。

 それでも移設を強行する安倍政権に対し、沖縄の怒りはさらに拡大。全国の注目を集めたこの年11月の沖縄県知事選挙では、移設反対を唱えた翁長現知事が10万もの票差をつけて仲井真氏に圧勝。続いて行われた暮れの総選挙においても、県内四つの小選挙区を押さえていた自民党の公認候補が、翁長陣営=「オール沖縄」の候補者に完敗するという事態を招いている。つまり、振興予算で沖縄が揺さぶられたのは仲井真県政の時代まで。「振興予算より沖縄の心」が地元の民意だというのに、島尻氏はまったく理解していない。

最優先は「島尻安伊子」
 だが島尻氏、面の皮が厚いのは確かだ。2004年に那覇市議会議員補欠選挙で初当選したあと、翌年の市議選本番で2回目の当選。わずか2年を務めただけで、07年には参院沖縄選挙区補欠選挙に出馬し勝利。政治の表舞台に登場して3年という短期間で、みごと国会議員に登り詰めている。市議時代は民主党系だったが、国政に転じるや自民党。この女性政治家は、「節操」という言葉を知らないのかもしれない。

 その証明ともいうべき事例が、昨年11月に立ち上げたとされる「島尻あい子オフィシャルサイト」に記されていた。12月24日の書き込み。≪沖縄県知事御礼≫と題され、翁長知事と写った3枚の写真に、次のような説明文が付けられている。

平成27年12月24日、島尻沖縄担当大臣は松本副大臣、酒井大臣政務官とともに翁長沖縄県知事から平成28年度沖縄振興予算案について御礼を受けました』(下は同サイトの画面)

島尻あい子オフィシャルサイトより

 今夏の参院選に向けて実績を強調したいのだろうが、辺野古移設に反対する沖縄の有権者からすれば“どの面下げて”と言いたいところ。脅した相手が「御礼」に来たなどと、よくも宣伝できたものだ。この大臣にとって、大事なのは国家でも沖縄でもなく「島尻安伊子」。自身の言動が矛盾だらけだろうと嘘まみれだろうと、お構いなしなのである。ちなみに、下は「島尻あい子オフィシャルサイト」に掲載されている、島尻氏本人のご挨拶だ。

島尻氏のご挨拶

 じつはこの文面、島尻氏が参院議員になるためスタートさせたブログの2007年03月18日の挨拶文とまったく同じ。進歩がないのは事実で、「アイ・ラブ沖縄!」が聞いて呆れる。自分のことを「あい子」と名前で称するのは、自己愛の表れか、はたまた幼稚さの証明か。こんな白々しいご挨拶では、参院選は勝ち抜けまい。



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