自民党の藤丸敏防衛大臣政務官(衆院福岡7区・当選2回)が、衆議院赤坂議員宿舎の光熱水費を、自身が代表を務める「自由民主党福岡県第七選挙区支部」の政治資金から支払っていた問題をめぐり、同支部の会計責任者の話から、藤丸氏の秘書らが宿舎をホテル代わりに利用していたことが、新たに分かった。
議員宿舎は、国会議員の東京での活動を支えるため、格安の使用料で議員個々に賃貸される施設。秘書らが宿泊所にすることは事実上の規定違反で、衆議院事務局も「議員とその家族以外が宿舎を利用することは認められない」という見解を示している。藤丸氏本人の居住実態がない可能性も浮上しており、同氏の政治家としてのモラルが問われる事態となった。(右が藤丸議員。同氏の公式HPより)
「秘書が宿泊」―会計責任者が明言
思わぬ展開と言うしかない。第七選挙区支部の会計責任者を務めている藤丸氏の秘書に、議員宿舎の光熱水費に関する不適切な政治資金処理について説明を求めていたところ、21日夕になってようやくその秘書から連絡。取材での質問に答えるというので、およそ以下のようなやり取りとなった。
記者:議員宿舎の光熱水費を七区支部で支払うようになったのは、いつ頃からか?
―― 今年からです。
記者:去年からということではないのか?昨年の収支報告について聞いているが。
―― 去年からですね。
記者:議員会館の設置目的からして、政党支部が光熱水費を支払うのは不適切。止めるつもりはあるのか?
―― 止める予定はありません。
記者:不適切だとは思わないのか?
―― 秘書が出張した時に利用していますから。会議にも使ってますし。だから、支部で(光熱水費を)支払っています。
記者:秘書が議員宿舎に泊まっているということか?
―― 出張した時にですね。
記者:それは、議員宿舎の利用規定に反するのではないか?
―― そうなんですか?
記者:代議士は住んでいないのではないか?
―― いえいえ、たまに来てますから。
記者:水道代は、毎月基本料金程度。まったく使っていない月もある。誰もいない期間ばかりではないのか?
―― いや、秘書が出張の時に使ってますから……。そんなはずは……。
記者:これは、(藤丸)代議士が確認した上での回答ということでいいか?
―― ……ちょっと、もう一度(代議士と)話をして、ご連絡します。
議員宿舎は、国会議員の東京での活動を支えるため、格安の使用料で議員個々に賃貸される施設。藤丸氏は、本来個人で支払うべき宿舎の電気、ガス、上・下水道の料金、さらにはNHKの受信料までも自身が代表を務める「自由民主党福岡県第七選挙区支部」の経常経費として処理していた。内閣の一員が、“生活費”を政党の政治資金で賄っている状況だが、同支部の会計責任者を務めている藤丸氏の秘書は、秘書らが出張の時に宿泊しているから七区支部で光熱水費を支払っているのだという。議員宿舎を、ホテル代わりに使っているということだ。
衆議院事務局に確認したところ、議員宿舎は国会議員の東京での生活を保障し、議員の職務を円滑に遂行するため設置されている施設であることを認めた上で、秘書らが出張時の宿泊所としたり会議にすることは「できません」と断言。宿舎利用は「国会議員本人とその家族以外は認められていない」としている。
藤丸氏の居住実態に疑問
地方選出議員の東京の自宅ともいうべき議員宿舎を、秘書のホテル代わりに使っているという藤丸氏側。会計責任者とのやり取りにもあるように、じつは藤丸氏自身の居住実態がない可能性がある。下は、七区支部が福岡県選挙管理委員会に提出した昨年分の政治資金収支報告書の光熱水費のうち、議員宿舎の上・下水道代を記載したページだ。
上・下水道代は、毎回基本料金。領収書を確認してみると、わずかに水道を使った月もあるが従量料金が加算されるほどではなく、ほとんど使われていない状態。つまり、生活を営んだ形跡がない。年間のガス代は36,476円、電気代は76,116円となっているが、月々は数千円程度の料金ばかりで一時期を除いて生活感ゼロ。光熱水費支出は、秘書らが“出張時に寝泊まりした”という話を裏付ける一方、藤丸議員本人の日常的な利用を否定しているのである。
地方選出議員のための施設である議員宿舎は、『東京23区に自宅を所有する議員は入居できない』というのが原則。しかし藤丸氏は、自宅として江東区豊洲にある52階建高級マンションの最上階近くの一室(3LDK 82m²)を保有しており、議員宿舎を借りる必要がないにもかかわらず宿舎を使っているのが実情だ。秘書らのホテル代わりに議員宿舎を借りているのなら、非常識と言うしかない。
ちなみに、藤丸氏が初当選以来掲げてきたキャッチコピーは『至誠をつらぬく』。ホームページには、こう記されている。
≪地方の発展、誇りの持てる日本の未来のため、滅私奉公、粉骨砕身、至誠通天、そして一所懸命に働かせて頂きます≫
本当にそう考えているとは思えないが……。