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「1兆円」の軽さ

2015年12月18日 09:55

国会 自民・公明両党が、消費税に軽減税率を導入し、対象を「生鮮食品」と「加工食品」とすることで合意した。与党内折衝の動きばかりが報道されてきたが、要は選挙目当ての茶番。来年の参院選を睨んで、創価学会の会員に“弱者の味方”を印象付けたい公明党と、学会票なしでは戦えない自民党の思惑が一致しただけのことだ。
 軽減税率の財源は「生鮮食品」だけなら4,000億円、「加工食品」まで加えると1兆円。6,000億円を巡る自公のやり取りにマスコミが大騒ぎした形だが、一方で、何の議論もなしに1兆4,000億円もの税金が他国に供与されることが決まっている。おかしくないのか、この国。

すったもんだで「1兆円」
 自公のやり取りで注目されたのは「線引き」。軽減税率の対象に「加工食品」や「外食」を加えるかどうかの駆け引きが続き、最終的には酒類や外食を除く「生鮮食品と加工食品」に落ち着いた。これによって失われる税収はおよそ1兆円だが、財源をどうするかは未定。肝心なことを先送りして、国民受けを狙った結果である。

 消費税1%で2兆円と言われており、軽減税率導入で、2017年4月に予定される2%アップ分のうちの4分の1にあたる額が消える格好だ。何のための増税か分からなくなってしまうわけで、財務省が難色を示したというのもうなづける。

インドへ原発、武器輸出 代償に1兆4,000億円 
 現在、国全体の借金は約1,000兆円。年間予算の4割以上を公債発行という借金に頼っている我が国にとって、1兆円は大変な額。議論が白熱するのは当然だが、大騒ぎした1兆円をはるかに超える税金が、いとも簡単に他国に供与されるというのだから開いた口が塞がらない。

 安倍首相は今月12日、インドを訪問し同国のモディ首相と会談。日本からインドへの原発輸出を可能にする原子力協定について合意したが、この外遊に合わせ、日本―インド間で複数の協定が結ばれ、両国代表が覚書に署名している。

  • 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定に関する覚書
  • 高速鉄道に関する日本国政府とインド共和国政府との間の協力覚書
  • 鉄道分野における技術面での協力に関する日本国国土交通省とインド共和国鉄道省との間の協力覚書
  • 日印防衛装備品・技術移転協定及び日印秘密軍事情報保護協定

 分かりやすく言えば、「原発」「新幹線」「武器などの防衛装備品」を3点セットにして、インドに輸出するということ。これを実現するため(高速鉄道計画への支援策とされてはいるが)、円借款約1兆4,600億円を日本がインドに供与することが決まっている。消費税1%の約7割が流れ出す計算だが、適正な対外援助額なのかどうか、検証された形跡はない。国会での議論も経ずに巨額の税金が消えることになるが、喜んでいるのは国内の原発メーカーや軍事産業。釈然としないものを感じるのは筆者だけではあるまい。

 外遊のたびにバラマキを行ってきた安倍首相にとって、1兆円という額は軽いもの。軽減税率導入を素直に喜ぶ国民の気持ちなど、分かるはずがない。



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