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自民党鹿児島県連 公認申請者から「審査料」
実態隠して収支報告 ― 政治資金規正法に抵触する可能性も

2015年12月 9日 08:05

001.png 森山裕農林水産大臣が会長を務める「自由民主党鹿児島県支部連合会」が、公認申請を行う立候補予定者から、「公認審査料」として県会議員で10万円、国会議員なら50万円を徴収していたことが明らかとなった。衆院選と県議選の公認を決めた昨年は、600万円以上の審査料を集めたとみられる。
 公認をカネで買わせた形ともとれるが、県連側の政治資金収支報告書には、個別の審査料収入が記載されておらず、政治資金規正法上は不記載の状態。審査料を支払った県選出国会議員の政党支部及び関連政治団体が作成した政治資金収支報告書にも、一例を除いて支出の記載がなく、組織ぐるみで公認審査料の実態を隠した格好だ。(右は自民党鹿児島県連のHP画面)

自民選挙区支部の収支報告書に「審査手数料」の記載
 下は、「自由民主党鹿児島県第五選挙区支部」(支部長:森山裕衆院議員)が鹿児島県選挙管理委員会に提出した平成26年分の政治資金収支報告書の一部。選挙関係費として、「審査手数料」50万円の支出が認められる。

政治資金収支報告書

県連、審査手数料の存在認める
 一方、自民党鹿児島県連が県選管に提出した26年分の政治資金収支報告書には、第五選挙区支部からの「審査手数料」や「寄附」といった収入は一切記載されていない。

 県連の会計責任者に電話取材したところ、「審査手数料」の存在を認めた上で、「有史以来の慣習」と明言。選挙ごとに県議10万、国会議員50万円を請求し、そのすべてを県連の収入にしてきたことを明らかにした。

 県連側に、第五選挙区支部から得た「審査手数料」が収入として計上されておらず、県議や国会議員からの「審査手数料」も記載されていないことを指摘したところ、審査料などの臨時収入を内規で定めた「特別党費」として扱い、一般党員からの『党費収入の中に紛れ込ませる形』(県連側の表現)で処理してきたと説明。“問題ない”との認識を示している。

 自民党の党費は、一般党員が年額4,000円、家族党員年額2,000円、特別党員年額20,000円以上となっているが、鹿児島県連が徴収しているのは「審査手数料」。公認申請時だけの臨時収入で、自民党本部が定めた特別党員の党費とは性質が違う。

通らぬ県連側の主張
 どう強弁しても、県連の政治資金収支報告書が収入の実態を正確に記載していないことは確かだ。下が県連の収支報告書(26年分)。県連側が言う特別党費を紛れ込ませた≪個人の負担する党費又は会費≫は、24,573,800円となっている。

県連の収支報告書(26年分)

 県連側の説明が事実なら、この中に公認審査料が含まれていることになる。しかし、第五選挙区支部は個人ではなく政党支部。同支部からの収入を≪個人が負担する党費又は会費≫に入れることはできない。同支部が支払った50万円の公認審査料は宙に浮いた格好となっており、県連側の収支報告書は50万円の審査料収入を記載していない状態だ。

 ちなみに、同県連所属の衆院議員は5名で県議は36名。昨年は総選挙があった上、今年4月に行われた県議選の公認申請時期も昨年。公認審査料は国会議員分250万円、県議分360万円で、少なくとも610万円のカネが動いていた計算だ。しかし、第五選挙区支部のような例外が存在することで、審査料のすべてが≪個人が負担する党費又は会費≫に含まれているかどうか疑わしい状況となっている。

 県連側は、資金に乏しい県連組織が選挙費用を捻出するための方策だったと言うが、収入の実態を隠しているのは事実。収支報告書の虚偽記載もしくは収入の不記載で、政治資金規正法に抵触する可能性もある。

 自民党の都道府県連のなかで、公認審査料を徴収しているところはあるか?――同党本部の選挙対策本部に確認したところ、「聞いたことがない」と話している。



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