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僭越ながら:論

産経・極右の言葉狩り

2015年12月 4日 08:45

1.png 政権の犬「産経新聞」が、年末恒例となった「ユーキャン新語・流行語大賞」に噛みついた。同賞トップテンの一つに「アベ政治を許さない」が選ばれたことが気に入らなかったようで、選考方法はもとより選考委員長のジャーナリストにまで批判の矛先を向けている。
 大人げないと言うしかないが、同日の紙面では米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する沖縄県の姿勢を誹謗するかのような記事も掲載。異論は許さないという安倍政権の姿勢を、そっくりそのまま体現した格好だ。

噛みつかれた「流行語大賞」
3日の産経新聞朝刊 3日の産経新聞朝刊。まず1面のコラム≪産経抄≫が、「アベ政治を許さない」を選んだ流行語大賞を問題視。昨年、「集団的自衛権」が大賞に選ばれたことまで取り上げ、同賞が政治的なメッセージを発信しているとの見方を示した。産経抄によれば、政権批判が「入賞の条件」。報道番組で出される「右傾化が進んでいる」との指摘も間違いなのだという。リベラル派敵視は社是なのだろうが、あまりに狭量。読んでため息が出るコラムがあることにも驚きだ。

 1面のコラムだけでは足りないと考えたのか、さらに5面の≪極言御免≫でも同紙の論説委員が流行語大賞を攻撃。産経抄同様、「アベ政治を許さない」がトップテンの一つに選ばれたことに難癖をつけた。選考委員長を務めたジャーナリスト、鳥越俊太郎氏の言葉を取り上げ、選考委員の現実認識が「曲がっている」とまで述べている。論説委員氏から見ると、同賞自体が「左派・リベラル」の「自作自演」。安倍首相をおとしめようとする「悪意」まで感じるというのだから、大した感性だ。同賞は「政治的な偏りを指摘されていた」と言うのだが、指摘したのは極右の方々。つまり自分たちではなかったのか?

 産経が息巻くのは、同賞の候補の中に「自民党、感じ悪いよね」「戦争法案」「国民の理解が深まっていない」といった右派勢力にとっては耳障りな言葉が並んだせい。安倍政権の忠実な番犬である同紙としては、噛みつかざるを得なかったのだろう。

沖縄の民意を敵視 
 この日の同紙は、極右らしさ全開。3面には、辺野古の埋め立て承認を沖縄県の翁長雄志知事が取り消したのは違法だとして、国が撤回を求めた代執行訴訟の法廷の模様を詳報。意見陳述を行った知事の主張を「矛盾と誇張の連続」(見出し)とこき下ろし、沖縄の民意を逆なでするようなとげとげしい言葉を並べて、政権寄りの姿勢を鮮明にしている。

法廷の模様を詳報

 一連の記事は、“政権批判は許さない”という考え方に立つもの。報道機関の仮面をかぶった政権の犬が、激しく吠えたてて、ご主人様を守っている格好だ。安倍政権や産経が目論んでいるのは、大衆の沈黙化。右寄り以外の声は、叩き潰そうということなのだろう。このところ、言論の自由を奪おうとする動きが顕著になっている。

放送法でテレビ局を威嚇 
 先月、作曲家のすぎやまこういち氏らが呼びかけ人になっている「放送法遵守を求める視聴者の会」とやらが、東京都内で記者会見。TBSの報道番組「NEWS23」の報道内容が放送法に違反していたとして、司会を務める毎日新聞特別編集委員の岸井成格氏や同局、総務省に公開質問状を送ったことを公表した。

 安保法の審議が大詰めを迎えていた時期に、岸井氏が番組の中で「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」と発言したのが政治的公平や多角的論点の明示を求めた放送法第4条に触れるのだという。岸井発言が「一方的な意見を断定的に視聴者に押し付けた」ものだというのが視聴者の会の主張だが、これは的外れな言いがかりに過ぎない。

 番組のアンカーでもある岸井氏は経験豊富なジャーナリスト。放送法の趣旨は十分承知しているはずで、うっかり口を滑らせたというわけではあるまい。NEWS23の中では、政府の主張も安保法反対の声も平等に報じられており、≪意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること≫という放送法の規定はしっかりと守られている。視聴者の会の狙いは、政権批判の圧殺。放送法を持ち出せば、テレビ局が折れると考えているのだろう。

 視聴者の会の呼びかけ人として会見に臨んだのは、すぎやま氏の他、文芸評論家の小河小川榮太郎氏、アメリカ人のケント・ギルバート氏、経済評論家の上念司氏の3人。いずれも右派の論客で、安倍政権擁護の論を展開してきた方々である。

狂犬注意
 「メディアとしても廃案に向けて声をずっと上げ続けるべきだ」――この岸井発言は、多くの論点が整理された後の結論。横暴を極めた軍部の前に報道が沈黙し、無批判で戦争へと突き進んだこの国の歴史を踏まえてのことでもあろう。視聴者の会がやっていることは、言論弾圧であり、歴史の否定なのである。

 産経新聞をはじめ、極右勢力が恐れているのは来年夏の参院選で自民党が敗れること。それを回避するためなら、誰彼構わず噛みついてくるはずだ。こうなると“狂犬”。言葉狩りをはじめた政権の犬たちに、言論人を名乗る資格はない。



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